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おのにちはいつかみたにっち

私のビンタ望楼

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先日のビンタ事件について考えているときに、そもそもビンタされたことが無いからよく分からないのかも?などと思ってしまった。

ところが、よくよく思い返してみたら私にもあった。
ペチッ、くらいだったけどビンタされた記憶が。

 

しかしビンタの理由がよく分からない。
怒っている訳ではないけれど、未だに理不尽というか、完全には納得出来ていない部分がある。

世の中は広いので、この記事を読んだ誰かさんなら、私を叩いた彼女の気持ちがよく分かる、という人がいるのかも知れない。

そんな方がいらっしゃったなら、是非ご意見お待ちしています。

 

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さて、時は中学生の頃に遡る。
中3の私と、彼女と、もう一人の女友達。
放課後の教室で女3人、きゃっきゃうふふと話していた。

3人とも大人しく、穏やかな性格。
本の話をすることが多かったと思う。

私ともう一人が好きな漫画について語りあっているとき、彼女は黒板に小さく、私の名前を書いた。

軽いイタズラ、的な感じで彼女は笑っていた。
コイツぅ、みたいな感じで私も隣に彼女の名前を書いた。

ここまではとってもスイートな、百合姫的記憶。


ところが私が彼女の名前を書くと彼女の態度が急変した。

パシン!と私の頬を叩き(音はしたけど痛くはなかった)、涙を浮かべ走り去ってしまったのである。

翻るスカート、彼女の涙、茫然と頬を抑える私。
なんだこの百合マンガ。
ピシャン、と閉じられた教室の扉の前で、私ともう一人の友人は呆然としていた。

 

彼女はいつも物静かで優しい、穏やかな女の子である。
人を叩いたり、感情的になる所など初めて見た。

となれば自分の側に原因があるのでは…と思うのだが、もう一人の友達に聞いてみてもさっぱり思いつかない。

黒板がキ~って鳴ったから?名前を書かれるのが嫌い?
イヤイヤそれなら自分も書かないよね?

隣に書かれたのが嫌だった?
…その理由なら私が一生立ち直れないんですけど!?

色々討論したがチンプンカンプンである。
携帯のない時代だからとにかくまた明日、よく分からないけど謝って仲直りしよう、と家路についた。

 

翌朝、まっさきに謝ってきたのは彼女の方だった。

昨日はごめんね、黒板に名前を書かれたらなぜかすごく嫌な感じがしてつい手が出てしまって。叩いたことに驚いて、涙が出て逃げてしまったの。

…昔の話だから記憶補正が入って分かりやすくなっていますが、本当はもっと不明瞭な感じの話でした。

なぜか嫌な予感がして、とか、第六感的な何かがあって、止めなくては!ととっさに手が出て、叩いた自分にショックを受けて泣きながら逃げてしまった、と。

 

なんかやっぱり、今でも納得いきません。
そんなに嫌なら、なぜ私の名前を黒板に書いた?
書いたら書かれる、って思いつくよねフツー?

 

でも理論なんて関係なく、彼女は叩いて泣いて走り去った。
事実がそこにあるのだから、仕方のない話なのでしょう。

今思い返せば、地味で大人しい私が教室で女の子を泣かせ、ビンタされる、などというドラマチックな思い出を作れたことに感謝しかありません。

ビンタに感謝?我ながらなんだそれ。
でも人生にエピソードが増えるってなんか嬉しいよね?

 

 

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タイトルにある望楼とは、遠くを見るための高い構築物のことです。

私はそれまで、人と人の諍いは高い所から全てを見渡せば、物事の全容さえ分かれば解決できるような気がしていました。

でもそうじゃないんだよね。
たとえ同じ言葉を受け取っても、その言葉がどう体内を通り過ぎて、アウトプットされるのかは人によって違う。

同じ中学生の女の子に見えても、私たちの心の中の配線は、まるで逆なのかも知れないのです。だから普通とか常識とか、あまり意味がないのかも?

それでも少しでも理解出来たら距離も近くなるような気がして、だから私は誰かの心理を知りたい、理解したいと思ってしまうのですけれど。

 

意味は分からないんだけど、ビンタの彼女とは今も友達です。

今も綺麗で優しい、穏やかな人。
だけど時折、メロドラマみたいな衝撃的な行動を取ります。

彼女の行動理由は結局一つも理解できないんだけど、そんな理解できないところが好きです。

 

望楼館追想 (文春文庫)

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