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背徳のぐるりよざ セーラー服と黙示録~三人の美少女と正直村

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   今日は、「背徳のぐるりよざ セーラ服と黙示録」/古野まほろを紹介します。
以前ちらりと紹介した「セーラ服と黙示録」の続編ですね。
出版はこちらの方が後ですが、作中の時間軸では「背徳のぐるりよざ」の方が先なのでこの本から読み始めても問題ありません。
セーラー服~は冬の話、ぐるりよざは遡って春の話。夏の話が抜けてますね。次作は水着回かな?わくわく。 

 

 

背徳のぐるりよざ  セーラー服と黙示録 (単行本)

 

 

ヴァチカン直轄の探偵養成学校「聖アリスガワ女学校」恒例行事・三泊四日の春期合宿が始まった。しかし、遠征先への移動中、運転手は倒れ、生徒たちは次々と気を失い…。気がつくとそこは、目的地とまったく別の「鬱墓村」という、戦争が終わったことも知らない、刻が止まった奇怪な村だった。そして、彼女たちの前で立て続けに起こる殺人事件。犯人論を得意とする、フーダニットの島津今日子、手口論を得意とする、ハウダニットの古野みづき、動機論を得意とする、ホワイダニットの葉月茉莉衣。女学校が誇る精鋭三人組の華麗なる探偵術は、呪われた鬱墓村に、真実と救いの光をもたらすことができるのか!?

 

  探偵が警察よりも権力を握る世界で探偵術を学ぶ女子高生3人の物語。

彼女達の通う閉ざされた孤島の学園も魅力的ですが今回は春の研修旅行がメイン。

探偵術の実践が行われる旅行中に事故が起こり三人は戦時中軍の策略により閉ざされしまった村に迷い込む。敬虔なクリスチャンの住む、時間の止まった不思議な村で起きた殺人事件。三人は事件を解決し無事村を脱出出来るのか?

ボブカットでメガネっ子、気がつけばみんなの中心にいる今日子。

黒髪ロングにシビアな口調のみづき。

ゆるふわ茶髪の愛されビッチ系茉莉衣。

三人の少女達がフーダニット、ハウダニット、  ホワイダニットの推理術を用いて事件に立ち向かいます。

 

・フーダニット(Who had done it) =犯人は誰か

・ハウダニット(How done it)=どのように犯行を成し遂げたか

・ホワイダニット(Why done it)=犯行に至った動機は何か

 

3人が揃って初めて真実が明らかになる。

面白い構成だと思います。

 また三人が迷い込む村の設定が凄い。戦時中軍の策略により唯一下界と通じたトンネルを潰され山中には地雷が埋められているため山越えも無理。その時から村人だけで厳しい戒律を守り自給自足で生きてきた鬱墓村。

正直な村人、嘘つきな村人は誰か、というクイズがありますがまさかそれを小説でやるとは‼︎

敬虔なクリスチャンで、また村八分にされたら生きていけない特殊な状況下にある村人達。そのため掟は絶対で彼らは十戒を守らなくてはならない。嘘はつけない。

しかしながら戦時中から閉ざされた村なので現代の私達の常識とは違う所もあったりして。彼らの十戒と、今日子達の知っている十戒は同じ物なのか?と言うのが最初の疑問。もちろんそれは最後に解き明かされるトリックに組み込まれているんですね。ラスト綺麗に着地した時の快感ったら。

 終盤八つ墓村みたいな事になるし迷宮脱出ミッションはあるし。とにかく色んな小ネタが仕込まれていてニヤニヤしながら読みました。

ミステリファンは元ネタを想像しながら、また主人公の少女達が魅力的なので純粋にキャラクター小説としても楽しめる1冊だと思います。

 ちなみにタイトルの「ぐるりよざ」とは、長崎生月島に伝わるキリスト教の聖歌"Gloriosa"が訛った言葉とのこと。タイトルから、このミステリの秘密が明かされているのです、実は。

余剰過剰の奇才古野まほろ

  著者、古野まほろ。私がキャッチコピーをつけるならば「余剰過剰の奇才」。

「背徳のぐるりよざ」のにもその独自性を褒め称える言葉が並んでいます。曰く、

「論理に隙なし。まほろ恐るべし。」(帯表)

「古野まほろに揺るぎなし。天晴れなる同志にエールを。-そこに弾圧のあるかぎり。」(綾辻行人)

「いつか人は言うだろう。まほろの前にまほろなし、まほろのあとにまほろなし ーと。」(宇田川拓也・ときわ書房本店)

 

 もう一つのシリーズ、天帝シリーズには彼の独自性が明白に過剰に溢れています。余剰過剰、脱線が多すぎて読んでいるとあれ、それで誰が死んだんだっけと主筋を見失う。一冊読み終わるのに二段組の翻訳SFと同じくらいの時間が掛かる。

正直に言います、読み難い!(いや、それだけの時間を掛けても読むんですから好きなんだけど)

 だいたい著者自身の略歴からして余剰過剰に満ち溢れている。

東京大学法学部卒。リヨン第三大学法学部第三段階「Droit et Politique de la Sécurité」専攻修士課程修了。フランス内務省より免状「Diplômede Commissaire」授与。

凄すぎて逆になんだか分かりません。2007年にメフィスト賞(いかにもな作風!)を受賞してデビューされた作家さんで、すでに20冊以上の著作があります。

  こちらのセーラー服と黙示録シリーズの良いところは、女子高生をヒロインにした事でそうした著者のアクが弱まり、過剰も大分控えられて読みやすく万人向けになっているところかと。

 天帝シリーズも好きですがちょっと取っつき難い。初めて読む方は是非このシリーズからまほろワールドに入って頂きたいと思います。

アニメ化しても嵌りそうな、少女たちの青春ミステリ。(ちょっとダークな一面もあるので深夜だと思うけど)このシリーズはマニアックな作風の著者の、代表作になっていくのでは…と思ってます。

暑い夏、ミステリで涼むのも良いですよ!という訳で本日のおすすめ本でした~。

 

 

背徳のぐるりよざ  セーラー服と黙示録 (単行本)

背徳のぐるりよざ セーラー服と黙示録 (単行本)

 

 

 

セーラー服と黙示録

セーラー服と黙示録