今日は恒川光太郎さんの「スタープレイヤー」、「ヘブンメイカー(スタープレイヤーⅡ)」の感想です。
恒川光太郎さんについて
恒川光太郎さんは「夜市」(日本ホラー小説大賞)でデビューした、ホラー作家さん。
2014年の作品「金色機械」では日本推理作家協会賞を受賞しております。
金色機械は江戸時代にC‐3POが?という不思議な設定のSF時代小説。
戦国の世を舞台に生死について、善悪について深く描かれた物語でした。
民話的、幻想的な作風で、仄暗い雰囲気を持つ作家さんだと思っていたので「スタープレイヤー」の表紙を見て驚きました。
平原を歩く不思議な生き物、ファンタジーな世界観。そしてそびえる不思議な建物!
読み始めてまたビックリ。
招かれた別世界、十の願いを叶えてくれるスターボード。
貴方は新しい世界を旅するスタープレイヤー、新しい冒険の物語!
まるっきりRPG、ファンタジー小説の世界じゃないですか!
スタープレイヤーとは?彼らのルールとは?
不思議なくじ引きに当たって、ヒロイン斎藤夕月が招かれたのは地球とは違う別世界。
夕月が手に入れたのはスターボートと呼ばれる不思議な板。
それからスターボートを使って十の願いを叶える力。
フルムメアという神様のような存在の承認制ではありますが、大抵の願い事が叶う不思議な力を手に入れたスタープレイヤー。
ただし元の世界に帰りたい、という願いだけは制約があり、承認されるのは百日たってから。
別世界には夕月の他にもたくさんのスタープレイヤー、そして現地人たちが。
彼女の新しい冒険が始まります。
☆スタープレイヤーの掟一、スタープレイヤーは、スターボードを使用し<十の願い>という力を与えられる。
一、ただし、元の世界に戻るという願いはスタートより100日後でないと叶えられない。
一、元の世界に戻る、と願ったら、残り願いの数にかかわらず終了する。
一、願いはスターボードで文章の形にする必要がある。
一、文章を送るとフルムメアが審査し、それが通れば、願いを確定させることができる。
一、抽象的だったり観念的だったり物理法則の土台を変えてしまうような願い、また十の制限を取ったり、矛盾をはらんだ願いは却下される。
一、願いを叶えられるのはこの惑星の中だけであり、スターボードの地図に記載されていない場所には何もできない。
こちらが巻末に記されたスタープレイヤーの掟。
彼らはこの制約の中で様々な願いを叶えていきます。
理想の大邸宅、自分だけの王国。
ハーレムを作るのも、透明人間になるのも自由。
現地民の争いごとに巻き込まれたり、自分の国を作ったり、死者を甦らせたり。
さまざまなスタープレイヤー達の壮大な物語です。
十の願いごと。
なんでも叶う力があれば、絶対に幸せになれるじゃん?
でも、本当にそうかな?
私たちの欲望って、生きるって、善悪ってなんだろう?
明るく楽しくファンタジー!の皮を被った人間の欲望の醜さ愚かしさはやはり恒川節。
人種差別、犯罪、倫理とは?人の愛情は操れるものなの?
深く考えさせてくれるエピソードばっかり。
それでいてワクワクする物語。これはぜひ中高生に読んで欲しい!
もちろんいい大人も夢中になれます、私は二冊一気読みでした。
魅力的な場所もたくさん出てきて、私だったら…と妄想が止まらない。
この世の全ての本、映像が収められた図書館もあるんですよ、出られなくなりそうw
物語のラスト、つらい過去を乗り越えてそれでも前へ進んで行こうとするヒロインの背に希望を見て、浜辺に膝を着く青年に絶望を見ました。
一見残酷にも感じる終わり。
でも私には絶望した青年の選択は『間違え続けてばかり』じゃなかった、と思えたのです。
全てを無くしても、物語はまた始まると思うから。
ワクワクするような物語のラストはちょっぴりほろ苦く、けれど期待に満ちていて。
ウエルカム・ザ・ヘブン!
これは天国を作ろうとした人達の物語。
あなただったら、神様に何を願いますか?