今頃人気のアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』を見終わりました。
もはや作品については語りつくされていると思うので、今回は「サイコパス」から連想した他のディストピア小説、マンガを紹介したいと思います。
ディストピアとは?
SFなどで空想的な未来として描かれる反ユートピアの要素を持つ社会。平等で秩序正しく、貧困や紛争も無い理想的な社会に見えるが、実態は徹底的な管理・統制が敷かれ、人としての尊厳や人間性がどこかで否定されている。
色々ありますが、今回は「サイコパス」のシビュラシステムのように、血統やさまざまな要素で差別される格差社会の物語に絞りました。
ど定番、「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」「1984年」は作中でも出てくるのでパス。
・「NO.6」あさのあつこ
一番最初に思いついたのがこの作品。アニメ化もされてますが未視聴なので原作の話。
未来都市NO.6で暮らす紫苑は幼児検診で最高ランクに認定された、生まれながらのエリート。高級住宅街で何不自由なく暮らし、レールから外れることを恐れている。怪我をした少年ネズミを助けたことで高級住宅街から準市民の居住地へと追いやられ、理想都市の裏側を知ってゆくのだが…。
こちらは講談社のYA!ENTERTAINMENTというレーベルから出ていて、青少年向けのジュブナイルといった立ち位置でしょうか。同じレーベルからは都会のトム&ソーヤや、妖怪アパートシリーズといった良質な物語が出版されています。地元の図書館では児童書コーナーに置いてありました。
NO.6は大人が読んでも楽しめるし、子供がはじめて読むディストピア小説としてもピッタリの作品なんですが。
私には紫苑とネズミの愛の物語に読めました…。
そこらへんアニメではどう表現されているんでしょうか。気になります。
・「新世界より」貴志祐介
こちらもアニメ化されてますが未視聴なので原作。1000ページを超える長編ですが先が気になって一気に読みました。
1000年後の日本、人類は呪力という超能力を身に着け、バケネズミと呼ばれる生き物を使役し平和な生活を送っていた。
12歳になった早季もまた友人たちと同じように能力に目覚め、呪力の訓練を開始する。夏季キャンプに出掛けた早季たちはそこで前時代の遺物である図書館の自走式アーカイブと出会い、禁断の知識を得てしまう。
SFで、ファンタジーで、ホラーもミステリーの要素もあるすごく面白い作品。作者の貴志さんはミステリー、ホラー、SFと幅広いジャンルで活躍されている方なのでそうした資質が生かされた物語になっています。主人公の周りにある事細かなルールが何のために作られたのか、終盤ぐんぐん謎が解けていくのが快感。呪力者の能力が制限されている理由、とかバケネズミがその姿な訳とか、怖いし酷い。バケネズミたちの最終兵器もエグい。結構残酷な物語なのでこちらもアニメでどう描かれているのか気になります。
もし「サイコパス」でマキシマのような特殊体質者達が 革命に成功していたら、「新世界より」みたいな未来を迎えるんでしょうか。
・「地球へ…」竹宮恵子
こちらは少女マンガ。やはりアニメ化されています。
遠い未来、人類はマザーコンピューターに管理されていた。
地球から遠く離れた植民惑星で育ったジョミーは、14歳の誕生日に「目覚めの日」と呼ばれる成人検査を受ける。しかしそれはミュウと呼ばれる新人類を発見し排除するためのもので…。
これは人間と新人類の長い戦いの物語。コンピュータに矛盾するプログラムを組み込まれていたり、タイトル通り地球を訪れることが戦いの終結につながるところが面白いですね。新人類は繊細で短命、という弱点がある所が「新世界より」との違いでしょうか。
・「ルー=ガルー忌避すべき狼」京極夏彦
管理社会に統制された都市に人々が暮らす近未来。人同士は端末で繋がり、物理接触が希薄になっている。常に監視されているはずの都市で少年少女が狙われる殺人事件が起こり…。
京極夏彦がアニメ雑誌やネットに応募されたアイデアや設定を用いながら美少女が活躍するSFアクションを書く、という異色作。
もう企画勝ちですよね。ひどいアイデアも萌えもエロも京極堂ワールドに入ると混沌に消化されてなんでもアリ、みたいになってます。
相変わらずの語り口で、舞台はサイバーパンク、という違和感がすごく楽しい作品でした。続編があったのを今更知ったので、こちらもチェックしたい。
・「獣王星」樹なつみ
「OZ」も浮かびましたが、より階級や支配の印象が強いこちらを。
遠い未来、宇宙に進出した人類は太陽系から独立し独自の政府を築いていた。コロニーに暮らす双子の兄弟、トールとラーイはある日両親を殺され、死罪の者が落とされるという惑星「キマエラ」に落とされる。そこは、過酷な環境と独自の掟が支配する弱肉強食の世界だった。
こちらの舞台は未来都市ではなく原始の世界キマエラです。独自の生態系をもつ過酷な環境の中で、復讐を果たすために少年はキマエラ最強の獣王を目指し戦います。
キマエラの自然環境が地底世界ペルシダーを彷彿とさせて、面白いです。そんな過酷な世界で逞しく生きる少年少女たちの物語。ヒロインの野生児フィズが可愛い。アニメもあるみたいですが大分省略されてるらしいですね。
・「ロミオとロミオは永遠に」恩田陸
こちらは設定は近未来なのに物語は前時代的な学園ものという異色作。
日本人だけが地球に残り膨大な産業廃棄物の処理に従事する近未来。
卒業総代になればエリートの道を約束されるという大東京学園に入学したアキラとシゲル。二人を待ち受けていたのは前世紀サブカルチャーの遺物にあふれたキャンパスで行われる過酷なゲームだった。
恩田陸らしからぬ明るく熱血でコミカルな作品。舞台は全共闘時代風で、「キルラキル」が好きな人ならはまるかと。パロディも多くていっきに読ませてくれます。
恩田陸さんは他にも好きな作品の多い作家さん。
個人的に思い入れがあるのは「ネクロポリス」。わくわくするような設定と素晴らしい謎の数々。大傑作じゃね?と読み進めていく内に少なくなっていく残りページ数。そして訪れる浦沢直樹を彷彿とさせるラスト。
…もう少しどうにかならなかったのかよ、と怒りすら覚える読後感でした。
まあ新聞連載の小説だったので、毎回盛り上げる、という意味では成功だったんでしょう。
・「マルドゥック・スクランブル」沖方丁
こちらはサイコパスと同じ近未来の刑事物。よりサイバーパンク色が強く、「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」の世界観に近いです。
少女娼婦ルーン・バロットは大手企業オクトーバー社のシェルの策略に落ち殺されかける。承認保護法により救われ特殊能力を得た彼女はネズミ型万能兵器ウフコックと共にシェルの犯罪を追うことになる。
この作品はよくサイコパスと比較されてますね。バロットもいいけどウフコックの可愛いさは異常。
もし私の好きな三大ロボット、みたいなのがあったら私はウフコックとタチコマとR2-D2を挙げたいです。
・「ミストボーン」ブライドン・サンダースン
こちらはファンタジー。でもかつて失われた文明があり、人々は厳しい階級によって支配され、一見平和に見える世界が実は…という展開がまさにディストピアなので。
7つの火山から灰が降り注ぎ、夜になると霧に覆われる終の王国。王国は千年の長きに渡り支配王に統治されていた。最底辺である奴隷階級の少女ヴィンは、盗賊団の一員として生き延びてきた。そんなある日貴族への加担を疑われ仲間たちから制裁を受けるはめになる。彼女を救ってくれたのは伝説の盗賊ケルシャーだった。
今まで紹介した本の中では一番マイナーですが一番のオススメ!
3部作、全9巻の長編ですがスピード感があって一気に読めます。
雰囲気はマルドゥック・スクランブルに似てるかな。ダークでパンクなファンタジー。孤独に生き延びてきた少女が仲間や力を得て、大人になってゆく成長の物語でもあります。
なによりヴィン達が使う「合金術」という特殊能力がすごく面白い。自分の体中で鉄や銅といった金属を燃やすことで力を使うことができるんです。
それぞれの金属ごとに引き出せる能力が違ったり、純金と合金では作用が違ったり。
そこらへんの設定が本当に深く考えられていて楽しいです。
ヴィンはケルシャーと出会うまで合金術を知らないので、一つずつその作用を仲間であるそれぞれの専門家たちから教わって行きます。その過程がすごく面白い。仲間たちも個性的でみんな本当にいいキャラクターなんですよね。
ヴィンという少女が加わったことメンバーたちが家族のような絆を感じていく所、大人になったヴィンが初めて好きになった人のために苦悩しながら仲間を裏切る所、そして美しいラストまで、思い返すだけで涙が出てくるような傑作ファンタジーです。
とりあえず以上。最後まで読んで頂きありがとうございました!
もし読んでみようかな、とか思える本があったら嬉しいです。
とりあえず私はサイコパス2を見ようと思います。