おのにち

おのにちはいつかみたにっち

便乗牛乳石鹸CM・ショートストーリーズ

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牛乳石鹸CMがこの夏、盛り上がってますね。

最初はケーキ腐るーー!とかプレゼント当日でいいの⁉と戸惑ってた私ですが、皆様の色んな意見を読むうちに一周回って面白くなってきました。

 そんな訳で今日は三者三様、家族の目線に寄り添う「私の考えた牛乳石鹸ショートストーリズ」です。

 

父・浩文編

 

「電話、大丈夫ですか?」

部下に心配されて、浩文はつい携帯を気にしてしまう自分に気が付いた。

何やってんだろ、俺。

落ち込む部下を励まそうと飲みに誘ったものの、逆に気遣われる始末。

「じゃあ、今日は本当にありがとうございました」

大荷物を抱え、電話を気にする俺を心配して、部下は早く帰ろう、と言ってくれた。

部下には心配され、頼まれたケーキはぬるくなっていて。
どっちも中途半端。ホントに何やってんのかなぁ、俺。
あの頃憧れたおやじの背中が、遠くに見えた。

家に帰ると少しふくれた妻が「お風呂、入ってきたら」とボソッと言った。

明日はちょっとでも、前に進めますように。

さあ、洗い流そ。

 

妻・浩子編

 

夫に掛けた電話は留守番モードに切り替わってしまった。
溜息を押し隠し、浩子は明るい声で子どもたちに向き直る。

「パパ、仕事で遅くなるみたい。先にお風呂に入っちゃおっか!」

父親の帰ってこない誕生日。
ケーキも無く、プレゼントも届かない。
内心落ち込んでいるはずなのに、大人しく母に従う息子がいじらしく、悲しかった。

親子なのに、なぜかいつも距離を感じる父と息子。
息子に父を慕ってもらおうと、プレゼントとケーキを頼んでみたけれど、少し性急すぎたのかも知れない。

もしかして…気がついている…?

白い泡に包まれた、息子の目元は父にも母にも似ていない。

6年前、たった一夜。
昔付き合った男とのあやまちが頭をよぎる。

…洗い流さなくちゃ。

軽く頭を振って、罪の意識を覆い隠し、浩子はまた明るい声を上げる。

「さっ!洗いながそー!」

 

息子・ヒカル編

 

5歳の誕生日はサイアクだった。
帰ってこない父親、動揺を隠して作り笑いする母親。

眠る間際に届いたのは、グズグズに溶けたケーキとサイズの合わないグローブ、それから酔っぱらったオヤジの姿。

それからずっと、仕事にも家庭にも煮え切らない父親と、そんな父にはっきり言えない母親に、鬱屈ばかりを抱えて育った。

会社人間を嫌い、親子の絆にも背を向けて。
気が付けば俺は、自分の思うがままに生きる人気YouTuberになっていた。

VALU全売却の影響で、通知の止まらないスマホを放り投げ、バスルームに向かう。

あの頃も今も、牛乳石鹸は俺の傍らにある。

「さあ、洗いながそ」

イヤなことがあった時口をつくこの言葉が、かつての父の、母の口癖であった事を、ヒカルはまだ知らない。

 

殺人ピエロ編

 

「ブンブン♪ハローYouTube!生中継を始めるよ!ここはなんと、人気YouTuberヒカルくんのお部屋!
すっごい高級マンション、稼いでるよねー。今日はVALU問題で炎上中のヒカル君ご本人に、これからどう責任を取るのか、直接聞いちゃいたいと思いまーす」

 

ヒカルの家を知ったのは、小さな偶然からだった。
町でたまたま会った、昔の恋人。
久しぶり、なんて向こうから話しかけてきた。

落ち着いた、裕福そうな中年主婦。
今の俺は50代無職、ピエロ姿でつまらない愚痴を垂れ流す売れないYouTuberだ。

「そういえば、息子が今YouTuberをしていてね、ヒカルと言うんだけど…」
彼女はなぜあんな話を始めたんだろう。
目元が、とか、一度会ってやって、とか色々話していたが、一つも頭に入らなかった。
俺の心を占めていたのは、不当に大金をせしめている、若い男への憎悪だけだ。

いつか俺の動画についた、コメントが脳裏をよぎる。

 

つまらないオッサン。
なんでピエロ?ピエロの恰好するなら、殺人くらいしろよ。
殺人ピエロwウケるw

 

「おや?ヒカル君はシャワー中のようでーす。また女子高生にキャーキャー言われちゃうね?構わず突入したいと思います!」

驚くヒカルに、ピエロ男は構わずインタビューを始める。

「VALUなんで売却しちゃったんですか?これからどうするつもり?」

ヒカルは答えない、答えられない。
マイクに見立てて男が握るナイフが、腹に突き立てられているからだ。

ひゅっ、と苦しそうな息を吐き、うずくまるヒカルに、男は容赦ない言葉を浴びせる。

「あーあ、もう責任取ってくださいよー。ほら、みんなの恨み!はあちゅうの恨み!」
恨み!という言葉と共に、背中に何度もナイフを突き立てていく。

血と脂で浴室は染まり、やがてヒカルは動かなくなった。

「あれ?配信止められてる?ヒカル君が全裸だったからかな?…まぁいいか」
男は構わず、シャワーを浴び始めた。
全身についた血や脂を、牛乳石鹸は驚くほどよく落としてくれる。

本当は、男もこの話の作者も、VALUのことなんかこれっぽっちも分かっちゃいなかった。
ただ誰かが誰かを叩く、その音に浅ましく便乗しただけだ。加速するブルースに、正論という電車に飛び乗って、思うがままに鉄槌を振るう。
それはなんて一方的で、心地のいい暴力なんだろう。

今日から俺は、殺人ピエロだ。
目的を成し遂げた、という達成感と白い泡が、男の背中を輝かせていた。

「牛乳石鹸よい石鹸♪」
小さなハミングが、浴室に響く。

 

 

いかがでしたか?

とりあえずあなたもさっ、洗いながそー!

  

カウブランド石鹸 青箱バスサイズ135g*6個

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