おのにち

おのにちはいつかみたにっち

さようなら、風の谷のエロ田

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春は出会いと別れの季節です。

私の隣の席に座っていた彼も、異動で去って行きました。
 
アダ名はエロ田さん。
諸事情あって、田は偽名ですがエロ、は課内通用語でした。
 
30代細身の既婚メガネ男子、なかなかオシャレだし知的な雰囲気。
 
しかしエロ。
今日はちょっと変わったそんな彼のお話です。
 

エロ田との遭遇

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最初に「あだ名はエロ田です」と自分から名乗ったときから「なんだコイツ」と他の人とは違うモノを感じてました。
 
落ち着いていて、真面目で仕事熱心。
机周りの書類がトーテムポール化しているところが気になりましたが、課でのキャリアは一番長く、何を聞いても答えてくれる頼れる男に見えました。
 
なぜエロなのか、は最初の歓迎会で判明しました。
2次会で風のように姿を消したエロ田さん。
「あいつは風イ谷だから、気にしないで」と言う課長。
そうです、エロ田さんは風の谷の住人だったのです。
 
エロ田さんは、独身の頃はごく普通の(本人談)週末風の谷住人だったそうです。
しかし、結婚した頃から風の谷への弾圧が始まりました。
 
週末はクシャナ奥様の監視の目があり腐海に遊びに行けなくなってしまったナウシカエロ田。
そんなエロ田が唯一羽を伸ばし金色の野で無邪気に駆け回れる時間。
それが「仕事のつきあいの場」だったのです。
 
「会社の飲み会だから」「会社の旅行だから」「出張だから」
そんな言い訳で奥さんを騙しているのでしょう。
確かにエロ田さんは飲み会の乾杯の時には存在するのです。
しかし酷い時には一次会の途中で消えます。
怒られそうなものですが、真面目で大人しい佇まい、そしてそんな人が堂々と「すいません、風イ谷なので抜けます」と言うカナシミ。
「お、おう…」としか言えないじゃありませんか。
 
エロ田さんへの風イ谷愛に課内のみんなはいつも助けられていました。
たとえば面倒な研修や出張。

会議や研修の数合わせのためだけの出張はみんな敬遠していましたが、どんなに過酷なスケジュールであろうと「泊まり」の言葉を聞くと手を上げるエロ田さんを、私達は尊敬していました。
 
職場のパソコンに、出張で泊まるホテル付近の風イ谷を楽しそうにブックマークしている様子も、どこか微笑ましく見えたものです。
 
ただ、課長が急に「悪いけど予算の都合で日帰りで!」と言ったときに悲しげにプリントアウトしたお店情報をシュレッダーするのは辞めて欲しかったです。
シュレッダーだけでは悲しみが癒されないのか、課内中の鉛筆を延々と削るのも辞めて欲しかったです。
ガガガガ…という鉛筆削り器の音が物悲しく聞こえるようになってしまったのはエロ田さんのせいです。
 

エロ田と課内旅行

 
そんなエロ田さんがイキイキと輝きだすのは年に一度の課内旅行の準備期間でした。
私は憧れの軍艦島にワクワクしていましたがエロ田は佐世保のお店にワクワクしていました。
世界遺産に選ばれた軍艦島、ツアーを予約するのはとても大変だったというのに「すいません不参加で一日中佐世保にいてもいいですか」とのたまうエロ田。
 
一瞬殺意が芽生えましたが私が軍艦島に憧れていたように、エロ田は佐世保に憧れていたのでしょう。分厚い佐世保お店情報ファイルが饒舌に物語っています。
 
幹事だった私は快く一人分キャンセルしました。
エロ田が上陸したり「あーあ風イ谷行きたかった」とか言われると私の軍艦島が汚される気がしたので、内心てめえは来んな!と思っていたのは内緒です。
 
しかし大変残念なことにエロ田さんは課内旅行欠席でした。
 
いつもは元気な奥様が、旅行前に謎の体調不良に襲われ、臥せってしまったのです。
 
長崎空港で「妻が急に元気になりました(泣)」というLINEを見てみんな「あっ(察し)」となりました。
 
エロ田ご夫妻は戻ってきた旅費で東京ディズニーランドに行ったそうです。
 

ありがとうエロ田

 
そんなエロ田さんとも、もうすぐ会えなくなる。
私は少し寂しくなりました。
風イ谷住人とはいえ、仕事面では大変役に立つ方でした。
 
エロ田さんは大変仕事熱心で非常に細かく、1聞くと10帰って来るので話が長いのです。
おかげで、「エロ田に聞くくらいならマニュアルを読もう」となり、結果的に早く仕事が覚えられました。
 
また、エロ田さんは回覧する書類を貯め込む癖があり、エロ田書類マウンテン(山だ谷だの風光明媚な男だ)に大事な書類が飲み込まれると困るので、気をつけている内に自分の書類の所在が何となく分かる第六感が身に付きました。
 
そろそろ期限だな…と思うとだいたいマウンテンの中腹にありました。
納期を意識する六感を与えてくれてありがとう(ていうか早くまわせ)。
なんだかんだ言いたい事はありますが、話しやすく腰の低い態度に私が助けられていたことは確かです。
最後に、「エロ田さん(のもたらしてくれるネタ)のおかげで早くこの課に馴染めました、色々教えてくれてありがとうございました」と頭を下げました。
 
エロ田はとても照れていました。
「いやー、こちらこそご迷惑をお掛けして…」
もじもじするエロ田の両手はなぜか胸元へ。
そのまま、両手で乳首の辺りを激しくシャカシャカこすり出すエロ田。
 
どうやら照れると乳首がむずがゆくなるようです。
その激しい擦りっぷりに、「どんだけ開発されてんだよ…」とドン引きしました。
 

新しい季節、新しい出会い

 

そんなエロ田も新しい職場へ旅立ちました。
書類マウンテンがようやく片付いて、視界も気持ちもクリアになりました。
いつものように、机の下の棚に自分のバックをしまおうとして、私は違和感に気がつきました。
 
私の机に下に仕舞われているのは、エロ田の大切な「風イ谷情報ファイル」…!
付箋がついていました。
 
「新しい課でカミングアウトできるまで預かっておいて下さい」
ふざけんなエロ田!
 
エロ田が早く飲み会を抜け出して風イ谷に旅立てる日が来るように、蔭ながらお祈りしています。早く持ってけこのファイル。
 
って、2階にいるんだけどね。
東京単身赴任希望中なのに、素行が悪くて認めて貰えないエロ田さん…。
いろいろ頑張れ。
 
春は素敵な季節だなぁ、ってお話でした(多分)。