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おのにち

おのにちはいつかみたにっち

羽田圭介「成功者K」-私の視点はどこにある?

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羽田圭介さんの「成功者K」読了。
妙な緊迫感があって面白かった。一気読み。

芥川賞を取って、TVに引っ張りだこになって、女性にも不自由しなくなった成功者Kの物語。それは著者の通ってきた道筋によく似ているのだけれど、でも…。

どこまでが本当でどこまでが虚飾?それとも本当なんて一つもないの?
現実と虚構の合間を行き来するようなメタ・フィクションでした。

 

成功者K

 

 

私は羽田圭介さんのことを「王様のブランチ」やバラエティ番組で何度か見たことがある。真顔で、謎のぶっちゃけキャラの面白い人だと思っていたのだけれど。

本を読んだ後だと、TVで見せていた顔が本当なのか、フェイクなのか分からなくなる。
番組内でナンパしていたり、情熱大陸に出ていたことすら上手く物語に取り込んでいる。

上手く取り込んだのか?それとも正直に現実を描いただけなのか?
その境目が曖昧なところが面白い。

羽田さんの出演した「情熱大陸」が、作品に取り上げられていたので読後視聴してみた。

この本は小説を読むだけじゃ完成しない。
読後、もしくは読む前に情熱大陸だけでもチェックした方がいいと思う。

映像が、本とリアルを繋げるようでめっちゃ面白い。
特に冒頭のサイン会に並ぶ若い女性や出待ちの様子にニヤニヤしてしまう。

プレゼントをスタッフの前で開けるシーンなども、作中でファンの連絡先が記載されていないか、とこっそり袋を覗いていた「成功者K」が浮かぶ。
自分が一時期出まくっていたTV番組を上手く利用していると思う。

TVに出ている有名人の本当の生活、内心を小説で知る。
のぞき見の密やかな楽しさを満たすようでありながら、それすらも虚飾?という不思議な物語。

この小説のためにTV取材をたくさん受けたんだろうか。
それともTVの中で作られていく自分を感じたから、この入れ子のような話が書けた?

たくさんTVに出たり、インタビューを受けたりしているからこそ仕込める小ネタが一杯。残念ながら羽田さんの熱心なファンではない私には現実と小説の境目が上手く見極めきれなかった。

この本は「情熱大陸」に出ていた羽田圭介の本は一冊も読んだことがないけれどファンです、と悪びれずに言っていた女性のような人ほど愉しめるのではないだろうか?
それとも彼女は性的な目線で見られた!と嫌悪するのだろうか。

無邪気に『本は読んだことないけど』とか『純粋な人だと思う』とインタビューに答えていたファンにこそ読んで欲しい一冊だと思う。

 

 物語の中の「成功者K」は毎日忙しくTVに出て、その合間にファンと遊びまくり、女優と付き合い、高級マンションを手に入れる。

顔が売れてしまったので、帽子とマスクが手放せない成功者K。

トンネルの間に入り口があるロックミュージシャン(デーモン閣下?)宅でのパーティに女優の彼女を連れて出席した後、タクシーを待っているとトンネルの切れ間を帽子、マスク着用の自分によく似た男が現れ、消えていく。

今頃車にひかれているのではないか、とKは不思議に思う。
そんな風に、小説の合間にはもう一人のK(作者自身?)が挟み込まれる。

段落が空くごとに、綴られるKの生活は少しづつ移り変わっていくような気がする。
それはKの話なのか、著者本人なのか、それともまた別の誰かなのか。

 

そもそもこの本にも、TVの中にも、ノンフィクションにすら全ての現実なんて書かれていないのかも。私たちの書くブログもそうなのかもよ?


本当にあったことだけを、日々感じたことをすべて正直に書いたなら、混沌に満ち満ちた狂人小説みたいになりそうなのは私だけ?

上手く言えないんだけど、自分の頭の中は誰かに見せる必要がないから定まった視点も説明もなくて、モノを書くときにはじめて視点を固定して、注釈を入れていく…んだと思うんだよな。

つまり、書いたり人に語ることによって脳内妄想や経験は物語になっていく。

「成功者K」は上手く『物語』と『物語になりかけの現実』の狭間を描いている、と思いました。

 

後はやたら〇ックス描写が細かくて、テクニックやら肌感覚が丁寧に描かれているので、小説めんどくせーって人も是非是非。前半主人公はやたら勃起していますw

ではでは、今日は羽田圭介「成功者K」の感想でした!

 

 

成功者K

成功者K