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おのにち

おのにちはいつかみたにっち

おすすめイヤミス、気持ちの悪い物語まとめ。

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現在SNS断捨離中の某カンドー嬢からコメントでリクエストを頂いた。
グロい小説、気持ちの悪い話を教えてくれ、というもの。
これが結構難しい。

彼女が爽快にはらわたの飛び散るイヤミスを求めているのか、それとも私が生理的に気持ち悪い、と感じる話を読みたいのか。
それによって話が違ってくるからである。

イヤミス、と聞くとよく名前が上がる名作ミステリの数々。
「ハサミ男」や「殺人鬼」、「殺戮にいたる病」などいわゆるグロい系が多い。
これらの作品は確かにどれも血なまぐさい、怖い、後味も悪い。

ただこうした作品群は、ホラーに耐性のあるフレンズ、アンチヒーローが大好きなフレンズが読むとまた違った意味を持って立ち上がってくるのである。

ザ・爽快感。グロいって、たーのしー!
ハサミ男など、確かに後味が悪いのだけど実は私は笑ってしまった。
うまくやりやがったなコイツぅ!と言う感じで。

被害者側に肩入れするか、犯人側に肩入れするか。
物語を読む視点で、作品の後味は変わってくる。

『貞子VS伽椰子』『フレディVSジェイソン』なんて映画のタイトルを見てもわかるように、最恐の敵もシリーズ化して見慣れてくるうちにかわいらしく思えたり応援したくなったりしないだろうか?

ミステリーを読む上で、もちろんホームズには綺麗に謎を解いてほしいし、活躍してほしい。でも更に見事にモリアーティ教授が逃げおおせると、私はニヤッとしてしまうのだ。

 

サクッと読める爽快イヤミス

 

あなたがもしコカコーラのように、さくっと読めて後に残らない、爽快ライトなイヤミスを求めているのなら、『殺戮病院』『ギロチンアイランド』をお勧めしたい。

「殺戮病院」は感染すると凶暴化する古代ウィルス、閉ざされた病院、戦うナースや警官とバイオハザードを彷彿とさせる内容。
血と臓物がテンコ盛り。殺人ピエロがわらわたを振り回しながら迫ってくる、殺戮カーニバルである。 

殺戮病院 (マグノリアブックス)

殺戮病院 (マグノリアブックス)

  • 作者: ブレイク・クラウチ,ジャック・キルボーン,ジェフ・ストランド,F・ポール・ウィルスン,Blake Crouch,Jack Kilborn,Jeff Strand,F. Paul Wilson,荻窪やよい
  • 出版社/メーカー: オークラ出版
  • 発売日: 2016/04/25
  • メディア: 文庫
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
 

 

「ギロチンアイランド」は、お金持ちが税金対策用に購入した地中海のリゾート島が舞台。別荘の管理人という美味しいバイトに潜り込んだはずのヒロイン、マーラ。
理想の島で、午前中は簡単なお仕事、後は仲間とパーティパーティの極楽生活のはずが、島の恐ろしい一面が見えてきて…という孤島サスペンス・ホラー。

問題点はただ一つ。この島にギロチンは無い。邦題どうした…⁉

 

断頭島 (ギロチンアイランド) (竹書房文庫)

断頭島 (ギロチンアイランド) (竹書房文庫)

 

 

どちらもB級映画っぽい作品。
1、2時間で読めるボリューム、映像的で、美味しいところをちゃんと掴むストーリー展開が魅力。

知らない作家さんの、どう転ぶのか分からない物語を手探りで読むのも面白いけれど、旅に連れて行くのならこういう枠組みのしっかりした、定石の面白さが詰まった作品が良い。

期待通りにワクワクさせてくれて、読み終わったら宿の書架に置いて帰れる。
後を引かない、ファーストフードのようなボリュームと手軽さ。
ライト・イヤミスの名で呼びたい作品である。

 

さて今紹介した2作品が洋のイヤミスならば、和の定石、三津田信三さんの《刀城言耶》シリーズもおすすめ。

奇譚を収集する主人公、変わった風習のある村、美しい家人、世継ぎをめぐる争い…そしてきれいに解けたかのように見える謎が、ほんの少しの後味の悪さと共に消えていく。まさに横溝正史の世界観である。

  

首無の如き祟るもの (講談社文庫)

首無の如き祟るもの (講談社文庫)

 

 

 こちらのシリーズは大好きで、多分全部読んでいる。
多分と言うのは表紙、タイトル、話の展開が似すぎていて区別がつかなくなってきたのである。

区別がつかないものを読む意味は?と聞かれそうだが「孤独のグルメ全シリーズ」と答えたい。
たとえワンパターンの展開でも、その世界が大好きならば、浸れる幸せと言うものが存在する。

読んでいる間は夢中でその世界に浸りこみ、怖さに震え、本を閉じれば現実に帰れる。
私の中でグロい=怖い、血生臭い物語と言うのはどこか予定調和で、爽快な作品が多いのである。

 

予定調和を外れた物語の『気持ち悪さ』

 

ところが気持ち悪い小説、となるとまた話が変わってくる。
私が小説に感じる、「気持ち悪さ」は肌感覚の問題だ。

なんだか収まりが悪くて、読んでいる間何処に身を置いたらいいのか分からなくて、脳みその裏側をざらざらとヤスリで削られているような感覚。
そんな物語を私は「気持ち悪い」と呼ぶ。

例えば竹本健治の「クレシェンド」。
あるいは恩田陸の「ネクロポリス」。

クレシェンドは昔軍の施設だった、職場の地下2階の謎を解くミステリからアマノウズメの神話へと物語が転換する。

 

クレシェンド

クレシェンド

 

 

ネクロポリスは英国と日本の文化が奇妙な融合を見せている島を舞台に、一年に一度、生者と死者が再会することができる「ヒガン」と呼ばれる祭りを描いている。
ヒガンの最中、話題の殺人鬼「血塗れジャック」に殺された被害者から証言を聞こうと意気込む生者たちの前に、次々と事件が起こる、ファンタジックなミステリー。

…ミステリーだったのだが、なぜかふわっと旅行記のように終わる。

 

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

 

 

ネジが上手く組み合わさっていない。ギブとハブが、と言いたくなる。
ただこれが作者の失敗なのか、思惑なのか、それとも物語自体がこうなろうとしたのか、そこの所がよく分からない。

物語の力が強すぎて、繋がらないものを混沌のまま纏め上げるから私には分からないのだ。この物語が失敗したのか、それとも収まるべきところに収まったのか。

特に竹本健治氏はミステリ―作家としてデビューしたのち、狂気や神秘の物語に傾向していくので、「クレシェンド」をミステリとして読み始めてしまった私の視点が最初から間違っていたのだ、と思う。でもこれミステリとして読みたかったよ…!

継ぎ合わされたパイプが噛み合っていなくても、水が流れるなら物語を生きているのかもしれない。

こうした小説はざらざらして、異質で、いつまでも心に残る。

 

恩田陸さんの小説は、時折結末が定まっていないような印象を受ける。
物語の導入部にはルートA、ルートB、いくつかの道筋があってそこから自然と分岐していくような。あくまでも私のイメージだから、実はきっちりと練り上げて書いているのかも知れないが。

私は多分描かれなかった、ルートBの物語が読みたかったのだ。
だから物語にざらざらした違和感を感じる。

物語の途中で置き去りにされた私のかけらは今も、地下2階で謎を探している気がする。

こういう本は旅先に置いてこない。ただし本棚の目立つ場所にも並べない。
そっと物陰に隠しておいて、体調の良い時にこっそりと開く。
そして「うわーやっぱり気持ち悪い!」と本を閉じる。

わからないし、気持ち悪いのだが私は結局これらの物語が好きなんだろう。


そういえば私は、どんなホラー映画より「ピクニック・アット・ハンギングロック」が一番気持ち悪い。

ピクニックに出かけた4人の女学生が居なくなる。
一人だけが帰って来るが、彼女の話は要領を得ず、何が起きたのかは結局よくわからない。

映画の中で、世界はただただ暑い。
めまいがするほど暑くて、少女たちは帰ってこない。
そこに答えなんてない。

この映画は実話を基に描かれているーと思っていたのだが、実は創作なのかも知れない、という疑惑があるらしい。

 

ピクニック・アット・ハンギングロック [DVD]

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物語が予定調和を乗り越えて「作者にもわからないかもしれない混沌としたもの」に取り付かれたような作品。

それは現実によく似ていて、そんな「よくわからない話」が私にとっての気持ち悪い、なのだと思います。そして私は、この鳥肌が立つような気持ち悪さが実は好きです。


昆虫を食し、綾辻行人の『殺人鬼』をこよなく愛するカンドー嬢がグロい、気持ち悪いと感じる物語ベスト3はいったい何なのでしょうか?
私はそっちの方が気になります。

そして「深夜に鳴る電話」「偽ブログ」「学校からの呼び出し」「2ちゃんにスレが立つ」。このように、人生には怖いことがたくさん。

そうした背筋が凍るような現実の心地悪さ、恐怖にフィクションは勝てるのでしょうか?

実は私は饅頭よりも小説よりも、現実が1番怖いです…。

カンド―嬢が真の怖さを求めているのならば、それは現実に、SNS上にあるのかもよ?とさりげなく誘って今日はおしまーい。

 

PS:ごめん…今日バレンタインデーだったね。よりにもよってのタイトル。
でもチョコと血はよく似ているので君にプレゼントだお♡ってことで一つよろしく…!