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麻耶雄嵩「隻眼の少女」は繰り返す因縁の物語

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時間があったので、久々に書店で本を買いました。
最近はネットからの購入ばかりだったのですが、やはり実物が見れるのは楽しいです。知らない作家さん、気になった本も何冊も見つかったし。

気がつくと結構な時間が経ってました。

結局たくさん購入したなかで真っ先に読んだのがこの本。

麻耶雄嵩「隻眼の少女」。

隻眼の少女 (文春文庫)


実は図書館から借りたハードカバー版で一度読んでます。
でも好きな作家さんだし面白かったので文庫版を購入しました。
京大出身で綾辻 行人、法月 綸太郎、島田 荘司という錚々たる顔ぶれに推薦されてデビューした方だけあって、すごい尖った作風。
探偵と助手が逆転していたり、安楽椅子探偵への皮肉だったり。癖があるけどミステリ好きにはたまらないロジックに満ちた作品ばかりです。

で、日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞をW受賞したこちら。
まず表紙を見て驚きました。巫女装束の美少女。
萌えとは相当距離のある作者にいったい何が、と思いました。
内容も面白いけど一見普通の伝奇ミステリで。
あれ?と思うと後半がらっと覆される、やっぱり仕掛けありの面白い小説でした。
 

隻眼の美少女は名探偵。

1部(過去編)のヒロインは表紙の少女、御陵みかげ。彼女は隻眼の名探偵として名を馳せた母御陵みかげの2代目です。今は亡き母の後を継ぎ、母の名を継いで元刑事の父と共に活動しています。
そんな彼女が遭遇するのは、村の生神スガルを継ぐはずだった少女が殺害された事件。探偵は2代目、被害者は後継者候補です。
事件は無事解決したものの、被害は大きく…というところで1部は幕を閉じます。
 
そして2部(現代編)。探偵は3代目御陵みかげ。2代目が亡くなり、2代目と同じく娘が後を継いで探偵デビューしています。
亡き母の因縁の村を訪れた彼女はそこでまたスガル様の家族が殺害される事件に遭遇し…というストーリー。
 
2代目、3代目。そして事件も同じ家の後継者が狙われるという繰り返し、共通項ばかりの物語。ワトソン役の青年は両親を事件によって亡くしているのですがそれもまたどこか繋がっているようで。ネタバレになるので詳細は避けますが相変わらず探偵物を逆手に取ったひどい(いい意味で)謎解きだし。
そして最後の一言がゾクッと怖いのも作者ならではですね。
 
いつもの麻耶雄嵩作品から比べると、シンプルだし他のシリーズ作品との繋がりもないので、初めて読む方にもオススメできます。
ファンとしては逆に読みやすさが物足りなく感じたので、こちらが面白かったという方には更に、「夏と冬の奏鳴曲」「鴉」などの麻耶雄嵩節がたっぷり楽しめる、メルカトル鮎シリーズをオススメしたいです。

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