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おのにち

おのにちはいつかみたにっち

旅立つ子がくれたもの

生活 生活-家族

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カロリーメイトのCMが素敵だ。
レミオロメンの3月9日が流れる中、受験生の一年間の背中を母が見守る物語。

瞳を閉じればあなたがまぶたの裏にいることで

誰かの存在で、人は強くなれたり、頑張れたりする生き物で。
今日は私の支えだった小さな手の、旅立ちのお話。

 

春は卒業の季節。
私の甥っ子も、進路が決まり4月からは違う町に旅立つ。

私は20代で結婚して、いわゆる『嫁』になった。
夫の家は大家族で、親戚同士も仲が良く、盆や正月だけでなく、誕生日やささやかなお祝い事も親族全員で集まってやるような、にぎやかな家庭だった。

月に一度はなにかしらのイベントがあり、皆で集まる。
ちょこちょこ、実家に呼ばれる。

夫が仕事で出られない時は、私一人で出向くしかない。
夫の家族はみな穏やかな人たちで、色々気遣ってくれたのだが、最初はとにかく居場所が無くて帰りたいと思うだけだった。

私の実家は親戚が少ない。人を招いたりするのも嫌いな親だった。
家族旅行すら数えるほどしか行ったことがない。
正月は祖父母と会うくらいで、漫画を読んで引きこもって過ごすのが我が家のスタイル。

そんな個人主義の家庭で育った私は、人見知りで一人の時間が必要なタイプだった。

ところが旦那の家庭はテレビで見るような大家族。
義父は7人兄弟、義母は4人姉妹。
親族が勢揃いするとダンナですら『アレは誰だっけ?』と首をひねるような人数、賑やかさだった。

馴染めない、違和感ばかり。
最初の頃は本当に胃が痛くなるような日々だった。

 

そんな違和感を救ってくれたのが、小さな甥っ子。

賑やかな家の中で、何をしていいか分からない私に甥っ子は散歩に連れてって、と無邪気にせがんできた。

その内私の仕事は甥っ子の遊び相手になった。
何をしていいか分からない、何を話せばいいかも分からない、あの頃の心元なさを救ってくれたのが甘えん坊で明るい彼だった。

彼を通して周りの家族との会話も増えた。
その内彼の弟が生まれ、私にも子供が生まれ、従弟たちにも子どもが生まれ…。

 

気がつけば旦那の実家は男の子ばかり10人も集まる、恐るべき子ども屋敷になっていた。

その頃には私も義実家に慣れ、違和感なく過ごせるように。

私の手を引っ張って輪の中に入れてくれた甥っ子は、10人の男子のリーダーとして喧嘩を仲裁し、年下の面倒を見、仲良く遊ばせる頼もしいお兄ちゃんとなっていた。

 

私の子どもたちもそんなお兄ちゃんが大好きだ。
スポーツを頑張っていて、国体にも行った。
優しいけれど時に厳しい、審判役のお兄ちゃん。

なにより小さかった彼がそうやって大人になり、しっかり育って行くことがどれだけ私の励みになっただろう。

 

今考えたら昔の私の悩みは義理実家に馴染めない、というよくあるトラブルだ。
距離を置いて、付き合わない手もあっただろう。

でも私は、あの時甥っ子が私の手を引いてくれて本当に良かったと思っている。

たくさんの家族の中で、わいわい過ごす賑やかさや暖かさ。
それが本当に贅沢なことで、大切な経験なんだ、と思えるようになってきた。

 

私自身大家族の中で過ごすうちに人見知りしなくなったし、世間話のスキルも上がった。気配りも自然と出来るようになった。
それが出産後の転職やママ友付き合いの中でどれだけ役に立ったことか。

子ども達も従弟が山ほどいる中で遊んだせいか、人見知りしらずだ。
どこに行っても自分から声を掛けて、すぐに新しい友達を作る。

そんな風に輪の中に自然と入っていける力は、私一人では与えられなかったと思う。

義実家が開いてくれた沢山の誕生会やクマ鍋パーティ、焼肉祭りのおかげで私も子どもも逞しくなれた。

終わらない洗い物、落ちない熊脂…戦いは何度もあった。
義姉と終わらない酒盛りに水を混ぜるかと愚痴った日もあった。

それでも結婚して良かった、家族が増えて本当に良かった。
そんな風に家族をまとめて、ちびっ子たちを引っ張って行ってくれたのは、お兄ちゃん、あなたの優しさです。

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これから彼の新しい人生が始まる。
春からは一人暮らし。

同じく息子が都会に旅立つ人が言っていた。
福島だから、っていう人本当にいるのかなぁ。
結婚したくないとか、言われたらどうしよう。

いじめられた福島の子のニュースを思い出して、きゅっと心が冷たくなった。

でもきっと大丈夫。私は世界を信じたい。
あのニュースを見て、憤ってくれた人は沢山いる。

旅立つ子の全てを守ってあげることは出来ないけれど、願っている。

福島の子に、すべての田舎の子に、旅立つ都会の子どもにも。
世の中の理不尽や偏見に泣かされることがないように、と。
あなた自身を真っすぐに、評価してくれる大人に出会えますように、と。

 

朝はカーテン開けるんだよ。
夜更かしは程々にね。野菜もちゃんと食べるんだよ。
体を大事にしてね。
自分を大事にしてね。

あなたは誰かの大切な人。
あなたをまぶたの裏に思う人が、きっと何処かで待っているから。

これから一人暮らしを始める子どもたちも、長年一人暮らしの大人の人も。

 

大事にしてね、あなたのことを。
忘れないでね、一人じゃないってこと。