おのにち

おのにちはいつかみたにっち

【はてなブロガーズインタビュー】『あざなえるなわのごとし』が運んでくるのは幸福か災いか?

【はてなブロガーズインタビュー】第6回!
今回は『あざなえるなわのごとし』azanaeru氏。

 

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

 

皆さんご存知、はてなを代表するこじらせ系サードブロガー人気雑記ブロガーさんです。

平和を愛する管理人がまったりのんびり更新するお茶目なブログ☆

なんてプロフィールに書いてありますが、「紅茶とスイーツを愛するほっこりブログ」くらい心温まるセリフですね!わぁいほっこり!

この記事を書くために過去記事を読み漁ってたらちょこちょこ上がる血煙に腰が引けたのはナイショだぞ♡

もう知り尽くしてるわ!って人も最近の記事しか読んでないって人も、私自身も。
かつてあざなわと呼ばれた男の話を、一緒に聞いてみましょうよ(絶賛存命中)。

 

ブログ編 

 

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ーブログを始めたのはいつ?

 

このブログは2012年の11月からです

 

 ーきっかけは何だったんでしょう?

 

ちょうどiPhoneアプリ系ブログが乱立している最中で、毎日のように「神アプリ」と題された記事が毎日並んで辟易して「こんなのでいいなら自分でも書けるわ」と思ったのが再開した切っ掛けです

 

ーはてなブログを選んだ理由は?

 

このブログ以前にはてなダイアリーで書いていたこともあって、新しくはてなでブログが始まったと言うので始めてみました。

 

ー なるほど、もともとダイアリーで書いてて、そこからブログに移行したんですね。
しかし『こんなのでいいなら自分でも書けるわ』って言いぐさが…言いぐさがw

 

ー「あざなえるなわのごとし」の前には何か書いてましたか?

 

ブログは、これで4つとか5つとか。

 -結構書いてる。もはや書くことは習慣ですね。

 

  ー名前はazanaeruさん、なんですね。(あざなわさんだと思ってた…)
かなりシンプル、プロフィール欄もあっさりしてます。
なにか理由があるんでしょうか?

ブログは社会的な地位や学歴、資格など関係なく、等しく何かを書けば読まれる場所ですので、特にハンドルネームなども決めず何かしらの雑情報に左右されない……イメージとしてはビル・プロンジーニ「名無しの探偵」やハメット「コンチネンタル・オプ」、バロネス・オルツィ「隅の老人」のように「名前がない管理人」が理想だったんですが、固有名詞がないと呼びづらいらしく結果としてあざなわだの何だのと言うことになりました。なのでどう呼ばれてもそれはそれで。

 -アザーでもナワーでもいいらしいですぜ、みなさん!(ゲス顔で)

 

ーブログに個人情報が極めて少ない!読書、ファッション、映画、音楽という趣味嗜好、それから仕事が忙しそうだと言うのは分かるけど年齢や私生活は想像もつきません。こういうことはあえて書かないようにしているのでしょうか?

あえて書いていませんね。自分の考えを書きたいだけでして、自身のことを知らしめたいわけではないので。特に隠しているわけではないですが、書く必要性もないので。

 

ーブログ名の元ネタは「禍福は糾える縄の如し」だと思うんですが、なぜこの言葉を選んだんでしょう?

 

なんとなくです。

 

ーつれねえ男だなオイw
禍福は糾える縄の如しとは史記に出てくる言葉で、災いと幸福は表裏一体、まるでより合わせた縄のようにかわるがわるやって来るものだという意味だそう。
不幸だと思ったことが幸福に転じたり、幸福だと思っていたことが不幸に転じたりする。成功も失敗も縄のように表裏をなして、めまぐるしく変化するものだということのたとえなんですね。

 災いも幸福も飲み込むように書いているあざなわさんにはぴったりのブログ名じゃありませんか?なんとなくなんだ、ふーん(笑)

 

 ーブログを始めて良かったことは?

自分の書いたことが「面白い」と言ってもらえることですかね。

 

 ー逆に悪かったことは?

嫌われたり、敵が増えたところ。

 

ーこちらの記事から書くスタンスが垣間見えた気がしました。

 

最後の手段は「死ぬこと」ではなく「逃げること」 - あざなえるなわのごとし

 

ネットは繋がるべきでないひとにまで繋がってしまう。
暗い思考は伝染性を持つ。
だからこそ撒くべきではない。コンテンツにするべきでもない。
そんなことすら想像も出来ないなら頭に斧をつき立てたまま黙ってるがいい。

―こんな風に書かれていましたが自分の中で「こういう記事は書かない」など決めているルールはありますか?

自分自身の詳細についてはあまり書かないですね。他人の私生活とか、どうでもいいです。ひたすら感情任せの記事も書かないし、嘘も書きたくなので。面白いことは面白いと書き、つまらないものはつまらないと書くようにしています。

ーつまらないものはつまらないと書くスタンスが先ほどの「嫌われたり、敵が増えた」に繋がっていくのかなー。しかしそれがあざなわイズムでもありますね。

 

 ー逆にどんなことを書きたいと思っていますか?

面白かった本とか映画とかその面白さを忠実に記事に再現できればいいんですが、残念ながら文才がないので面白さが伝わらなくてとても残念なことが何度も……。

―書くことに誠実に向き合ってることが伝わる答え。
残念なもどかしさは私も毎回感じてます…。

 

ー最近シミルボンに寄稿されています。
本のレビューを何本か書かれていますが、ブログとは感覚が違いますか?
意識していることがあったら教えてください。

シミルボン

 

シミルボンに関してはブログと違って書評、感想を専門に読みに来ている人がほとんどですので、ウチのブログだという前提がなくても読んでもらえるようなものを書くようにしています。

 -ウチのブログ、って言い方がいかにも。

 

ーお気に入りの記事、自分らしいと思う記事を教えてください。

 

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

 

相棒の甲斐享犯人説の回がひどかったので書いた記事。この杉下不在の相棒って思いつきが我ながら好きでして。実際にやったらかなりおもしろそうなんですけどね-。

 -相棒改善案…!なんとも『らしい』記事です。

  

書いている人について 

 ここからは普段は語られないあざなわさん個人について、少しだけ。

 

ー好きなことは?

効率的な業務、予定のない休み

 

ー嫌いなことは?

非効率的な業務、無駄な残業

 

ー仕事のことばっかり…!

 

ー趣味はなんでしょう?

読書(ミステリー、SF)、映画、テレビ(バラエティ、ドラマ、NBA)、音楽(洋邦ロック、アイドル、ジャズ、ラップ)、ゲーム

  

ー自分の性格を一言で言うと?

人見知り、めんどくさい

 

ー周りからはどんな風に評されますか?

仕事はできるが性格的にめんどくさい

 

-まためんどくさいが登場wめんどくさそう!

  

ーどんな人が好き?

かしこいひと

ーどんな人が嫌い?

あたまのわるいひと

ーうん、めんどくさい(笑) 

 

ー昔はどんな子どもでしたか?

このまんまです

 -子どもの時からめんどくさい⁉

 

ー通信簿によく書かれた言葉は?

もう少しやる気を出しましょう

ーなんか分かるような…やる気を表に出すのが苦手そうな気がします。

 ー今一番楽しい事は?

ファミコンミニのDrマリオで対戦プレイ

ーごめん、地味や…!

ー今一番欲しいものは?

起業のアイデアと資金あと勉強と読書する時間 

 ー今一番やりたいことは?

資格試験に向けての勉強と積読消化

 -とにかく時間が足りてない感じですね。忙しそうや…。

 

ー最近失敗した!と思ったことは?

ブログの記事が今ひとつ時流から外れてる感じ。とはいえ書けるものは限られてるので自己流でやるしか無いですが。

 

ー最近一番嬉しかったことは?

シミルボンの記事が好評なのは嬉しい。ブログを知らないひとに読まれて評価してもらえるというのはなかなか。

  

ーどんな時に幸せを感じますか?

休日の朝。

 

ー10年先の自分は、どうしていると思いますか?

経済的にはもう少し安定して、余裕も欲しい。ブログは10年後まで書いてるといいですねぇ(遠い目)。

 -読みたいですねぇ(微笑み)。

 

ーこれからの目標みたいなものがあったら教えてください。

ブログだけってのも寂しいし変化がほしいのでちょっと色々やってみたいなぁ、とは思いつつ忙しくて。電子書籍出すとか、イベントとかできれば面白いのになぁ、とか……。

 -イベント!面白そうだなぁ、期待です。
いつかあざなわさんが主催するオフ会に行ってみたいものです、めんどくさそうだけどw
ではでは、長々とありがとうございました~!

 

まとめ~謎の男あざなわへの考察 

 

インタビューしても、やっぱりあざなわさんは謎の人でしたね。
年齢すら不詳。

青二才さんより少し年上くらいかな?と思ってたんですが記事中に『あなた』(小坂明子)なんて渋い歌が出てくるし、好きなラノベがロードス島、夢枕獏、火浦功とかめっちゃ被ってるんですが。

 

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

 

渋い趣味の若者かなぁ…。
年が近い感じはしないんですよ。いつかお会いしてみたいものです。

 あとはこんな記事もありまして。

 

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

 


『はてなで鍋をやると聞いて。(...不参加に○)』(そもそも誘われてもいないというオチw)

こんなめんどくさいこと言ってるこの人は実は寂しいはてな―代表なんじゃないかなぁと。

欠落したこころを埋めたい、ネットで無視され、ブクマされず、スターもつかず、拡散も一切されない。それはとてもさみしい。

 これはあざなわさんの本心なんじゃないかなぁ…と思ったりもしましたけど。
素人の深読みですよね、うふふ。

めんどくさい、ちょっと皮肉屋のあざなわさんは「シニカル・ヒステリー・アワー」のキリコちゃんみたい。

これからもチラッチラッ|д゚)なんて言いながらはてなの海を渡っていくんだろうな。

 そんなあざなわさんのブログを、これからも読んで行きたいなぁ、と思いました。(ただ心臓に悪いんで言及はご遠慮くださいw)

 今日はそんな感じです!おしまーい。

「気持ちがわからない」という人がわからない、という本末転倒

増田で、たまたま2連チャンで「気持ちがわからない」シリーズを見たので。

記事の内容がどうとかじゃなく、「気持ちがわからない」と言えるあなたの気持ちがわからないよ!とお前もわかんないって言ってんじゃねぇか的本末転倒記事を軽く。

 

anond.hatelabo.jp

anond.hatelabo.jp

 

 

私は「気持ちがわからない」と否定的論調で、バカにする感じで言える人の気持ちが分からない。

気持ちが分からないこと、が世の中にあるのは分かる。

でも「分からない↺」(語尾アゲ)と言えちゃう人の気持ちが(ネットならまだしも、リアルで!)分からない。

分からない(だから教えて?)の『分からない』ならわかる。

だけど「私こういう人の気持ち全然わからなーい↺」の『わからない』って拒絶だし侮蔑だよね?
この人バカじゃねーの、的ニュアンスが含まれてるよね?

万に一人もいないような特殊な事柄ならともかく、えっ?その属性あなたの周りに沢山いますよね?って事柄を『わからなーい』ってデカい声で言える根性が私には分からない。

 

たとえば釣り好きの課長の前で「昨日の合コンの男、趣味が釣りだってさー」「うわっ、若いのに何その趣味。分かんなーい」「ねー、意味分かんない」はスゴイよ。

ヤバくね?先週課長が釣ったアカハラ一人一匹ずつ貰ったじゃん。
確かに会社で生魚は困るけれど。あっ、だから?嫌がらせに対する嫌がらせ?
ブロックザ生魚的な?

課長の肩が震えてるからやめて差し上げて!

 

居酒屋で見た初デートカップル?も凄かった。

「何食べる?」
「えーと…あっゴメン、たばこイイ?」
「え~、やだー。タバコ吸う人って意味分かんなーい!お金出して健康損ねてるようなもんじゃーん?」

…いや、正しいよ?あなたが言ってるのは正論だよ?タバコなんて吸わない方が体にいいんだよ?
でもここは安居酒屋で周りは煙草の煙でモクモクしてんじゃん?
ほら近くのヤンキーっぽいお兄ちゃんたちが明らかに「なんだぁー⁉」的顔したじゃん!怖いってば!

いや、吸っていい?って聞かれたし、断ってもいいと思うよ?でも角の立たない断り方ってあるじゃん?
「ごめんねー、私タバコ近くで吸われると咳が出ちゃうんだー」とか「気管支弱くてー」とかさぁ。

結局彼はものすごーくしらけた顔してすぐに帰っちゃいましたけど。

女の子は友達に電話。
「ちょっとー、先帰ったんだけど!マジ信じられない!」
いや!あれで相手が気分を損ねないと思う君が信じらんないからっ!

 

確かにせーかいはひーとつはキレイごとである(イッツアスモールワールドには申し訳ないけれど)。

分かんない人はいるし、分かり合えないこともあると思う。
でも「わかんなーい↺」は拒絶だよね。

分からないから聞きたい、教えて、はいいと思う。
聞いた上で、でもやっぱり分からないし、自分の考えが一番正しいや、と思うかもしれないけど。

和解出来なくてもいいから、同じテーブルに着くことが大事なんじゃないかな?
対立しあってる国が急に仲良くなれる訳じゃないけど、意見は平行線のままでも、一度対話が始まれば休戦になることもあるよね?

 

分かんなーい、あんたバカぁ?は世界を分断しちゃう。
分断されてるから、私はあなたのことが分かりたいけど分からない、って言ってしまう。分からないんだけど教えて?なら理解できるかも知れないのに。

 

分からないけどそういう人もいることは理解してる、の方がたとえ混じり合わなくてもあなたの国土は広くなるんじゃないのかな?かな?

世界も家もほどほどに広い方がいいだろうが!1LDK掃除楽チンだけどーーー!


あと分かんない人は分かり合えない人をどうしたいのか、ってのもある。
『わかんない』けど存在は認めてますよ、ならいい。

だけど考えを改めよ、は怖くね?
あなたが思う通りあなたの考えが一番効率的で無駄がなくて素晴らしかったとするじゃない?みんなが悔い改めて同じような意識の人間しかいなくなるとするじゃない?そんな世界ホントに望ましい?
人類補完計画かよ。魂をひとつに?それってすっごく気持ち悪い。

 

わからない、は確かにある。分かり合えない人もいる。

でも一方で『わからない』ってすごく面白いよね。
私はなぜバターを揚げる?と思うけど世界のどこかでは餅の上に乗ってるミカンはなんだ?って思ってる。
揚げバターを食べる人はなぜバターを揚げたのか整然と説明できるのだろうか?私はミカン(ほんとは橙?)が載ってる理由を知らないぞ!

後はまぁ、私たちの意識なんて結構流動的なもんだからあんまりでかい声で言うもんじゃ無くね?というのもある。

結婚する意味が分からない人もその後劇的な恋愛しちゃってこいつはやっぱり永遠だと思って神の前で誓っちゃって子ども産んじゃって、授乳しながら自分の投稿した増田見て「こんなこと思ってた時代もあったわね~懐かしいわ~」とか思う日が来るかも知んないじゃん?(や、増田が男か女か分かんないけど性転換も流動的世界ならありかもしんないからどうでもいいや)そんでたまたまやってたモンストにハマって娘に卑弥呼ってつけちゃうかも知んないじゃんもしかしたら!(邪馬台国はシワシワネームかな?)

あなたが今見下してる誰かは未来のあなたかも知れない、ってことでそこんとこよろしくぅ!

 

最後に二人の増田さんへ。

私は「気持ちがわからない」気持ちは分かんないけど、「シワシワネームが嫌いな理由」と「結婚して永遠を誓いたくない理由」はなんとなく分かるような気がします。

前者は自分の名前にコンプレックスがあるのかな?と思うし、後者はまだ未成熟で責任が怖いのかな、と。
名前は大人になるとそんなに気にならなくなるし(みんなシワシワしますから)、結婚という契約は、むしろ未成熟な私たちが後腐れなく別れるためにあるのかも知れないと思う。

離婚届を出したらきっぱり終われるけど、もしもだらだら10年付き合ったら何となく捨てられる?乗り換えられる?偽装だからって永遠の愛も誓えないような人がそこまで不誠実になれる?

結婚も怖いけど結婚しないで別れるのも重いよ、と言っとく。
懐は痛まないかも知れないけど、世の中には金払った方が楽だな、ってこともあると思う。

…二人には全然違うよ、って怒られそうだけどw

増田はオールナイトニッポンみたいで好きです。深夜ハガキの向うの人を想像してたことを思い出すから(と昭和の人しか分からないようなことを言い出す)。

 

そして気持ちがわからない人の気持ちがわからない私も分からない人なんだ、ってわかんないループでおしまい。

わかってる分かんない?稚内?試される大地北海道!と、よく分かんない〆ですが。

 

分かった?分からない?分かったら「分かった」と、分からなかったら「分からなかった」と・・・

分かった?分からない?分かったら「分かった」と、分からなかったら「分からなかった」と・・・

 

 

他人に上手く助けを求められる人~ノックができる大人になるために

 fujiponさんが人に助けを求められる人間である方が人生は生きやすい、という話を書いていました。そしてそうした練習を子どものうちにしておいた方が良いのではないか、とも。

上の子ども(もうじき中学生になります)が小学校に入学したばかりの頃、ちょうどそんなことを考えて色々わが家なりに取り組んでいたことを思い出しました。

今日は子どもたちを他人に上手く助けが求められる、自分の状況を周りに伝えられる大人に育てるためにした小さな練習について、書いていきたいと思います。

 

fujipon.hatenablog.com

 

我が家は両親2人、子ども2人の核家族。

5歳差の次男が生まれるまで長男は一人っ子で、結果大人と接する時間の長い子供でした。また初めての子育てと言うこともあり、私も夫も丁寧に接していたと思います。

 

後から気がついたのですが、彼は実に育てやすい「いい子」でした。

1歳を過ぎた頃から「お菓子は一日1個」という言葉を理解し、スーパーでワガママを言う事もありませんでした。

当時の私には「子供だってきちんと言い聞かせればわかるのに、スーパーで寝転がるような子供は親の常識が無いのでは」なんて甘っちょろい意識があったものです。(そんな甘ちゃん思想は後にスーパーの床を転がって移動しながら買ってアピールに余念がない次男の登場で無残に打ち砕かれましたが)


おとなしく、本を読むことやミニカーや怪獣を整然と並べることが好きだった長男。
女の子と遊ぶことが多いのが少し気がかりでしたが、大人の話をきちんと聞けるので保育所の先生からの評価は高く、劇の主役や卒業生代表もきちんとこなしていたので小学校に行っても何とかなるだろう、と思っていました。

小学校に上がってからも勉強は難なくこなし、友達は少ないけれどいじめに遭っている様子はなく、大人しいながらも人前での発表はきちんとこなせる、といった様子で我が家に小1クライシスはない、と胸を撫で下ろしていました。

 

破綻が訪れたのは初めての授業参観の時。

その日の授業は体育で、彼の得意なフリスビーをドッチボールのようにぶつけ合うドッチビーという競技。

運動が少し苦手だった息子、今日は得意科目でかっこいい姿を見せられると思ったらしく、はりきって出かけていきました。

しかし実際の授業では早速異変が。

息子のクラスは秋冬生まれの子が多く、小1といってもまだまだ小柄で見た目は保育園児のようです。担任の先生は30代の女性で、子供達はお母さんの様に甘えきっている様子、なんだか空気がだらけています。

まずくじ引きで外野を引いた男の子が外野は嫌だ!と転がって駄々をこねだしました。これでは授業になりません。

先生は私の息子ともう1人背の高い女の子を招き、外野を頼みました。
慣れた様子で2人は承諾、ゲームが始まりました。

しばらくして上手く友達に当てた息子。ところが今度は当てられた子が外野に移動しようとしません。当たったことを認めず徹底抗戦の構えです。

結局先生はアウトなしの特別ルールでゲームを再開しました。

ぶつけても誰もアウトにならないつまらないゲーム。
キャーキャー楽しそうに内野を駆け回る友人たちをよそに、息子ともう1人の女の子は死んだ魚のような目でフリスビーを投げ続けていました。

先生にその場で言いたいことは山ほどあったけれど、私はぐっとこらえて息子の手を握り、家に帰りました。

帰り道、息子は堪え切れない様子で静かに泣き出しました。
「僕も内野やりたかったな」うん、と私は静かに肯定しました。
「いつも僕ばっかり外野なんだよ」
そうだね、と肯定しながら私は息子に話しました。


お母さんは君がフリスビーが大好きで、内野をやりたかったのを知っている。
でも先生は君のことをよく知らない。
君が自分から『僕は内野をやりたいです』と言わなければ、ずっと外野でも文句はないんだな、と思ってしまうかもしれないよと。

でも、言っても…と息子はうつむきました。
誰もやりたがらないし、先生の言う事は断れないんだよ、と。

声を上げても世界は変わらないし、自分だけが我慢していればいい。

それはかつて子供だった私も考えていたことです。
そしてノックするのが苦手な人たちが考えていることだと思います。

でも私は息子に言いました。
それでも言ってみようよ。言葉でうまく伝えられないなら手紙でもいいよ。
いちど先生に思っていることを話してみようよ、と。

 

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次の日、手紙を携えて学校に行った息子は満面の笑顔で帰ってきました。

「今日の体育は教頭先生も一緒にやったんだよ。ちゃんと正式ルールで遊べたよ。僕もたくさん当てたし避けたよ」

私は手紙を書いたおかげだね!よかったじゃん!と大喜びしました。

 

実は授業参観の際、周りの大人たちの間でも冷ややかな空気が流れていました。

だって駄々をこねる子どもの言う通りにするだなんて、保育園でもそんな甘やかしはしません。これは苦情が殺到しただろう、と思いながら私は担任の先生にこっそり電話しました。

そして息子が泣きながら言った話、そのことについて書いた手紙を持って明日学校に行くので受け取ってあげて下さいとお願いしました。

やはり電話がじゃんじゃん来たようで先生は弱りはてているようでした。
なかなか言うことを聞かない生徒が多いので、ついしっかりしている息子をあてにしてしまって…と言う話でした。

結局クラスはその後補助教員を2人追加し、何とか持ち直しました。
元気でやんちゃ、じっとしているのが苦手な(後に次男坊がやんちゃ代表になるとは予測もつきませんでしたが)男子児童が多いクラスで、先生1人では収拾がつかなかったようです。

当時は心配しましたが、今になって思い返すと息子が乗り越えたトラブルは『適切な壁』だった気がします。

授業中、私が手を挙げて「甘すぎるのではないですか」と意見するのは簡単です。
他の親たちも賛同することでしょう。

でも、それをしてしまったら子供たちは先生のことを完全に舐めきってしまいます。
息子も困った時は親を頼ればいいと思ってしまう。

社会に出ればこんなふうに不公平なドッチビーが毎日繰り広げられている。
常に助けてあげられる訳ではないのです。

本当は頼りになる先生に安心して子どもをお願いできる学校が理想です。
でも先生だって同じ人間、未熟な時もある、自分の問題を抱えていたり体調が優れない時もあるでしょう。

職場でも、理想の上司とはなかなか出会えません。
完璧ではない先生とどう付き合っていくか?というのは子どもにとって後の社会に繋がる良い勉強になるのでは、と思っています。

 

『声を上げても何も変わらない』と思い込んでいた息子が、手紙を書いてすぐに結果を得られた事は最高の成功体験になりました。

それからも怒られることを怖がって忘れ物をしたことを言い出せなかったり、友達に悪口を言われたことを抱え込んでしまったり、様々なトラブルがありました。

それでもマンガ『柔道部物語』を読んで柔道を始めたことで度胸がついたり、口が達者な弟が生まれて負けないように自己主張が強くなったり、今ではすっかり逞しく成長してくれました。

 

練習はいつでもできるから

 

さて、これは私の息子のたまたま上手く行った成功体験の話です。

こんな風にしてくれる親はいなかった、とか子育て自慢をするな、とか思われるかもしれません。
しかしそもそも私が子育てが下手だったから、息子は怒られることを怖がる子に育ってしまったのだろうな、と今は反省しています。

私は長男を一人の人間として、公平に扱おうと思って育てました。
彼は人の話をきちんと聞ける子だし、話せば分かると思ったのです。
ただ一方で彼の気持ちを尊重しすぎた、彼の望まないことをやらせないで育ててしまった、という後悔があります。

もっと色々、失敗してもいいからトライさせる。
たまにはできないことをやらせて不条理でも怒る。

失敗すること、怒られることは怖くないんだよ、ということを小さな頃からもっともっと教えておけば良かったなと今は感じています。

それが出来なかったのは子どもに嫌われたくない、という当時の私の弱さからだったと思います。

今私は下の息子をガンガン怒っています。
怒らざるを得ないのです、怒らないと死んでしまうようなことを平気でやる子ですから。ガンガン怒る中で気がついたのは、どんなに怒っても子どもは親のことを嫌いにはならないのだな、という真実です。

長男の時は、子どもよりも私が臆病だったようです。

 

でも、大人しい、気が弱いけれど優しい長男も私は好きでした。
もしも担任の先生がそんな子どもの意をきちんと汲んでくれる人で、もしも柔道を始めなくて、もしも弟が生まれなかったら長男はそのまま優しい草食系で育ったことでしょう。

それならそれでも、なんとかなったのでは?と私は思います。

 

それはかつての私自身も、大人しくて先生や大人のいう事に逆らえない、困ったことがあっても人に聞けない「ノックの下手な子ども」だったからです。

 

私が声を上げられるようになったのは軽いブラック企業に就職してからです。

黙って言うとおりにしていたら14日間休みなしなんて無理なローテーションを組まれてしまう。サービス残業は当たり前、ひどい先輩になると私に任せて勝手に早退し、タイムカードは定時に押しといて、なんて無理を言う。

そんなブラック企業でブチ切れた私はもう辞めてやる!という覚悟で好き勝手を言い、労基に相談し、先輩たちの悪事もすべてぶちまけました。

当時は世間知らずの子どもだったから、かなり怖かったのです。
労基や先輩の悪口なんて持ち出したら、もう地元で働けないかも知れない。

どこか遠い町で住み込みの仲居をやる覚悟で、私はドアをノックしたのです。

 

そうして実際に声を上げてみると周囲が前より優しくなりました。
会社は無理難題を言わなくなったし、踏み倒された残業代も少しは帰ってきました。

世の中には見ていてくれたり、助けてくれる人もいるもので、結局私は前よりいい条件で、似たような職種の会社に拾ってもらい、楽しく働けるようになりました。

 

息子も「内野がやりたかった」と泣いたあの日のように、いつか堰が壊れる日が来れば否が応でもノックせざるを得なくなる。

一度誰かに助けを求めてみれば、それはそんなに難しい事でも、恥ずかしい事でも、迷惑をかけるような事でもないんだ、って気がつくはずです。

でも心が壊れるまで我慢してしまう人もいるので(私自身も円形ハゲが出来ましたし)、そんな風にギリギリまで待つんじゃなくて少しづつ練習してみるのもいいかも知れませんね。

 

私が子どもたちによく言うのは「周りにエスパーはいません」という言葉です。
親は子どものしたい事、望む事をつい察して先回りしてしまいます。

でも本当はお母さんも先生も、周りの人はみんなエスパーじゃないんです。
あなたが抱え込んでいる悩みも不満も問題も、適切な言葉で伝えてくれなくちゃ届かない。「察してちゃん」のままじゃ、誰にも助けて貰えません。

だからこの世にエスパーはいません。(伊東よごめん)
でも「困ったな…」と小さな声で呟いたら振り返ってくれる人はいるかも知れませんよね。たとえ伊東がゴム手袋を上手く割れなくても、世界には手を差し伸べてくれる人がいるかも知れませんよね。

 そしてたぶんそれって、伊東の成功確率よりは高い気がしています。

職場の小さなデザイン

11月になり、仮まとめしていた様々な書類が巨大バインダーに収まらない厚みになってきた。

そろそろ分類して簿冊名をつけ、紙のファイルに綴り直し棚に納めないと。
背表紙にはテプラで名前を貼り付けよう。

並べたときすっきり見えるように、前年度のファイルを参考に作ることにした。
だが変だ。

(カッコが【すみつきカッコになっているのだが職場のテプラで変換できない。
文字が丸っこくて太いのだが同じフォントが見つからない。

???と頭が疑問符でいっぱいになっていたら隣の席の人が教えてくれた。
「前任者はマイテプラ使ってましたよー」

マイ・テプラ。

生まれて初めて聞く言葉である。
職場には大体の文具が揃っている。
ペンや付箋なんかの小物は自分で好みのものを買うこともあるが、まさかマイ・テプラとは。

自分用に、しかも職場にテプラを買う?マジか?
テプラだの、タックインデックスだのは職場に置いてあるものを使うという意識だった私。

テプラってそもそもいくらぐらいするの…?
調べてみた。

簡易的な機能しかない安いものからPROという名前のついた高いものまで様々あるのだが、いろんなフォント、【が選べるものを探す。

  

キングジム ラベルライター テプラPRO  SR530

キングジム ラベルライター テプラPRO SR530

 

 

 い、一万円だと…!
高っ!テプラ高いよ!

多分前任者のテプラは職場のモノより新型だからフォントや飾りが多彩だったのだろうと思う。
彼が作った(前任は40代男性)ファイルは業務ごとに書体を変え、こだわっているようだった。こういう楽しみ方もあるのか、と感心した。
凝っていてうざいかわいい。

 

 しかしデザインなど分からない、こだわらないと思っていた私だが、気がつけばいつも前年度のファイルを真似て、テープの太さ、文字のフォントを揃えて並べたときに違和感が出ないようにしていた。

こんな当たり前の行為も生活の中の小さなデザインなのかもしれない。
そしてそんな細やかなデザインの楽しさに気がついた私、今揃わない背後のファイルを意識してちょっぴりイラッ☆としています(笑)他人のテプラ借りるわけにもいかないしさぁ…ぶつくさ。

職場のファイルの背表紙は明朝かゴシック、どちらかに統一した方が美しく見えると思うのですが、そこんとこどう思われますか皆さん!
そして職場にマイ☆テプラとかマイ☆タックインデックス持ち込むのはいまや常識なのですか皆さん!

 

そんな話を同僚に愚痴っていたら「私なんてメールで印象づけようと少し丸みのある書体使ってたらキレイキレイと似たような字だって言われてさぁ。裏で液体石鹸の女って呼ばれてたことあるよ」と血の気の凍る話をしてくれました。

 

キレイキレイ 薬用 泡ハンドソープ シトラスフルーティの香り 本体ポンプ 250ml+詰替大型 450ml (医薬部外品)

 

(キレイキレイの名前の文字に似ていたと思われ…何書体だったんだろう?)

 

フォント怖いよフォント。
フォント怖いよホント(うわっ)

 んじゃ、今日は短いけどそんな感じです!

【今日の魔王】
フォント警察が来るよ、怖いよお父さーん!

【今日の豆知識】
【これの名前はすみつきカッコ。

トランプ氏と遠くのこと、近くのこと

アメリカ大統領選、トランプ氏が当確して昨日の職場はざわざわしていた。

我が家でも「うおっ」とは思った(彼の主張はあまりにも荒唐無稽に聞こえるし、差別発言もあった。でも私は彼の政策をよく知らないから何も言えない)。

しかし社長や首長がすげ変わっても会社や町は廻るし(ドラ息子が社長になったら小さな会社はすぐに潰れるかもしれないが)なんとかなるんだろう、なるようにしかならないし…と普通にごはんを食べ終えた。
株やなんかを嗜んでいたらもっと必死に新聞を眺めるだろうけど、いつも通りチラシをチェックして会社に向かう。

職場は過熱していた。

トランプ氏の出ている週刊誌を買い漁り、にわかトランプ評論家と化した課長(そのうちこういう人のためにトランプ氏のムック本が登場すると思う。もう売ってるかな?)

「どうするの?あんな人が大統領になったらメキシコに壁ができて米軍が有料課金制になっちゃうよ⁉︎」とうろたえる同僚。
落ち着け、現実的に壁は無理っぽいし、米軍はスマホアプリでは無い。

トランプショックで飲み過ぎ、二日酔いの後輩(それただのノンベの言い訳や)。
トランプショックで風邪を引き休んだ後輩(それただの風邪)。

後半かなり言い訳がましい。
どうやら当社には機を逃さない奴が多かったようである。


私は政治に疎いけれど、トランプ氏が大統領になることには驚いたし不安を感じた。
イギリスがEU脱退を決めた時にも感じた、先行きへの不安感。

目には見えない時代の流れと言うものに押し流されそうになる。
しかし世紀が変わろうと年号が変わろうと、国が滅びたって生活は続く。

思い悩んでもどうにもならない、漠然とした不安を賢しい顔で論じるよりはチラシのグラム30円の鶏ムネ肉を何枚買うべきか、冷凍庫の空き容量を悩む方がよっぽど建設的である。

「漠然とした不安」と言うよくわからない物のせいで、目の前の特売品を買い逃してたまるものか。

手に届かない未来を想い悩むより、目の前にある今を生きたい。
どれだけ先行きが不安でも、掃除して洗濯して仕事して、日々のご飯をちゃんと食べれば何とか明日がやってくる気がする。

楽天的だ、こんな時代に結婚するやつ、子供産むやつ、家建てるやつは先が見えないバカだと言う人もいる。
でも来るかもしれない不幸は来たときに嘆けばいい。

自分にはどうしようもない世界の波に振り回されるより、鶏ムネ肉のグラム単価を意識して生きる方が人生は楽しい。


メディアが馬鹿にしているのは誰?


さて、前段の通り私には政治の事はさっぱりわからない。
トランプ氏の主張もクリントン氏の主張もわからない。そもそも投票権ないし。

ただ今朝のニュースを見て、トランプ氏当確を伝えるメディアの「もの申し方」にはカッティン(ゴーズオンではない)と来た。
曰く、新聞を読まない層ガー。テレビをよく見る層ガー。
当確の瞬間メディア側の人間は一様に暗い顔をした、だの。
そして愕然とする頭の良さそうな人たち。

アメリカでもいろんな報じ方があるんだろうし、日本側のメディアのバイアスがかかっているのかもしれないが、そもそもテレビでテレビをよく見る層がーって。

新聞を読まない層が彼を支持した、的なことも言われていて、それも随分思い上がった考え方だなと思った。

トランプ氏を支持する人たちはアメリカの中〜下流層が多いらしい。
入院した時限度額の負担区分がアイウエオのウ、だった私はまさに日本の多数派、中流ど真ん中。

yes、中流!の日本の私がカチン!とくるんだから当事者であるトランプ支持者たちはさぞやチンチンしていたに違いない(腹が立つ話である、念のため)。

新聞が売れなくなったり、本が売れなくなった理由はスマホの普及で、それはわかるのだけれど新聞や本を作っている側の人たちが「スマホのせいで本が理解できない、新聞が理解できない層が増えた」としたり顔で言うのは何か違うな、と感じていた。

こんな世の中でも発行部数が伸びている本もある。読み手を馬鹿にするのは思い上がりも甚だしい。

テレビの向こうで暗い顔をする報道陣にも同じ匂いを感じた。
大体テレビ番組を作っている人たちがテレビを見る層って言い方、どんだけ視聴者を馬鹿にしているのだ。

単なる私のイメージなのだけれど、学力至上主義とか名門とか、そういうものに大多数である中流下流の私たちがついにNo!を突き付けた選挙だったのかもしれない。

知識があり品格があるべきだと思われてきた国のトップだが、最近は公の場でガム噛んじゃう俺かっこいい!みたいな人も出てきた。
そのうち各国の総理の取っ組み合いがテレビで見られるかもしれない。
やべーぞロシア最強じゃねーか。

しかしそんな未来が本当に来たらどうしよう。

私は子供たちをほどほどに勉強させ、運動させ、家の手伝いをさせたりキッズキャンプに突っ込んで育てて来た。
適度な学力と体力、生活力にコミュ力があればとりあえず普通に生きていけると思ったからである。

しかしガムを吐き、毒舌力のある人が強い明日が来たら何を指針に育てたらいいのか。

柔道か?プーチンもやってる柔道がいいのか? それともサンボ?


…とまぁ、これも思い悩んでも仕方ない話。
遠くのことより、近くのこと。できることを考えていこう。

今日の私の1番大事なミッションは切らした牛乳、それから特売の鶏ムネを必ず買って帰ること。
牛乳牛乳、鶏ムネ。牛乳牛乳、鶏ムネ(本日のメモ)
今日はチキン南蛮作るんだ… (本日の小さな幸せ)

 

本はたくさんあった…。課長に薦めよう。

トランプ思考

トランプ思考

  • 作者: ドナルド・トランプ,月谷真紀
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/06/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 息子がプーチンになったら、ちょっと怖い。

プーチンと柔道の心

プーチンと柔道の心

  • 作者: V・プーチン,V・シェスタコフ,A・レヴィツキー,山下泰裕,小林和男
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2009/05/07
  • メディア: 単行本
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【大人も読める】おすすめ海外児童ファンタジー10選

寒くなってきましたね!冬はこたつで本が読みたくなる季節。
そんなわけで今日は大人も楽しめる海外児童ファンタジーのオススメ本まとめ集。

指輪物語やナルニアなんかの名作古典、みんなが知ってるハリーポッターやダレン・シャンも省いて、なるべく新しい作品中心のラインナップにしてみました。

対象年齢順に並んでますので、子供にオススメするときの参考にしてくださいね。
なお全部、大人の私でもがっちり楽しめた作品ばかりです。
大きなお友達向けだっ!


魔使いの弟子(小学校中学年から、全12巻)

 

魔使いの弟子 (創元推理文庫)

魔使いの弟子 (創元推理文庫)

 

 

子だくさんの農家の息子として生まれたトム。
7番目の息子は不思議な力を持つと言われ、妖魔や亡霊から人々を守る魔使いに弟子入りすることになる。しかしその肉体を魔王に狙われる羽目になり…。

 

ぼくはトム、7番目の息子の7番目の息子。ぼくが弟子入りしたのは魔使い。怖ろしいボガートや魔女やゴーストから人々を守る、危険で孤独な仕事だ。ぼくが魔使いに弟子入りするための最初の試験は、うらさびれた炭坑町にある幽霊屋敷で、ひと晩過ごすこと。ところが、だれもいないはずの地下室で地面を掘る音がする……。怖がりの少年トムは無事に魔使いになることができるのか? 

 

引用したあらすじの雰囲気で分かるように小学校中学年くらいから読めます。
挿絵も入ってます。ただし物語も挿絵も怖い!

寒く薄暗い寒々しい、湿地や荒地を舞台に繰り広げられる荒涼とした物語。

主人公トムは怖がりだけどまっすぐな主人公気質ですが、師である魔使いは女に裏切られボロボロの偏屈者だし、ヒロインアリスは魔使いが忌み嫌う魔女。

魔女は子どもの時は力が強く魅力的ですが、そのうち魔に取りつかれ闇に堕ち、人ならざる存在になってしまう、と言われています。ソウルジェムが濁っちゃう的なアレか。

トムに惹かれたことで、彼を守ろうとしながら魔女である自分と葛藤するアリスが魅力的。自分が闇の側の人間であることを感じながらもトムを助けるためなら何を捧げてもいいと思う、迷いや献身が人間らしく逞しい。

トムの師となる魔使いも自分の過去や執着や、色んなドロドロしたものに囚われつつも前に進もうとあがくおっさんで素敵です。

ケルト神話のような、おどろおどろしい童話が読みたいときにはぜひ。

 

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々(小学校中学年から、全5巻)

 

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃

 

 

 

パーシー・ジャクソンは、ある時突然、ギリシャ神話の神々の息子のひとりであると告げられる。仲間のアナベスとグローバーとともに、旅に出ることになったパーシーに、予言の神が下した神託は4つ。〈おまえは西へ行き、そむいた神と対面する〉〈おまえは盗まれたものを見つけ、持ち主に無事に届ける〉〈おまえはおまえを友と呼ぶ者に裏切られる〉〈おまえは結局、もっとも大切なものを守りそこねるさらわれた母親の運命と、まだ見ぬ父親への複雑な思いをかかえて旅するパーシーの冒険の結末は……。

 

映画化された作品。
映画版だとボールペンやスニーカーが神器になる今ドキ感や、NYを舞台にしたアクションシーンが目を惹きますが、原作では親子の絆や友情にも重きが置かれています。

主人公たちの親であるオリンポスの神々は神話通りの性格だけれど、より人間臭くわがままで愛情深い。
人間と神の間に生まれた主人公たちの悩みも細やかに、リアルに描かれています。

パーシーたち神と人の子の特性(集中力に欠けたり、落ち着きがないところがある)がADHDのそれに近く、多分そうした子どもたちへのメッセージも込めて書かれているのだと思う。

世界を救う神の子でも、学校でのいじめや親の無理解は辛い。
兄弟との付き合い方、友達の作り方、親との向き合い方など、トラブルを乗り越える度身も心も強くなって行くパーシー。

児童文学には物語を通して周りに馴染めない、自分に自信がない子どもたちが社会や組織の中で上手くやっていく方法、前向きな心の持ちようを学ぶ認知療法的な一面もあると思います。

「パーシー・ジャクソンシリーズ」は一見ちゃらい、今時のファンタジーに見えますが実は様々なメッセージが詰まっている作品。
詰め込みすぎると説教臭くなるのでさじ加減が難しいけれど、楽しくエンタメなこの作品はそうしたバランス感覚が素晴らしい。

生きづらい子ども、生きづらい大人にこそ読んで欲しい楽しいシリーズ。

 

アラルエン戦記(小学校高学年から、既刊9巻~)

 

アラルエン戦記 (1) 弟子

アラルエン戦記 (1) 弟子

  • 作者: ジョンフラナガン,入江真佐子
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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主人公は孤児の少年ウィル。
将来の職業を決める15歳の「選択の日」に憧れていた騎士ではなく、レンジャーを目指す羽目になる。
謎に包まれたレンジャーとしての訓練をこなすうちに、師との絆を深め、逞しく成長していくウィルと仲間たちの成長記。

 

これは今一番のオススメ本!続きを心待ちにしているファンタジー。
中世ヨーロッパを彷彿とさせるアラルエン王国、そしてレンジャーという組織のあり方がよく練られていて面白い。

大事な役目を担いながらも人々から恐れられるレンジャーは『氷と炎の歌』のナイツ・ウォッチみたい。仕事は情報収集や証拠集め、隠密行動。国の諜報機関やスパイみたいなものだろうか。

父を知らないウィルが師の愛情に恵まれてまっすぐに成長して行くところ、孤児院の仲間とぶつかり合いながらも信頼を深め友情を結んでいくところがいい。

主人公が隠密職なので、力技ではなく暗躍や策略で乗り切っていくところが面白い。
奴隷にされたり薬漬けにされたり、児童向けとは思えないハードな展開も凄いです。

現在9巻まで出ていて、次巻完結予定。
本当に大人も楽しめる、むしろ大人こそ読んで欲しいしっかり練られた骨太の物語です。

 

バーディミアス(小学校高学年から、全3巻)

 

バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝

バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝

 

 

舞台は魔術師が存在するパラレルワールド、ロンドン。
魔法修行中の12歳の少年ナサニエルが、復讐のために妖霊を呼び出してしまう。
召喚されたベテラン妖魔『バーティミアス』はニヒルを気取る、変わった奴で…。


召喚された魔物バーティミアスがとにかく魅力的!飄々として、口が減らないくせにどこか抜けていて。主人公ナサニエルはプライドの高い生意気なクソガキなんだけど、なぜか憎めない。ごちゃごちゃした賑やかな物語が信頼と友情の感動のラストに繋がるところが素晴らしい。児童書なの⁉と言いたくなるくらい分厚い本ですが、ミステリー的展開に引っ張られてグイグイ読めます。
1冊で物語がまとまっている所、全3巻という簡潔さもいい。

お金や地位に惑わされ、時間に追われる主人公はミヒャエル・エンデの『モモ』の大人たちを彷彿とさせます。

ラストが凄く印象的だし、出世欲に目が眩む主人公はなかなか児童書では見かけない設定で、そんなところも面白いです。

 

盗神伝(小学校高学年から、全5巻)

 

盗神伝〈1〉ハミアテスの約束

盗神伝〈1〉ハミアテスの約束

 

 

牢に囚われた盗人の少年ジェン。解放されることを条件に、「ハミアテス」と呼ばれる伝説の石を求めて旅に出る。困難を乗り越えてたどり着いた先は、死の罠に守られた迷宮だった…。

第一巻は見事にだまされた。
主人公ジェンは生意気で口が達者な少年で、本当に実力があるのか、口だけなのか⁉とハラハラしていたら思いがけない展開に。
児童書でこれだけ伏線を張る物語は珍しい。一巻は少し冗長だけど、そこを乗り越えればシンプルに面白かった。

神々が実在する世界で、神に愛された少年の成長物語。
主人公がシーフなので、知恵と策略と満ちてるところが面白い。
装丁やタイトルが少し古臭いのが玉にキズです。中身はいいんだよ…!

 

タラ・ダンカン(小学校高学年から、全12巻)

 

タラ・ダンカン 若き魔術師たち(上)

タラ・ダンカン 若き魔術師たち(上)

  • 作者: ソフィー・オドゥワン・マミコニアン,山本知子
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2004/07/02
  • メディア: 単行本
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フランス南西部のひなびた村タゴン。古い屋敷でおばあちゃんと暮らす12歳の少女タラ。ある日、タラに不思議な力が備わっていることが判明する。それを知った闇の一族サングラーヴは、「タラがついに目覚めた!」と、タラをつけ狙う。ところが、タラはサングラーヴと敵対する魔術師によって別世界へワープさせられてしまう。

 

主人公タラは魔法が存在する、別の世界の人間だった。
バンパイアや狼男、ドラゴンたちが暮らす別世界オートルモンドと地球、悪魔の住む魔界で、皇女であり強大な魔力を持つタラと仲間たちが活躍するファンタジー。

日本版の表紙は村田蓮爾さんのイラストで、素晴らしくかわいい…!

作者はフランスの方で、ファッションにこだわりが感じられて女子的に楽しい作品。
恋愛に関する話も多く、タラという強いけれど普通の内面を持つ女の子の、少女漫画チックなファンタジー。

タラを取り巻く大人たちが子どもへの愛情より自分の恋愛や国策、政治的思惑を優先してしまうことがあるのが面白い。
「結局私のことを純粋に心配してくれるのは友達だけ」と絶望するヒロイン。
なんて切ない大人観だ。

敵のボスがタラの母に横恋慕していたり、そんなボスに恋して吸血鬼の美女は仲間を裏切るし、頼りになるはずの先生はそんな美女にメロメロだし。
とにかく恋愛要素の多い作品。

なお、ヒロインタラはグループ内で男を乗り換えているので現実的に考えるとサークルクラッシャーである。

 

アルケミスト (小学校高学年から、全6巻)

  

アルケミスト 錬金術師ニコラ・フラメル

アルケミスト 錬金術師ニコラ・フラメル

 

 

かつて、ひとりの錬金術師がいた。その名は、ニコラ・フラメル。古の秘儀書『アブラハムの書』を解きあかし、だれもが追いもとめたのに得られなかった、あの“賢者の石”を手にした―すなわち、不死の秘密をわがものにしたというが…。ニコラは、パリで死んだと言われている。だが、“賢者の石”についてはメモひとつ残されていない。生きていれば、七百歳に近いはずだ…。幻惑のノンストップ・ファンタジー。


たまたま古書店でアルバイトを始めることになったソフィーとジョシュ。
男女の双子が巻き込まれる、不思議な錬金術師たちの物語。
双子意外の登場人物が魔術師もしくは人ならざるもので何世紀も生きているから死生観が怖い、感覚が違う!

 誰が善とも悪とも言い切れない、スケールの大きな作品です。
しかし一万年の時を飛び越えて展開するから長い長い物語のような気がするんですが、実際はほんの数日のお話なのが面白い。

魔術に呪術、占星術。太古の神々や魔物が徘徊する監獄アルカトラズ。古代と現代が入り混じるファンタジーです。

 

 

グリフィンの年(中学生から、全2巻)

 

グリフィンの年 (創元推理文庫)

グリフィンの年 (創元推理文庫)

 

 

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの傑作ファンタジー。
「ダークホルムの闇の君」の続編ですが、こちらから読んでも違和感は感じないかと。

「ダークホルム」はRPGと魔術師一家のドタバタファンタジー、「グリフィン」は魔術師の末の娘エルダが魔術大学に入学したことで巻き起こる、学園ラブコメファンタジー?

ちなみにヒロインエルダはちょっと小柄なグリフィン(大広間なら入れるくらい)。同級生がグリフィンに人間の魔術師、よく穴に落ちる王子様、沼色をしたお姫様にドワーフと、とにかくキャラクターが多彩で面白い。

生徒たちは(教師たちも)皆それぞれの悩みを抱えているのだけれど、ごちゃごちゃにもつれた問題の糸がきちんと解きほぐされてあるべき所に収まるラストが小気味いい。

 

あたしと魔女の扉(中学生から、全3巻)

 

あたしと魔女の扉 (ハヤカワ文庫 FT ラ 3-1)

あたしと魔女の扉 (ハヤカワ文庫 FT ラ 3-1)

 

 

オーストラリア発のヤングアダルトファンタジー。

主人公リーズンは邪悪な魔女である祖母から逃げるために、母と世界中を転々とする暮らしをしている少女。しかし母が精神病院に入院、リーズンは母が「邪悪な魔女」と呼ぶ祖母に引き取られることになる。

祖母は本当に魔女なのか?全ては母の妄想だったのか?

ある日リーズンは裏庭に通じる不思議なドアの鍵を見つけ、扉を開けてしまう。
夏のオーストラリアにいたはずなのに、扉の向うは冬のNYだった…。

 

現代を舞台に、不思議な力を持つ10代の少年少女たちの物語。

彼らは皆遺伝的に魔法の力を持っている。しかしそれは使い過ぎると命を縮め、逆に使わないでいると正気を失う、という呪いのような力でもある。したがって彼らの親は精神病院にいるか早くに亡くなっている…と言う設定が怖い。

夏のシドニーの扉の先に雪のNY、というナルニア物語のようなオープニングが印象的。リーズンたちが魔法を使うシーンも万華鏡のようなイメージが浮かぶ、色鮮やかで瑞々しい作品。親子とは、命を繋ぐとはどういうことか?考えさせられる物語です。

なおヒロインは最後に10代で母に。
映画化されて人気になったアメリカの吸血鬼モノ「トワイライト」もそうだったけど、海外のヤングアダルトはS〇Xなんて当たり前、その先まで書くのでYAとは?とジャンルの区切りの虚しさを思い知る羽目になる。

 

紅玉は終わりにして始まり(中学生から、全3巻)

 

紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜 (創元推理文庫)

紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜 (創元推理文庫)

 

 

こちらはドイツで人気のYAタイムトラベルファンタジー。

高校のカフェテリアでめまいに襲われたヒロインが中世にタイムスリップしてしまう、恋愛物。
実は主人公の一族にはタイムトラベルの力があり、その中で果たさなくてはいけない秘密の使命を持っている。

1巻はどたばたラノベ的な雰囲気だが、2巻はタイムトラベルの力を持つ一族の謎や秘密結社の存在が絡んできてミステリー的展開になり、俄然面白くなる。
中学生くらいの女子から、昨今ときめきが足りてない大きな女子までオススメです。

 

さて、ここまでで10作品! 

他にも「サブリエル」(古王国記シリーズ、全三巻)や大魔法使いクレストマンシーシリーズ(全7巻)「ライラの冒険」(黄金の羅針盤シリーズ、全3巻)も紹介したかったのですがここまでで6500字越え、今回はここでギブアップ。

時間があるときに加筆するかも。

 あなたの好きな作品はありましたでしょうか?
海外児童ファンタジーで、今面白いのはコレだろ!って異論があったら是非教えてくださいね!それではまたっ。

 

サブリエル―冥界の扉 (古王国記)

サブリエル―冥界の扉 (古王国記)

 

 

魔女と暮らせば―大魔法使いクレストマンシー

魔女と暮らせば―大魔法使いクレストマンシー

  • 作者: ダイアナ・ウィンジョーンズ,佐竹美保,Diana Wynne Jones,田中薫子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 単行本
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黄金の羅針盤 (ライラの冒険シリーズ (1))

黄金の羅針盤 (ライラの冒険シリーズ (1))

 

「山をなめるなおじさん」の気持ちを代弁してみた

「日本を滅亡から救うため、登山初心者が槍ヶ岳に登ってきた」という記事のブコメ欄に「山をなめるな」おじさんが湧いていました。

 

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記事自体は日本の中心を槍ヶ岳から眺める!というおバカな企画で、なかなか体を張っているし面白かったのですが「単独行であること」、「軽装に見えること」「登山初心者と謳ってしまったこと」が問題だったのでは、と思います。

実は私もタイトルを見たときは「山なめるなゴラ!」と思っちゃいました…。

実際の記事ではちゃんと山小屋に泊まり、時間をかけてゆっくり登っているようですし、何より無事に帰って来れたので問題は無かった訳ですが。

多分私や「山なめるなおじさん」が憤ったのは記事を書いたりょーすけ君に対してではなく、「初心者で」「単独で」「軽装で」山に登る人に対しての怒りが噴出してしまったからだと思うのです。
それから今秋遭難したたくさんの人への怒りが、記事に向かってしまったのかと。

なんで私たちが怒るかって?

それは地方財源、それから警察や消防、消防団の話になってくるのです。


山をなめるなおじさん代表。

 

日本を滅亡から救うため、登山初心者が槍ヶ岳に登ってきた

追記にもあるが、山をなめるな。無事に生還できたのはたまたまだ。ネタ企画のために命かけるとかどうかしているし、これを見て気軽に挑戦して死ぬ馬鹿が現れたらどうするのか。山はワンミスや不運で死ぬ。なめんなよ

2016/11/02 20:08

 

ツインテールで瞑想と運動と野菜350gをすすめるマンに怒られるのもキツイよなぁ…。でもこの人も自営業だし消防団なんじゃないか、という気もする。


会津遭難事情

 

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会津は会津百名山、なんてリストがあるほど山に囲まれた場所です。
燧ケ岳、飯豊山、そして会津磐梯山。他にも尾瀬や駒ヶ岳など、自然に恵まれた場所。

登山ブームの昨今、観光客も増えました。
するとどうなるか?紅葉も美しく天候にも恵まれた今秋。

遭難者もてんこ盛りな訳です…。
10月は、ほぼ毎週末遭難者情報が出ていたような気がします。
半分が亡くなり、半分が助かる、厳しい秋となりました。


遭難するとどうなるか?


山で遭難するとどうなるか、ご存じでしょうか?

・本人が携帯で道に迷ったと連絡してくる
・家族が帰宅時間までに帰らないと連絡してくる
・予約した山小屋や宿の主、駐車場の管理者が予定時刻に帰らないと連絡してくる

だいたいこの3パターンで遭難が発覚します。

駐車場代をケチり、無断で物陰に車を止め、家族に言わず登山申請を出さずに一人で山に登るような人は遭難したら終わりです。
運が良ければ春先山菜取りの人に白骨を見つけて貰えるでしょう。

 

遭難者が出ると警察、消防、それから地元役場に連絡が行きます。
天候が良ければ防災ヘリが出動します。
警察、消防は福島県では無料です。
特に防災ヘリは莫大な予算が掛かりますし、長野県など有名な山のある地方ではそれらの出費が問題視されているようです。

天候不良の時は消防、警察の登山隊が山に登ります。
それでも見つからない場合は、家族などの承諾を得て、役場が消防団へ出動を依頼します。

彼らはあくまでも副業として消防団に参加していますので、仕事を休んで救助に参加することになります。
従って僅かばかりの日当が出ますが、この費用は福島県では遭難者の家族が負担します。

ですから家族と連絡のとれない、単身者の場合は消防団が出動できない事態もあります。厳しいけれどこれが現実です。

消防と警察は無料で探してくれますが、公務員はガンガン縮小されているので人数に限りがあります。
また捜索には何日間、という区切りがありその期間が終了したらたとえ見つからなくても捜索は終わりです。
それでも探してほしいなら、自費で消防団を雇ってお願いするしかありません。

消防団の人数もどんどん減少していますし、大人数で捜索はもう無理なのかも知れません。寒暖差の高い山での救助は時間が大切ですから、生存率は下がってくるのだろうな、と思います。


遭難と自己責任

 

もちろん山に行く人なら誰でも、遭難する可能性はあるのです。
毎年山に行く熟練者でも、ふとした気のゆるみから滑落し、命を落とすこともあります。

ただやはり毎週末遭難する人たちは「初心者」「単独」「軽装」で、山を舐めている、と言いたくなる人が多いのは事実なのです。
彼らのために毎週末駆り出される関係者なら、「山なめんな!」と言いたくなる気持ちも分かるのではないでしょうか。

私のダンナは100kg超級の人を4人がかりでタンカで山から降ろしたことがあります。
天候不良でヘリが飛ばなかったのです。
仕事だから、金もらってるから…では済まされない気がします。


でもやっぱり山は楽しいよ


地方に負荷が掛かりすぎている、山なめんな!助けるほうの身になれ!と思う一方で、もし装備も人数も登山計画もガッチリ作って絶対安全に山に登れ!という社会になったら山は楽しくないんだろうな、と思っている私もいます。

100㎏超えを山から降ろしてボロボロのダンナに、私が「そういう奴は山に来んな!」と怒ったら彼は「山はみんなの場所だからなぁ」と笑っていました。
マジ天使…山神…。

そんな惚気はともかく、命の危険を感じる、恐怖を覚えることもまた山の楽しみなのかなぁ、とは思うのです。
もちろん本当に死んでしまう事もあり得るし、他人の浅はかな命試しに振り回される人間の身にもなってくれ、という怒りは感じますが。

私は冒険や探検物のノンフィクションが大好きですが、彼らも一歩間違えば他人に迷惑をかけるかも知れない立場な訳です。
絶対に他人に迷惑をかけてはいけない世界になってしまったら、血湧き肉躍る冒険も味わえなくなってしまいます。

遺体を発見する方の身になれよ、バカ!とか遺体すら見つからない、行方不明者の家族の気持ちを考えたことあんのかよ!なんて責める気持ちもある一方で、高い装備買って準備バッチリで山に来い、って世界になったら山は金持ちの場所になってしまう、とも思うのです。
だって完璧な登山用品ってホントに高いんだもん。

迷惑かけんなバカ!と思う一方で、出来たら山を楽しんでほしいと思っている私。
矛盾してるけど、やっぱり山は楽しいから。

子どもが出来てから夫婦では登らなくなったけど(夫婦で遭難したら無責任すぎだから)子どもが大きくなったらまた再開したい。
体力つけておかないと。

なぜ山に登るのか、というと「死ぬかもしれない」という根源的な恐怖と身一つで向き合える場所だからなのかも知れません。

頭でっかちになってる自分が溶けていく場所、というか。
自分なんて大したことないし、出来ることしか出来ないんだなぁ、人を助けるなんてもってのほか!と思えますよ。
だって体力的に他人のザックなんて背負ってあげられないんだもん。

 

りょーすけ君は最後顔が死んでましたが、出来たらもう一回、日本のヘソにチャレンジしてほしいな、と思います。
今度は山岳部や経験者の力を借りて、登山計画をちゃんと立ててルートを探して、槍ヶ岳からじゃなく日本のヘソに直接立ってみて欲しい!

山と山の間。あそこは絶対楽しいよ、冒険だよ。
まぁ絶対儲からないだろうし、ブログの域を超えてますが。

ホントに楽しい事はきっと無理の先にあるんだよ…と他人事だからテキトーに言っときますw
まぁそれはネタとして、今度はみんなで楽しく登って山で笑顔を見せて欲しいな。
山はホントに楽しい場所だと思うんで、もしよろしければ。

 

最後に私信。
せっかくのりょーすけ君の楽しい記事に水を差してしまって、ごめんなさい。
ヘソを探して実際に一人で山に登るバイタリティは本当にスゴイ!と思います。
実際に歩き出す若者に年寄りは敵わないよ。
これからも楽しい記事をばんばん書いて下さいね。

そんな感じで、今日は終わりっ!