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あなたもきっと論破される?ーその可能性はすでに考えた

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 今日は井上真偽「その可能性はすでに考えた」の感想をお送りします。

麻耶雄嵩の「これはアンチミステリではない ただの奇跡だ」という帯が目を惹くこのミステリ。

 思いがけない探偵、思いがけないストーリー。
まるで中華料理のターンテーブルに乗ってクルクル回されているような話でした。

 

世の中には真に解けない謎がある?

 

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

 

 

かつて、カルト宗教団体が首を斬り落とす集団自殺を行った。その十数年後、唯一の生き残りの少女は事件の謎を解くために、青髪の探偵・上笠丞と相棒のフーリンのもとを訪れる。彼女の中に眠る、不可思議な記憶。それは、ともに暮らした少年が首を斬り落とされながらも、少女の命を守るため、彼女を抱きかかえ運んだ、というものだった。首なし聖人の伝説を彷彿とさせる、その奇蹟の正体とは…!?探偵は、奇蹟がこの世に存在することを証明するため、すべてのトリックが不成立であることを立証する!!

 

 主人公は碧眼白皙の美青年探偵上笠丞(かみおみじょう)。右目は翡翠、左目はターコイズのオッドアイ、髪を青く染め赤いコートを身にまとう華やかさ。
博識だが常識に欠け、事件解決のためならば湯水のように金を使う男。

ワトソン役はグラマラスな美女ヤオ・フーリン。上笠の借金を全て管理している金貸し屋。美人だが裏切者には拷問も辞さない残酷さも併せ持つ。

 ある日上笠の事務所を訪れた気弱そうな若い女。

彼女は過去に自分が巻き込まれた事件の真実が知りたい、と依頼する。

カルト宗教団体が暮らす閉ざされた「村」。集団自殺の中ただ一人生き残った少女は首を切り落とされた少年が自分を助けてくれた、と言う。彼女の記憶は真実なのか?

「奇跡の存在証明」のために探偵業を続けている上笠は、この事件が「奇跡」であることが証明できるのか?

 

 この本の名探偵の仕事は、謎を解き事件を解決することではありません。
人知の及ぶあらゆる可能性、すべてのトリックを否定すること。『事件が人間の犯行ではない』と証明すること。

なんともひねくれています。
「奇跡」の証明は謎を解くより難しいことです。次々に現れる怪しい探偵たちの推理を全て否定しなければならないーどんなに荒唐無稽なバカトリックでも。

 かくして名探偵上笠丞の、「解けない謎がある」ことを証明する戦いが始まったのです。

 

サクサク読めて湧き上がるトリック!

 文章は読みやすく、華やかで癖のあるキャラクターもコミック調。
作品自体はサクッと読めるライトミステリです。

 しかーし。様々な名探偵が現れて、「その可能性はすでに考えた!」と上笠に却下されていく内に自分もトリックを考えたくなるんですよ。
事件の舞台、状況設定がきっちりと紹介されているので余計、これはこのミステリのあのトリックだろ!とつっこみたくなるなる。

 これは大変良くできたミステリマニアホイホイ。ちなみに私はずーっと双子説を唱えてましたが、多分それも見越しての依頼人、だったんでしょうね…。

 くやしい!まんまと騙されたっ!

 

おまけのミニ推理

 作者井上真偽さんは前作「恋と禁忌の述語論理」(未読)でメフィスト賞を受賞しデビューされたばかりの作家さん。

肩書きには「東京大学卒業、神奈川県出身」としか書かれていません。

しかしヒロインヤオ・フーリンと仕事仲間リーシ―のダーティペアっぽさ、上笠丞の過去が建築探偵桜井京介を彷彿とさせるところ、「中国には三只眼という妖怪が…」なんて台詞は3×3EYES!

作者は30後半~40代と見たっ! 
な~んて、ぜんぜん違ってたりして。

 名探偵は大好きですが、自分の推理力には自信ありません。
ヘタレ探偵今日のみどりの小野でした~。

 

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

 

  

恋と禁忌の述語論理 (講談社ノベルス)

恋と禁忌の述語論理 (講談社ノベルス)