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幕を引く物語-加納朋子『カーテンコール!』感想

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加納朋子さんの小説『カーテンコール!』を読み終えた。

閉校する女子大、その最後の学生たちの物語。
加納朋子さんらしい、希望に溢れた物語でした。

経営難で閉校する萌木女学園。
私達はその最後の卒業生、のはずだった――。
とにかく全員卒業させようと、限界まで下げられたハードルさえクリアできなかった「ワケあり」の私達。温情で半年の猶予を与えられ、敷地の片隅で補習を受けることに。ただし、外出、ネット、面会、全部禁止! 
これじゃあ、軟禁生活じゃない!

カーテンコール!

 

物語のあらすじ

 

物語の舞台は閉校が決まったとある女子大。
最後の卒業生を送り出し、伝統ある学園に幕が下りる…はずだったのだが。
出席日数、成績。どうやっても卒業できない学生たちが居残ってしまった。

学園の理事長からの温情で半年の猶予を与えられた彼女たちは、敷地内の寮に住み込み、補習を受けることになる。外出、ネット禁止。食事、起床時間から睡眠時間まで、全てが管理制。まるで刑務所のような半年間の寮生活を無事に終え、彼女たちは卒業を迎えることが出来るのだろうか?

物語のあらすじはこんな感じ。

かつては就職率が高いと人気だった女子大学、萌木女学園。
今はその役目を終え、4月には閉校を迎えるはず…だった。
しかし、閉校を知っていながら、普通よりもハードルを下げられているのに、それでも卒業できない生徒たちが!

理事長は彼女たちに温情をかけ、かつて寮として使われていた施設にぶち込み、必要な単位を取得させるために、半年間の徹底合宿を行う訳です。

朝起きられない、居眠りが多すぎる、体力が無くて通学できない…。
生徒たちの悩みは人それぞれ。
遅刻とか、通学時間が長すぎて疲れるとか、正直甘えや怠けという言葉で片付けたくなる悩みも多い。

でも彼女たちは皆、『どうして私は他の人と同じように出来ないんだろう?』と切実に悩んでいる。
家族とのしがらみだったり、誤った生活習慣だったり、体質的な問題だったり。
悩みの根底には何かしらの原因があるのだけれど、それに自発的に気が付くことは難しい。

就寝の仕方や、家庭での食事量や回数、なんてなかなか他人と比べる機会のないものだから。
他者と比べることで、自分を見つめなおす。
その良いきっかけが、半年間、二人部屋の寮生活となるわけで。

睡眠障害組、過食と拒食のペアなど上手いこと組み合わされた二人の女子。
彼女たちは同室の友人、それから理事長や職員たちが叩きこむ、規則正しい生活、栄養管理された食事の日々の中からきちんとした暮らしが身体にもたらす効用、みたいなものを学んでいきます。

同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。ちゃんと運動、そして勉強。バランスの取れた食事を三食、喫煙や飲酒は基本禁止。インターネットも禁止!

要するに運動瞑想睡眠、野菜350gのハードバージョン。
規則正しい生活を送れない人の末路は恐ろしい恐ろしい…な訳です、恐ろしい。

もちろん規則正しい生活だけでは改善されない悩みもあります。
障害や、本人の精神に起因する問題。

それでも『私なんてダメダメだ』で思考停止してしまうんではなく、何故そうなのか?どうすれば改善できるのか?を解きほぐしてくれるストーリーは非常に爽やかです。

 

私の違和感

 

実は、この物語を読んで私はほんの少しだけ違和感を覚えてしまいました。
とても爽快で、感動できる物語なんですけど、 生活を改善されて更生する女の子たちが女子大生、もう成人している…って所でえっ、と。

女子高生ならまだしも、女子大生なら、夜更かしするから起きられないとか、そういう当たり前のことくらい自分で気が付いて改善できないもんかなぁ…と。

でもわが身を振り返れば、私が規則正しい生活や食事に気をつけてるのって家族や自分の仕事に差し支えがないように、って気持ちからなんですよね。
もしも私が無職で、一人暮らしだったらついダラダラして昼夜逆転しそうだし、絶対三食食べなそう。

義務があるから規則正しい生活を送り、そしてその心地よさ、健康効果を学ぶわけで。だから年齢に関係なく、こんな寮生活を送ってみたい、憧れる!という人は一定数いそう。

そんな意味で、この物語は大人向けの寓話なのかも知れません。
私だって三食カロリー計算された食事が上げ膳据え膳の暮らし、送りたいもんなー!

ではでは、今日はそんな感じです。

 

カーテンコール!

カーテンコール!