おのにち

おのにちはいつかみたにっち

読書という病

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時折、本に取り憑かれてるんじゃないかと思うことがある。

お風呂上がりに下着を着て、髪を拭きながら、パジャマを着ると汗をかきそうだから少しだけ本を読もう…なんて傍にある一冊を開く。

気がつくと下着姿のまま、濡れ髪で本を一冊読み終えている。
変な姿勢で、体は冷えてカチカチである。

風呂場に雑誌や文庫本を持ち込むと、あっという間に1時間が過ぎお風呂のお湯が水になっている。

本を読みだすと周りが見えなくなってしまう、というのが私の悪い癖だ。
子どもの頃はこれが原因で遅刻をしたり、門限を破ったりしていた。

本に没頭しているときは人の声も聞こえなくなるので、返事も出来ない。
親や友達からはよく怒られた。

子どもが産まれてからは流石に危険が危ないので物音には気づけるようになったが。

 

本を読むのはすごく良いことで、子どもにも推奨しなくてはいけない、という世論がある。本当にそうだろうか?実は私は懐疑的である。

いくら読書が勉強になる、と言っても物には限度というものがある。

私は体を動かすくらいなら本を読みたい子どもだったし、無論勉強をするくらいなら本を読みたかった。親にも読書はいいことだ、という思い込みがあったため、外に出なくても勉強をしなくても、本さえ読んでいれば咎められることはなかった。そんな環境が私を増長させていった。

中学~結婚するまでの間は、お小遣いや給料、バイト代のほとんどは本に消えていった。

さすがに20代の頃にはこの本代を化粧品や洋服代に当てないと未来がヤバいのでは…と悩んだがなんとか生き延びた。

今はさすがにお小遣いの全てを本代には注ぎ込めないが、インターネットやkindle読み放題のおかげで助かっている。
マイカーのおかげで図書館にも行きやすくなったし、県内の図書館なら取り寄せも出来るので、購入をためらう価格の本も読める。

 

常時活字欠乏症だった、小学生の頃の私が知ったら歓喜することだろう。
でも肝心の本を読むための時間は、当時の3分の1もないのだが。

世界は皮肉に満ちていて、だからこそ面白い。

 

本は私の人生になくてはならないものだ。

本から得たものは多いし、一人になっても何が起きても本さえ傍らにあればきっと大丈夫、と確信している。

その一方で本以外のことにも目を向けた方が良かったんじゃないか、と後悔もしている。
成長期にはちゃんと運動をして、基礎体力をつけておくべきだったし、友達と遊んだり彼氏をつくることも人生には大切なことだった。そしてもちろん、勉強も!

 

そんな訳で読書に少しばかり複雑な思いを抱く私は、子どもたちには「本を読みなさい」と言わずに育ててしまった。

私みたいなビブリオマニアになったらどうしよう、という心配があったからだ。
『マニア』にならない方が人生は生きやすいんじゃないか。
読書オタク歴40年の主婦はそんな風に思ったりしている。

 

結局のところ、母親の図書館通いに付き合わされ、家じゅうに本がある環境で育った息子たちは、『暇なら本を読む』子どもに育った。

スポーツもするし勉強もする、友達とも遊ぶしゲームもする。
本は何もない時の暇つぶし、という扱いだ。

正月など、TVがつまらない時のために漫画全巻セットをねだったりするくらいの適度な本好きで、誕生日もクリスマスもお正月も、全て本しかねだらなかった母は子どもたちの程良さに胸を撫で下ろしている。

 

思い返せば私の父も異常な本好きで、本さえあれば何もいらないタイプだった。
家族旅行も、レジャーの思い出もほとんどない。

本を与えて貰えたのはありがたかったけれど、もしかしたら勉強を見てやったり、スポーツクラブに所属させて送り迎えをするよりは本を読ませておいた方が楽、手が掛からない、という気持ちがあったのかも知れない。

無論、外に目を向けなかった、本にこだわり続けたのは他ならぬ私なのだけれど。

 

今は昔のように、休日の全てを本に費やしたりはしない。
家事をして子どもたちを外に送り出して、30分ほどウオーキングをして、やるべきことを済ませてそれから本に取り掛かる。
面白い本なら時間を忘れて読みふけってしまうし、最近はゲームやブログで時間がなくなり一冊も読まない日もあったりする。

確執的に本に取りつかれていた時代は終わったのかも知れない。
でもあの頃の、現実よりも本の世界に生きていた頃もそれなりに楽しかったな、なんて懐かしく思ったりする。

いつかまた一人になったら、本しかない時代が戻ってくるのだろうか?
その頃には3~4時間同じ姿勢で本を読み続ける体力が失われているかも知れないけれど。

もしも幽霊なんてものがこの世に存在するのなら、私は本に取り憑く地縛霊になりたい、そんな夢を見る。大きな図書館や書店で、本を読み続けていられるならば成仏なんてしなくてもいい。

でも自分でページがめくれなくて、誰かの背後から覗き込むしかなかったら。自分のペースで読めなかったり、一番良い処で本が閉じられてしまったら。

祟ってやる!と思うくらいには本が好きだし、同じくらい本に祟られているとも思うのです…。

 

図書館島 (海外文学セレクション)

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