おのにち

おのにちはいつかみたにっち

好きな言葉と意識の高低。

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下の息子が、この春小学生になる。

最近はひらがなを練習したり、簡単なクイズで遊んだりして、学校の準備をしている。

 先日小4の兄が「好きな言葉はなんですか?」と少し難しい質問をした。

 弟は胸を張ってハキハキと答えた。

「とりにくと、たまごやきです」

 

惜しい。態度は満点だがそういうことじゃなかった。

 しかもなぜとりにく、は素材名でたまごやきは料理名なのだ。
そこんとこ統一しないと…などとどうでもいいことを考えながら、隣で腹を抱えて笑う失礼な兄に同じ質問をしてみた。

 

「オレ?ベイビーステップ!」

 最近毎日読んでるマンガじゃねーか!

 

いやいや、兄は春には小5になる男。

ベイビーステップという言葉はたしか作中で「赤ちゃんのよちよち歩きの様に、少しづつでも前進していく」とかいう意味で使われていた気がする。

ちゃんと意味を理解したうえでの発言に違いない。

「どんな意味?」

「講談社のマンガです。NHKでアニメもやってます」

 惜しい。ブログの補足情報としては完璧だがそういうことじゃなかった。

 

それは「好きな食べ物」と「好きなマンガ」でしょう、普通は座右の銘とかを答えるのだ、と教えた。

「座右の銘って?」

「誰かの名言とか、四字熟語とか?」

それじゃ、好きな名言、好きな四字熟語じゃん、へーんなの、と返された。

確かに。

子どもは時々鋭い。

  

好きな言葉に込めた願い

  

私の好きな言葉は「悠々自適」だ。

世間に流されず、自分の思うように暮らすこと。

ゆっくりと、自分の思いのままに生きること。

 

私自身日々雑事に振り回され悠々には程遠いのだけれど、子どもたちにはこんな風に生きてほしい、と願いを込めて「悠」という1文字を兄の名前に入れた。

 

息子が生まれた2005年、死亡数が出生数を上回った。
彼は出生と死亡が交差する年に生まれた。

出生数はそれからも減少し続け、死亡数を下回っている。

新型うつ病や、ブラック企業という言葉がよく聞かれるようになったのもこの年だ。
追い詰められた、どこかキリキリした時代の空気の中で、私は「なんでもいーや」と思った。

この小さな手がいつか大きくなって、自分なりに満足して生きていけるならば、それだけで充分幸せだと思った。

もともとへその緒を切った時点で彼の人生は彼のもの。

私に口を出す権利は無いのだけれど、眠り姫に幸せを送った妖精のように、私は一つだけ子どもたちに願った。

どうか悠々自適に暮らせますように、と。

 

上を見たらキリが無い。

本当は孫が見たいけれど、正直子育ての手伝いをする体力には自信がないし、この時代結婚出産はどんどん贅沢品になっている。

悪い事に手を染めず、家を出て自分らしい生活が出来ていたら、それだけでお母さんは満足です。

悠々自適。

世間に流されず、自分の思うように暮らすこと。
ゆっくりと、自分の思いのままに生きること。

 

流されず、自分の思うように生きる、という言葉は意識高く感じる。
でも「ゆっくりと」生きようと思ったら、意識は自然と低く持つしかない。

 

それでいい、と私は思う。

前向きに、夢を持って、自分のやりたいことのために貪欲に生きる。
それ自体はとっても素敵。応援したい。

「意識高い」でも、「意識高い系」でも、向上心を持つことはいいことなんだと思う。

 

でもそれでもし、心を病んでしまったり、息切れするようだったら、立ち止まっていい。

就活でも、ブログ飯でも、今はたくさんのマニュアルが流通していて、書かれている通りにやれば誰でも出来るんじゃないか、なんて考えてしまう。

なんにでも、個人差はある。
誰かの書いたマニュアルは、あなた向けじゃないかも知れない。

 

今は誰もが短いスパンで、成功を求めすぎている気がして少し怖い。

ちゃんと明記してあったらいいのに。

 

成功には、個人差があります。

 

弟たちと幸せのかたち

 

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私には弟が二人いて、彼らは遠い場所で少し変わった仕事をしている。

 

弟1は北海道の山中で電線を直したりしている。

札幌に寮があるはずだが、日々さすらいのプレハブ生活。

だいたい携帯が繋がらないのであだ名は圏外。

その上無口で影が薄いので、下界に降りて飲み会なんかに出るたびに「ごめん、誰だっけ?」と聞かれるらしい。

でもたまに会うと、電線の上から見た景色や、鉄条網に引っかかったキジやシカがご馳走(普段はインスタントになってしまうから)というある意味不憫な日々をぽつらぽつら、楽しそうに語ってくれる。

 

弟2はミカンを作っている。

ミカンと一言で言ってもたくさんの品種があること、畑の立地によって味が違うことを、やっぱり楽しそうに語る。

2が農業を教わる師匠は、ミカンの味で生産者を当てられるらしい。
いわば、利きミカン師。

師匠をリスペクトする2は、その域目指して毎日様々なミカンを食べることを自分に課しているらしい。

これもある意味、意識高い。

美味しいミカンを作るのが目標じゃなくていいのか?という気もするが。
楽しそうだから、それでいいのだ。

 

一見のんびりした暮らしに見えるけれど、1は吹雪の日に何日もプレハブに閉じ込められたり、極寒の雪山を登る事もある。

2も農繁期には徹夜続きだ。

 労働環境だって、お金だって決していいとは言えない。
いつまで続けられるかも分からない。

でも二人とも、今はこの仕事が好きだ、と笑う。

 

好きなことだけをやれる人生なんて、きっとどこにも無い。

だから彼らの生き方も、バタバタしながらもそれを選んだ私もまた、ある意味「悠々自適」なのかも知れない。

 

とりにくとたまごやきと、ベイビーステップを愛する息子たちは将来どんな大人になるんだろう?

「普通の」サラリーマンが、ハードルの高いこの時代。

 

ユーチューバーでも、プロブロガーでも(ごめん、少し泣くかも)なんでもいいや。

 

親より長く生きて、泣くより笑う日が多ければ、それだけで。

意識なんて高くても低くても。

 

ただ「理想の自分」に追い詰められないように。 
私自身にも言い聞かせたい。

周りの速度に追い立てられないで、長いスパンでいいんだよ、って。

 

急ぎすぎないで、時折深呼吸しながら歩く。
きっとそれが、悠々自適に生きるってこと。

 

ベイビーステップ(39) (講談社コミックス)

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