おのにち

おのにちはいつかみたにっち

読書

森博嗣『ψの悲劇』感想-長く続く物語と付き合う喜び

森博嗣Gシリーズ11冊目、『ψ(プサイ)の悲劇』読了。 前作「χ(カイ)の悲劇」に続き、『すべてがFになる』のキャラクタが活躍する賑やかな物語である。かなり派手なアクションシーンもあり、なにより第一作から登場しているお馴染みのキャラ、島田文子さん…

虚飾の塔と深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』

深水黎一郎さんの『ミステリー・アリーナ』を読み終えました。殺人事件が起こる閉ざされた雨の山荘と、華やかなTV局のスタジオ。 二つの世界が入り乱れる虚構と虚飾の物語の結末は、一体どこにたどり着くのか?表紙に描かれた空っぽのバベルの塔のように、…

寂しさを埋め合わせるもの‐井上荒野『その話は今日はやめておきましょう』

見て見ぬふりをしたいものが、この世にはある。 井上荒野さんの『その話は今日はやめておきましょう』は正にその「この世の蓋の物語」だった。 突き刺されて、痛くて、でも心の奥に残るものがある。そんなお話でした。まだ若い方にも、そんなに若くない方に…

目が離せなくなる不思議なサーカス-『カラヴァル 深紅色の少女』

『カラヴァル 深紅色の少女』読了!全世界でベストセラーなんて華々しい肩書きのジュブナイル(YA向け?)ですが、カラフルで映像的でとっても面白かった。 ディズニーシーやシルクドソレイユのショーを活字で読んでいるような、不思議な感覚をもたらしてくれ…

屋上の夢と、万城目学『バベル九朔』

古いビルの屋上に建てられた、小さなプレハブ。貯水タンクの隣に並ぶその建物の前には物干し竿が置かれ、干された洗濯物がそこに住む人の気配を感じさせる… 首都高を走る車の窓から、そんな景色を眺めたことはないだろうか? 私はある。そしていつも密かに憧…

世界はアイドルで出来ている-柚木麻子『デートクレンジング』

〈妊活〉のために仕事を辞め、実家の喫茶店で働く佐知子。彼女の親友である実花は、10年間人生を捧げてきた仕事に挫折し、突然〈婚活〉に走り始めます。佐知子は、誰よりも輝いていたはずの親友のその姿に違和感を覚え、2人の関係もぎくしゃくしていきますが…

西尾維新『悲終伝』感想‐伝説の終わりにようやく。

遂に、ついに西尾維新の伝説シリーズを読み終えた…っ!第一巻『悲鳴伝』の発売から6年。 悲鳴伝、悲痛伝、悲惨伝、悲報伝、非業伝、悲録伝、悲亡伝、悲衛伝、悲球伝、悲終伝…と全十巻。すべて500ページ越えの大巨編。長かった…そして重かった。 一冊一冊が…

遠いあなたの夢を見る-山白朝子『私の頭が正常であったなら』

山白朝子さん(いまだに乙一、と呟いてしまう)の短編集「私の頭が正常であったなら」を読みました。 喪われた人を想う短編集、と言ったらいいのでしょうか。読みながらずっと、死と私を隔てるものについて考えていました。 冒頭の『世界で一番短い小説』は…

ファッションはやっぱり愉し/千早茜『クローゼット』

今日は一万点以上のアンティークドレスが眠る、私設美術館を舞台にした物語『クローゼット』の感想です。 いつも完璧には程遠い、いわゆる『ファッション道』を語れない私ですが、それでもこの本はとても楽しかった!母親のスカートをまとってロングスカート…

加藤秀行『シェア』-曖昧だから優しい繋がり

加藤秀行さんの『シェア』を読みました。 コンサル会社勤務、現在はバンコク在住という著者の経歴が上手く生かされていて、とっても「今」な物語でした。 物語のあらすじ 『シェア』は表題作の「シェア」、「サバイブ」という2編の中短編が収録された物語。…

幕を引く物語-加納朋子『カーテンコール!』感想

加納朋子さんの小説『カーテンコール!』を読み終えた。 閉校する女子大、その最後の学生たちの物語。 加納朋子さんらしい、希望に溢れた物語でした。 経営難で閉校する萌木女学園。私達はその最後の卒業生、のはずだった――。とにかく全員卒業させようと、限…

優しい嘘は物語に似て-『架空の犬と嘘をつく猫』感想

寺地はるなさんの『架空の犬と嘘をつく猫』を読み終えた。どうしようもない現実も、ままならぬ人のサガも描かれているのだけれど物語の基本ベースは優しい、暖かい。世界への肯定が感じられる物語。とにかくボヘボヘと泣かされてしまった。 物語のあらすじ …

濃いファンタジーあります!-乾石智子『炎のタペストリー』

乾石(いぬいし)智子さんの『炎のタペストリー』を読み終えた。『夜の写本師』というシリーズでデビューして以来、ずっとハイ・ファンタジーを書き続けている作家さんだ。『炎のタペストリー』は一巻完結の物語なので、彼女の作品を初めて読む方にはちょう…

『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた』感想

東山彰良さんの『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。』という本を読んだ。タイトル長い、しかし中身は軽妙。表紙も爽やか。 東山彰良さんの作品はまだ『ブラックライダー』と『罪の終わり』しか読んでいないので(どちらも終末世界を舞台に…

フリーゲーム『セブンスコート』が面白い!ファンレターを送りたくなる物語

ゆうべふらふらとネットサーフィンしていたら、とれいCさんがかなり昔に紹介していたフリーゲーム『セブンスコート』に引っかかってしまった。 もう私、このゲーム評価しまくりよ! なんて熱い言葉に惹かれてついつい深夜からプレイ開始。『ノベルスフィア』…

藤野可織『おはなしして子ちゃん』と私の読まず嫌い

藤野可織さんの『おはなしして子ちゃん』を読んだ。2013年の本。ずっと図書館の書架にあって、かわったタイトルだから覚えていた。でも実は、手に取ってみたことは無かった。 なんていうか、読まず嫌いをしていたのだ。 藤野可織、という著者の名前が可憐で…

近藤史恵『インフルエンス』感想-私たちの絆の話

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨(ゆり)はある時、かつての親友・里子(さとこ)が無邪気に語っていた言葉の意味に気付き、衝撃を受ける。胸に重いものを抱えたまま中学生になった友梨。憧れの存在だった真帆(まほ)と友達になれて喜んだのも束の…

川瀬七緒『女學生奇譚』-思わぬ所に着地する物語

川瀬七緒さんの『女學生奇譚』を読み終えた。いやぁ、面白い!終盤はイッキ読みだった。 オチは多少マンガチックではあるものの、この物語をこう終わらせたか、というアイデアだけでもゴハンが食べられる。 とにかく出だしからは想像もつかないラスト、着地…

北村薫『ヴェネツィア便り』感想-時を越えて届く物語

北村薫さんの『ヴェネツィア便り』を読み終えた。 タイトルから旅エッセイだと思い込んでいたので、読んでみて少し驚いた。 新刊の中身は短編小説集であったのだ。 それも少し仄暗い、不穏な気配のする物語が多かった。 心中をしよう、から始まる双子の兄弟…

読書という病

時折、本に取り憑かれてるんじゃないかと思うことがある。 お風呂上がりに下着を着て、髪を拭きながら、パジャマを着ると汗をかきそうだから少しだけ本を読もう…なんて傍にある一冊を開く。 気がつくと下着姿のまま、濡れ髪で本を一冊読み終えている。変な姿…

今村昌弘『屍人荘の殺人』感想-閉ざされた屍の山荘!?

さて、人里離れた山荘は好きですか?辺鄙な場所にあるペンションは?断崖絶壁に建つ豪奢な館は?それから大雨洪水大雪土砂崩れ、というシチュエーションは?孤立状態、という言葉は? 全部大好き!大好物!という貴方にオススメしたい作品が、今村昌弘『屍人…

辻仁成『エッグマン』感想-タマゴと恋の物語

寒い日にちょうどいい本を見つけてしまった。 辻仁成さんの『エッグマン』。卵と大人の男女の相当スローな恋心を描いた物語である。 一時間ほどで読めるボリューム、物語に挟み込まれる卵料理の数々が良い味を出していると思う。 近藤史恵さんの『タルト・タ…

【SMAPと、とあるファンの物語-あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど】感想

『SMAPと、とあるファンの物語—あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど』という長いタイトルの本を読みました。著者は乗田綾子さん。 SMAPファンが書いた、SMAPと『私』の物語。 そう聞いて、どんな内容を想像するでしょう? 熱烈なファンが苦労してチ…

あなたの声が聞きたくて-仁木英之『千夜と一夜の物語』感想

仁木英之さんの「千夜と一夜の物語」(ちよとひとよのものがたり)を読んだ。これはちょっと奇妙な物語だ。 冒頭は物語のヒロイン千夜の、新しい職場の歓迎会から始まる。大手化粧品メーカーの研究員という、中途採用としては恵まれたスタートを切る千夜。し…

きっといつかあなたに会える-辻村深月『かがみの孤城』感想

辻村深月さんの「かがみの孤城」を読んだ。ポロポロポロポロ、涙が止まらなくなる。悲しいだけじゃなく清々しい、暖かで柔らかな涙。 あなたは一人じゃない。 そんなメッセージがずっと伝わってきてたまらなかった。いじめられた経験がある人、現在進行形で…

『世界一の生産性バカが一年間、命がけで試してわかった25のこと』が面白い3つの理由

『世界一の生産性バカが一年間、命がけで試してわかった25のこと』という本を読んだ。職場の同僚から、これ面白かったよ、オススメ!と言われて借りたのだが、実は正直渋々…と言った感じだった。 だって、タイトルから漂う、意識高い系ビジネスマンのかほ…

限りなく現実に近いディストピア-中村文則『R帝国』感想

中村文則さんの「R帝国」を読み終えた。 近未来の架空の島国・R帝国を舞台にしたディストピア小説である。 あまりにも暗く、救いのないストーリー。でも現実に限りなく近いところが面白く、色々考えずにはいられなくなる一冊だった。 物語は「朝、目が覚め…

歌野晶午「ディレクターズ・カット」感想-作り物の事件、作り物の死

歌野晶午さんの「ディレクターズ・カット」を読み終わった。相変わらずどんでん返しが冴えていて、面白い。 冒頭は著者お得意の口が悪く乱暴で、サイコパスじみた若者たちの無軌道なお遊びから。 コインランドリーで水着姿になり動画配信、洗濯物を取りに来…

『BLAME! THE ANTHOLOGY 』感想-豪華すぎる階層世界の物語

「BLAME! THE ANTHOLOGY」を読み終わった。 小川一水、野崎まど、飛浩隆と実力派揃いの豪華アンソロジー小説。 アンソロジーのテーマとなる「BLAME!」とは、月刊アフタヌーンにて1997年から2003年にかけて連載されていた弐瓶勉の人気SF漫画である。 遠い未来…

拡散する幽霊の謎?-似鳥鶏『100億人のヨリコさん』

面白い本を読みました。 貧乏な大学生が一人、リアカーを引きながら構内の寮に引っ越していく様子から物語は始まります。 訳ありの彼がこれから暮らすのは敷地の最奥にあると言われる、富穰寮。 誰も見たことがない、地図にも載っていない。都市伝説のような…