おのにち

おのにちはいつかみたにっち

2019/振り返りと反省

まだ年の瀬にはちと早い…ですが、今日は簡単に今年の振り返りと反省について、まとめていきたいと思います。

 

まずは今年の振り返りから。

 

子どもがだいぶ大きくなり、
一人旅が出来るようになりました。

今年は山梨、それから銀座に行きました!

  

yutoma233.hatenablog.com

  

yutoma233.hatenablog.com

 

完全に一人で出かけたのは銀座だけで、山梨は社員旅行なんですけど。
それでも一昨年くらいから一人で出かける時間が持てるようになり、楽しんでおります。

 まだ小学生がいるので、家を夫に任せてのお出かけですが。
中学生・高校生くらいになれば夫婦で旅行も出来るかな?

家族みんなでのお出かけも勿論楽しいんですが、子どもがいると落ち着いた場所には行きづらいので…とにかく活動範囲が少しづつ広がり、楽しい一年でした。

 

 

続いて反省。

…久しぶりの一人旅&お友達との再会にテンションが上がりすぎ、初対面の方からドン引きされました…

なんかホントにすいませんでしたっ!

 

lizune.hatenablog.com

 

初音りずさんの名言『はてなこえーわ』が忘れられませんw
私の中では今年の流行語大賞っす。

もしもまたお会いする機会がありましたら、よろしくお願いしますー。
来年も誰か個展を…はてなブロガーのイベント開催を是非…!

 なおブログの方は、今年は73記事ほど公開しました。
去年は116記事、おととしは155...

だんだんネタがなくなりつつあるんですが、これからも細々と書いていきたいっす。
まだはてなブログPROの期間残ってるし、書かないと物事を深く考える機会も減っちゃうし。

なにより、書くことで繋がる色んな方との交流がやっぱり楽しい!

 

来年も飽きずにブログを続けたい。
そしてはてなを通して仲良くなった方々とも、変わらず仲良しでいたいなぁ。

次年度への抱負はこんな感じです。それではまた!

 

 

お題「2019年振り返りと反省」

目覚ましライトと資本主義

先日Kindle Unlimitedで早起き生活のススメ、的な本を借りた。
そして数ページで本を閉じた。

著者の起床時間、朝6時半だと…⁉
早起きなめとんのかワレぇ!!

 

…学校に行く子どもさんのお弁当を作る家庭などは、朝5時起きが当たり前なんじゃないかと思う。

朝練のある中学生のいる我が家も、5時半に起きてなんとか7時前に出かける子どもを送り出すことが出来ている。

起きたらまずは洗濯機を回し、昨日の洗濯物を畳んで片付ける。
食洗器の中の食器を片付け、朝食を作り家族を起こす。
家族の食事の間に私は夕食の下ごしらえ。
洗い物は全部食洗器に入れ、洗濯物を干す。

そうこうしているとあっという間に7時。

家族を送り出し、はてブ新着やTVニュースを見ながら今度はゆっくり自分の朝食。
食事と身支度を45分ほどで済ませたら軽く室内を整え8時前には出勤である。

我ながら慌ただしいな⁉

しかし主婦歴20年。
毎日同じ時間に起きるなんて、余裕のよっちゃんイカよ…

と思っていたのだ。

12月になるまでは。

 

東北、会津の日は短い。

7月の日の出は朝5時だったのに、12月の今は6時半だ。
当然5時半の寝室は真っ暗。

目が覚めない…眠い…寝ても寝ても眠すぎる、いっそ冬眠してしまいたい!

23時前にはいつもグッスリなので、睡眠時間は足りているはず。
だから単に日照不足だとは思うのだけれど。

でも去年はここまで眠くなかったハズなのに…老化か?
年を取ったら早起きになると聞いていたのに!あれは都市伝説だったのか―――!

 

と言う訳で、薄汚れた資本主義の狗である私はさっそく金で解決を図った。
目覚ましライトー、3999円ナリー!(ドラえもんとコロ助を足して2で割った声で

 

 

起床時間の10~60分前から徐々に部屋が明るくなり、5時半には電気をつけたような明るさになる。

真夏の寝ていられないほどまぶしい太陽には負けるけれど、いい感じに起きられるようになって、とりあえず私は4000円弱で救われた訳である…が。

 

『寝室の電気にもそういう機能付いてなかった?』と旦那に言われリモコンをよーく見てみたら…

なんかある。ゆっくり目覚ましタイマーってなんだそりゃ?

 

…とりあえず見なかったことにした。
私は資本主義の狗っ!年末の無駄な出費に後悔など…あるっ!(吐血

 

恐怖のシチュエーション

 先日、同僚たちと富士急ハイランドの巨大お化け屋敷『絶凶・戦慄迷宮』に行ってきた。

歩行距離900m、病院のような建物を丸ごと一棟使った贅沢なアトラクション。

料金も、一組8千円(最大4人まで。4人で入れば2千円、お一人様なら全額自己負担!)というゴージャスさ。でも実際に入ってみると歩き回るのに40分以上かかったので2千円の価値はあると思う。

前述のとおり建物は凝りまくり、アルバイトのお化け?もノリノリで登場するわでなかなかの怖さだった。

幸いなことに4人組が功を奏し、一番後ろの人が大柄で落ち着いたタイプだったのでお化けに追いかけられてもストッパー代わりになり、かなり助かった。

別の組は最後尾が一番の怖がりで先頭を追い抜く大疾走を見せたらしい(施設内は走ってはいけません)。

いざという事態への向かい合い方が、お化け屋敷で判定出来る気がする…と言ったら言い過ぎだろうか。

なお施設内は悲鳴を上げるほどじゃないけど、それなりの怖さ。
まぁ私いいオトナだから平気ですけどね…
でも一人ではとても無理!

  

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まずは4人一組で、前の組とは少し時間を置いて出発するのだけれど、私たちの後ろの女子たちが全力疾走したらしく、ガンガン迫ってくるヒール音が怖ええ(カツカツカツカツ!)。

後ろから聞こえてくるホラー映画ばりのきれいな悲鳴も臨場感ありすぎて怖ええ。

階段が怖かったのか、震え声でカントリーロードを歌いだし反響してくるその歌声も怖ええええ!

それホラー映画だったら絶対なにか起きるヤツだから!死亡フラグやめて!

…知り合いなら○○ちゃん本気で怖がってるよwと笑えるのですが…
恐怖は伝染するというか、他人の恐怖は怖いんだな、というのが新しい学びでした。

人の感情って伝播するじゃないですか。

例えばこういう限られた人数でのアトラクションに、サクラを投入して発狂する演技をされたらガチで怖くないですか?私だったら泣く!

 

後は建物も凝っていて怖かったなー。
ちゃんと病院設定に基づいて、骨粗鬆症のポスター貼ってあったりとか。

私は何かが絶対出そうな長い廊下(左右にたくさんドアあり)が一番怖かったのですが、砂嵐のTVが怖いとか、新生児用の保育器が怖いとか各自それぞれ怖いツボがあるのも面白かった。

 

どういう場所が一番怖いか?と真面目に分析すると、私は学校とか病院の、床がタイルで、両側に扉がいくつもあるタイプのトイレが一番怖いです。

更に古びて廃墟化してるやつ最怖。

白い壁や扉が黄ばみを通り越して赤くなってて、床は少し湿って鏡はちょっと歪んでるの。

そこのドアが一つだけ閉まってたりしたら絶対通り抜けられない。
やっとの思いでドア前を通過したらその向かいからお化けが出てきたりして…

泣く!私そのシチュエーション絶対泣くわ!

 

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さて、あなたの恐怖のシチュエーションはどんな感じなんでしょう?

なお、お化け屋敷に行った後からやたら悪夢をみるおのにちです…
やっぱり怖かったんやないかい!

  

  

コンジアム(字幕版)

コンジアム(字幕版)

 

 

アンノウン・ジャンキー

 

さて諸君。

昨日の私は滅びゆく町で安穏と暮らす私の話を書いた。

すまない、あれは嘘だ。

いや、厳密にいえば嘘ではない。
昨日の私は年老い、落ちついた心境だったんだ。
だからあれは昨日の真実。

だが、今日の私は違う。

空は晴れ、気力充実し、安穏のしっぽを掴んでブルンブルン振り回したい気分なんだ。

本当にすまないね、筆者のブログはすべてその日のテンションで描かれている。

今日の安穏はブルンブルンブルンダーッなんだっ…!!(安穏投げ記録・5m)

そんな訳で昨日、私は自分の周りでは仕事を長く続ける人が多い、と書いた。それは事実だ。私自身も今の仕事を5年続けている。

しかし今日の気持ちを正直に言おう。

飽きた…今の仕事、飽きたっ…!

とはいえ仕事はやめねー。石にすがりついてもやめねー。

今の職場は給与過去最高だし(田舎基準だけどね)これから上がる見込みもある。65歳までの勤務も可能、職場環境も人間関係も良好。

ただ…変化に欠ける!バージョンアップ足りなすぎ―!

私だって分かっている。

既婚・子持ちで、さらに持ち家まで建ててしまった私がやるべきことは安定した職場で安定した収入を得る事だと。

しかし…安穏、つまんないんだってばよーー!

 

世にはびこるビジネス書の多くは常に変化を謳っている。学び、スキルアップ、更に大きな、出来る人間へ。

書店でああした前向きな表紙に気後れする人も多いだろう。

意識高い系、的な。

だが安心しろ。私は知っている。

少なくとも私の場合、ああいう新しいこと学びたくなる・始めたくなる要因は全部自分の『飽きっぽさ』が起因だっ!

 

一つの事をコツコツ続けるタイプの人は、新しいことにチャレンジし続ける人を見て『自分は頑張りが足りないのかな?』という気分になるらしい。

でもそれは違うと思うんだ。

一つの事を続けられるのは根気強さという美徳だし、逆に飽きっぽいをポジティブに言えば好奇心が強いになる。

どちらかと言うと昨今は飽きっぽい派が重宝されてる気はするんだけど、田舎は根気強く落ち着いた人間が多いぞ!つまり私は浮いて…殺戮!

 

最近は派遣や非正規雇用という働き方が社会問題になっている。
給与が少ない、雇用が不安定など様々な問題を抱えている形態だ。

私自身も過去数年、人材派遣会社に登録し半年~一年単位で様々な仕事をしたことがある。

スキルやキャリア形成には向かず、使い捨てと揶揄されがちな職種…

 

ものすごくバカっぽいことを承知で書く。

すいません、私臨時楽しかった…!

一年で変わる新しい職場。社内のパワーバランスを読み、どこに所属するべきか見極め3ヶ月で既に去年からいましたみたいなふてぶてしい顔をするために強者に擦り寄る!誰にでも出来るようになってる仕事を、ちょっと早く覚えるだけでめっちゃ褒められ承認欲求満たされまくり!

スキー場のチケット売りとかアミューズメントパーク感覚でめっちゃ楽しかったな。

移動が大変、給与が安いなど勿論問題はありまくりなんですが。

私にとってあの数年は国内で出来るワーキングホリデーみたいなもんでした。

ただ最長一年っていうのがミソで、長くいればいるほど職員扱いされて、けれども給料は変わらないって辺りがやっぱり問題です。長くいる人ほど、鬱憤たまるよなー。

まあとにかく、職種変えるの結構楽しい。
65歳過ぎた後でも、ウェイトレスとか仲居さんとか、採用されるならぜひやってみたいです。

年を取っても働く人を憐れむ輩も多いですが、健康寿命を延ばすためには労働が一番。

しかも臨時として仕事をちょこちょこ変えられるって、いわば大人のキッザニア体験じゃないっすか…!

 

話がちょっと脱線しました。

とにかく私はよくググり、興味を持ったジャンルがあれば調べまくりたいオンナ。SF全盛期育ち、ムー世代。未知大好き!アイラブ驚異!

一言でいえばアンノウン・ジャンキ―。

 

飽きた職場を続けるためには今の仕事を掘り下げていくしかないよね。

そんな訳で。

職場の生き字引に…俺はなるっ…!
とりあえず職場の七不思議を調査だっ!(ありません

 

 

穏やかな衰退

今後の世界はどうなるか、という長期予測について書かれた本を以前読んだ。

 

まずは現在発展途上と呼ばれている国々が経済的成長を遂げる。

その過程で一時的に環境は悪化するが、やがて全世界が少子高齢化、人口は減少していく。その後は穏やかではあるが変化や成長に乏しい時代が訪れる、という話だった。

 

本のタイトルすら忘れてしまった、相当あやふやな話なのだが、穏やかで寂れた雰囲気の未来観が終末SFそのもので、美しいと思ったことを覚えている。

 

さて、私は地方の小さな町に住んでいる。

一応近くに(といっても田舎の近くは車で10分)コンビニ、スーパー、ドラッグストア、総合病院がある、多少マシな感じの田舎である。
ただし同じ町の中には山間部にあることから人口が減少、僅かな住民も高齢化、国からの支援を受けてなんとか息を繋いでいる、そんな集落も存在している。

 

しかしいまや日本の半分は田舎なんじゃないか、とも思う。

平成29年度の日本の市町村数は1718(東京特別区除く)。そのうち過疎地域(一部過疎、みなし過疎含む)として認定されている地域は817。

47.6%が過疎。
一極集中しすぎた日本の今がこの結果である。

なお、過疎地域の数は毎年じわじわと増え続けている。
このペースだと半数を超えるのもじきだと思われる。

 

高齢化が進み、穏やかではあるが変化や成長には乏しい町。
日本の多くの市町村がいまや、やがて来る世界の未来を先取りしている訳である。

 

そんな訳で、衰退真っ只中で暮らす私。

確かに変化や成長には乏しい場所である。
バイパス沿いの大型店はたまに入れ替わるけれど、その出店は明らかに周回遅れだ。後継者不足で地元の名店も少しずつ欠けていく。勿論美術館や博物館といった文化に触れる施設は明らかに不足している。

 

しかしその一方で混雑や渋滞、競争とは無縁の穏やかな場所でもある。

都会のように短期間で高収入が得られる仕事は勿論少ないのだが、地方公務員、農協、地銀といった田舎の安定職に一度潜り込んでしまえば、穏やかな暮らしが定年まで保障される。

田舎では倒産でもしない限り、首を切られる事も少ない。

求人が出ても応募が来るまで数ヶ月待ち。それが地方の当たり前だからだ。
私の周りでも同じ仕事を長く続けている人が多い。

 

安定して緩やかな、しかし閉じていて変化に乏しいコミュニティ。

成長は望めないけれど、安穏とした暮らしを求める人には田舎は心地よい場所だ。
未来の世界がそんな風に変わっていくのなら、世の中は暮らしやすくなることだろう。

 

その一方で、微かな懸念もある。
閉じたコミュニティは、部外者に厳しく、自分たちのルールに固執しがちになる。

つけびの村、秋田の医者いじめ…

勿論そうした『部外者排除』は田舎に限った話ではない。

高齢者が多くなった都会の一部地域では子どもの騒音を嫌い、規制すると言ったニュースをよく聞く。

同じ属性を持つものが多く集まる場所では、その主属性が暮らしやすいように環境が整えられていく。

その結果、場に馴染めないものやローカル・ルールが守れないものは重罪人のような扱いで除外されていく。

 

最近のTwitterを見ていると、そうした『コミュニティ分け』が進んでいるような気がして不安になる。

フェミ対オタク、なんて論争が起きている所はまだ良い方で、争いを避けるためにゾーニングしようという話をよく聞く。属性を明記した#もそうした住み分けの一環だろうか。行き過ぎた界隈では男の国、女の国を作ろうなんて恐ろしい話もあるらしい。

 

自分と同じ属性のものだけが住む、守られた世界。
それは確かに平穏である。

けれどもそこには変化や驚きがない。

変化に乏しい場所(船や離島など)で育った子どもは発育に遅れが出る、という話を聞いたことがある。

 

争いを嫌う私たちが望む『住み分け』はもしかしたら精神的な過疎で、新しいことを学ぶ喜びー輝かしいセンス・オブ・ワンダーからは背を向けているのかも知れない。

 

とはいえ私が住むのは守られた過疎の町。
満員電車の痴漢も、駅構内でぶつかってくる人間も、全ては対岸の出来事だ。

 

穏やかな衰退の中にある町の中から、これからのコミュニティがどうなって行くのか、注意深く見守っていきたいと思う。

 

 

人類は衰退しました 1 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 1 (ガガガ文庫)

 

 

遠い灯り

北の町の陽は短い。

仕事を終えて外に出れば辺りはもう真っ暗だ。

 

わずかな灯りを頼りに駐車場へと急ぐと、私の小さな車が一台、街灯に照らされて佇んでいる。
暗い夜の小さな灯りが、わずかに暖かく感じられて、ほっと息を吐いた。

 

冬の寒さも陽の短さも、あまり好きではない。

寒いと肩凝りが酷くなる。重たい冬服も嫌いだし、布団はやっぱり天日に干したい。

 

でも暗い夜の小さな灯りや、寒い日に外で飲む暖かな飲み物は好きだ。

長い冬には小さな光や温もりがかけがえのない幸せのように感じられる。

厳しい季節だからこそ感じられる、ささやかな温もり。

 

私にとっての長い冬は、暗い夜の遠い街灯だ。

暗くて寒くて心許ない道のりは、小さな光で守られている。

 

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ブログも時折、そんな風に思えてくる時がある。

小さな町の小さな私が、紡ぐ言葉にどんな意味があるんだろう?

 

世の中は暇つぶしに溢れている。

暗い部屋で一人パソコンに向かうより、目の前の享楽に耽った方がインスタントで幸せになれる。

 

それでも同じブログを書く人たちに、今日の献立や、素敵なモノを教えて貰える。

ささやかな幸せや、時には苛立ちや悲しみが届くこともある。

それは暗い夜の遠い灯りのようで、私もなにかを紡ぎたくなる。

 

私とあなたは、多分出会わないし繋がらない。

それでも分けてもらった日々の中の小さな光に、私も小さなスターを返す。

 

読み込みが遅くなるとか、業者に連打されるとか色々不評も多いはてなスター。

それでもそれは私にとって、柔らかで暖かい小さなひかりだ。

 

 

 

だから押せ…押してけー…なんならカラースターでもいいぞ…
(はてなスター押してけ堀妖怪

 

突っ込みどころが多すぎる-『Iの悲劇』米澤穂信

米澤穂信さんのミステリ『Iの悲劇』を読みました。

少年少女のほろ苦いミステリでは不動の地位を築く米澤穂信が挑む、過疎地域再生プロジェクトミステリという地味な大人向けジャンル…なのですが、うーむ。

オチありきで書きだしてしまったのかな?
確かに思いがけない結末なんですけど、でも現実的にはどう考えてもあり得ない。

『氷菓』も『満願』も『インシテミル』も大好きなんですけど、今回ばかりはちょっと…

プロットの粗さが目立つ、残念な作品でした。

 

物語の舞台は南はかま市という架空の市に存在する小さな集落、箕石(みのいし)。
南はかま市は9年前に4つの自治体が合併してできた、人口6万人強の市です。

合併により広大な面積を擁することになった市ですが、支援センターがない、砂防工事が終わっていない地域があるなど、財源は不足している様子。

箕石はそんな南はかま市の市街地から離れ、山道を渓流沿いに進んだ先にある山あいの小さな集落です。

家はわずか20軒ほど。しかし土地の不便さや住人の老齢化により、人口は少しづつ減っています。6年前には最後の住民が山を下り、今は無人に。

 

しかし新しい市長はそんな箕石集落の復活を公約に掲げて当選。

死んだ村に市の外から人を呼び、定住を促して失われた活気を取り戻すーそれがみのいしIターン支援プロジェクト。

そして南はかま市市職員であり、事実上のみのいし復興プロジェクトリーダーである甦り課職員、万願寺邦和がこの物語の主人公であります。

そして箕石の地権者と交渉し空き家を貸す契約を結び、それを定住希望者に格安で提供、新生活全般をサポートするのが甦り課職員、たった3名に課せられたお仕事!

 

…ちょっと業務量多すぎじゃないですか?

 

 

さて、6年間無人で道路も建物も傷んでいること間違いなしの箕石。
まずは人が住めるように復旧すること、それから家を貸し出せるように地権者と交渉する必要があるのですが…この物語ではわずか一行。

 

『地権者と交渉して空き家を貸す了承を取り付けその家を定住希望者に格安で提供し』

 

ず、ずいぶん簡単に済ませやがりましたわね…6年以上放置された物件の取り扱いなのに。これ用地課泣くやつ!つか主人公の万願寺、元は用地課職員という設定でしょうに…。

 

物語の舞台、箕石では6年前に最後の住人が老齢から山を下りたので、他の物件は人が住まなくなって更に時間が経っているはず。当然修復も必要になってくるし、持ち主が既に亡くなっている可能性も高い。無人の集落に建った家、なんて使い道もない物件、わざわざ相続を済ませている人も少ないことでしょう。

相続権者を探して、相続手続きを代行して、その上で賃貸契約を結んで…

20軒ほどの小さな集落に12世帯が移住、という設定になっていますが、20軒しかない家を12軒も貸せるなんて(しかも市長の任期中、たった4年の間に)甦り課優秀すぎじゃありませんか⁉

 

  普通に考えたらここの契約や道路の修復などで一年はかかってしまうのではないでしょうか。物語の時列系としては復興を掲げた市長が当選→再選を目指す までの間なので、市長の任期、4年間の話なのは確実だと思うのですが。

 

だいたい、まずは予算を議会に通さなくちゃいけませんよね?
新規プロジェクトなのでそもそもの財源をどこから引っ張って来るのか、という話になるし。

要は過疎化した集落の再生事業なので、国の過疎地域等自立活性化推進交付金とかに申請できそうですが…

これだってプランを立てて、申し込みして、予算が降りるの早くて翌年だよね⁉
だいたいお金を国から引っ張って来れれば終盤で問題になる市の財源不足なんて事態は起こらないはずでは?

とはいえ今時過疎地域の支援に補助金使わない自治体があるなんて信じられない。
南はかま市は財源が不足している設定だし。

そもそもここがヘンだし展開早すぎなんですよ米澤センセー!

前述のとおり物語の終盤には、箕石集落の維持管理にお金が…なんて話が出てくるのですが、普通に考えたら管理費よりも『住めるようにする』初期投資が一番大変だと思います。

そこでガッツリお金を使ったはずなのに、なぜ維持管理でそんなに騒ぐ⁉
そして市長はなぜ実際に始めてから掛かるコストでグタグタ言ってんですかね。

予算議会で通したんでしょうが⁉どこの世界に実際に運営してからじゃないと経費すら計算できない自治体があるんですかーー⁉

しかも問題になるのが除雪やらバスやら、地味なお金の話ばかり。
そのどれもが住民を雇って依頼すれば済む話で…それで雇用も解決だし。

あとは住民の細かなトラブルに、いちいちわざわざ万願寺が車で出向いていくのも気になります。新集落だし、かなり実験的な地域なので地域おこし協力隊とか雇ってそこに住んで見守ってもらうのが一番なのでは?特別交付税あるんだし。

 

しかもこんだけ大掛かりなプロジェクト、一期限りで畳んだら市長の再選なんて無理に決まってんでしょうがーー!

 

 

 えーと色々無理な話でクラクラしながら読み終えました。

とんでもミステリならまだいいんだけど、米澤センセの筆致っていつも冷静で、登場人物もすっごく頭が切れるぞ、という設定なので余計モヤッとしちゃうんですよね。

普通の主婦である私が読んでもこれだけ突っ込みどころが見つかったので、実際に過地地域支援や定住希望者への賃貸管理に携わってる職員さんならモヤモヤ度は倍増だと思います。

もちろん貸家型のIターンって、実際にトラブルの多い分野ではあるんですけどね。
田舎に住みたいと夢を抱いてきた人に家を貸して、その人がキレイにリフォーム終えた頃になってやっぱり返せ、とかさぁ…怖い!現実も怖い!

 

 それにしたってこれはねーわ、的なミステリでした。
もうちょっと、交付金とか考えてから書きましょう?

あるいは全部が市長を蹴落とすための策略だとしたらあり得るのかな?
とにかくうむむむ…

 

Iの悲劇

Iの悲劇