おのにち

おのにちはいつかみたにっち

メイクの正解って?アイラインが苦手です

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もうしじゅー。
人生の折り返し地点なのに未だに処女な部分がある。

バック?

ノンノン、そこは肛門科でひっくり返されて器具がぐっさり、中まで覗かれた。

未だバージン。人生の未踏地点。

それは某粘膜付近にございまして。

 


勿体ぶりましたが私、平成のこの時代に未だつけまバージン、リキッドアイライナーバージン。
眼の粘膜、が弱点なんです…。

コンタクトの方ならご存じでしょう。コンタクトという異物が入った状態で目にゴミが入ると通常の二、三倍痛い。
いだだだだだ!って洗面所に駆け込む羽目になる。

こんなデリケートな目元に飛び散りそうなアイシャドウ塗るとかなんてデストロイ。
太目で柔らかいペンシルライナーをそおっと、ならたまに入れるが、白目ひんむいてまつ毛の生え際、粘膜ぎりっぎりに入れるリキッドライン、それって死線。
リキッド・オブ・デッド。

 

ヒロインメイクSP スムースリキッドアイライナースーパーキープ01/漆黒ブラック 0.4ml (お湯落ちタイプ)

 

何を隠そう、自分不器用ですから。

何度眼球にアイラインを引いたことか。何度マスカラの剛毛が白目に突き刺さったことか。
洗面所でのたうちまわった遠い過去。
痛いよう怖いよう暗いよう(ちょっと違う)。

私は悟った。

愛(EYE)とは苦しいもの、辛いもの。もう愛(メイク)なんてしない…!

 

というわけでアイメイクはたまにペンシルライナーとマスカラを塗るくらい。
メイクはするものの、日々顔が薄い。
とりあえず白く塗って眉毛を書く。
そのままだとゾンビっぽいのでチークと口紅で血色を足し生存感を出す。

脱・ゾンビメイク。
今年の流行メイクは『おふぇろ顔』だったが私が目指すのは『生存顔』。
生きて見えればそれだけで良し。

 

こんな意識低いメイクだから職場では限りなく負け犬。

向かいに座る若い女子は目を伏せると赤茶のアイライナーがちらっ、と覗いて色っぽい。

目元かわいい、と褒めたら「どれがですか?」と聞かれた。

どうやら黒目を大きく見せるコンタクト、黒のインサイドライン、その上に赤茶のアイライン、茶系のマスカラ、目の下には白のアイラインが入っているので、どれがかわいく見えたのかを聞きたかったらしい。

 

アイメイクに五工程を費やす女子。
全工程を放棄したゾンビ(いや辛うじて生きてます)。

パトラッシュ、僕はなんだかとっても眠いんだ…。

 

今の職場では生存すら放棄したくなるレベルで負けている私だが、かつての職場では輝いていた(ような気がする)。
みんな違って、みんないい(かどうかはともかく)だったあの職場。

今日は十年前の職場の間違ったメイク話。
(ここから本文。今日も話が長いんで面倒な人はスクロールして「スッピンの方がかわいいよ」とかありがちなセリフをブクマするんだ!)

 

ツタンカーメンと円卓会議

 


十年前。三十代の私はお堅い公共機関の新しくできた出張窓口に採用された。
同僚は三名。
二十代、三十代、四十代と年齢がくっきりわかれた女性三人。

なぜか正解メイクが一人もいなかった。

二十代、アイラインがとにかく太い。黒目の上に太ったナメクジが乗っているレベルで太い。
顔を見るとうどんが食べたくなる女の子(ごんぶと…)。

三十代。特筆した事項は何もない。薄い。とにかく薄い。どうやらしかばねのようだ。

四十代。工藤静香。目と目で通じ合ってた頃の静香。髪は茶髪ストレートロング、前髪は薄く下ろして大半はトサカ。
アイシャドウは紫、唇は土気色。無言…色っぽい?


さすがにこんな公共機関はいやだ、と上司が思ったのかどうかは知らないが勤めだしてすぐにマナー研修があった。
会議室で女性指導員と対面する私たち。

そこにもメイクの正解はなかった。

エキゾチックな砂漠の匂い。
私はその人をよく知っていた。
高校の頃さんざん読んだ少女マンガ。

やっと会えた。
悠久の時を超え、私は日本の会議室で彼(厳密には女性だったが)と再び巡り合った。

 

メンフィス!

 

そこにいたのはツタンカーメンを彷彿とさせる年齢不詳の女性だった。
クスダエリコな黒髪ストレート。ベージュのパンツスーツ、金のアクセサリー。

そして跳ね上がったエメラルドグリーンのアイライン。

もはや私の脳内では彼女がメンフィス、私がキャロル。
度重なる誘拐から逃れようやく巡り合えた二人。

私は彼女をうっとり見つめた。
心なしか彼女の方も私ばかり見つめていた気がする。
やがて研修が終わり、脳内王家の紋章ごっこも終わった。

 

王家の紋章(60)(プリンセス・コミックス)

 

現実に帰り疑問に思ったのはマナー研修であのメイクはありなのか、ということ。
いくらうどんと静香な二人でも、きらめくエメラルドグリーンのアイラインには違和感を覚えたのではないだろうか。

こそっと聞いてみた。
「あのメイクってさ…」
二人は私の顔を見て笑った。
「今日メイク直ししなかったでしょう?研修の間おかしくっておかしくって」

そういえば今日は忙しくてお昼のメイク直しをはしょった。
メンフィスに動揺し額に流れた汗をハンカチで拭いた。

「眉毛片っぽ消えてる。麻呂だよ麻呂!」

急いでトイレに行くとメイクが剥がれ落ち、片眉になったゾンビがいた。

私の弱点、それは片方の眉毛が半分しかないこと。
昔はふっさふっさしていた。
しかし若かりし頃、資生堂のカウンターでメイク講習をしてもらったらなぜか半顔だけメイクされ、しかも眉毛を片側だけぶちぶち抜かれた。

あの時から私の眉毛は片一方だけ半分しか生えてこなくなった。
許しまじ資生堂。

 

メンフィスが見つめていたのはキャロルではなかった。

半分麻呂。ゾンビ入った片麻呂。

あの会議室で、一番不可だったのは私だった。


メンフィスと片麻呂とうどんと静香が円卓を囲み、向かい合うマナー教室。
今思い出してもカオスである。

メイクの正解とは何だろう。
しじゅーなのに未だたどりつかない…。

もしかしたら一生分からないままなのかも知れない。

 

こんな私の愛読誌、実はメイク雑誌の「VOCE」である(読んで満足するタイプ)。
毎号、読んでます!

(これほど嬉しくない愛読者報告もないだろうな…。)

 

VOCE(ヴォーチェ) 2016年 01 月号

VOCE(ヴォーチェ) 2016年 01 月号

 

 

じゃーね、今日は粘膜怖いぜ!メイクはエジプト!ってお話でした~。