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真梨幸子「イヤミス短編集」感想-嫌な気持ちになりたいあなたに?

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真梨幸子さんの『イヤミス短編集』読了。
怖い話、気持ち悪い話が多くてまさにイヤミス…とドロドロさせられました(笑)
短編集なのでちょっとドロっとしたい?時にはいいかも。

全6編、タイトル通り全てが嫌な物語の短編集。
簡単な感想を書いていきます。

 

イヤミス短篇集 (講談社文庫)

1999年の同窓会

 

タイトル通り1999年、ノストラダムスの大予言の年に小説家になった男性の話。
小学生の頃同級生だった憧れの女子から電話をもらい、人類が滅亡する前に会おうって約束したでしょ、と言われるのだが…。

周りに詐欺師しかいない主人公が凄い。
騙されやすい人はこうやって騙され続けるのかな…と腹の底が冷たくなるような話。


いつまでも、仲良く。

 

ダイエットに成功した主人公ヨシエは、母親と二人暮らし。

ダメ出しが厳しく、娘を褒めた事がない母はヨシエにたらふく食べさせるのが日課。
結果肥満が常態化し、仕事も恋も上手くいかない娘に『中身より容姿を優先する世の中が悪い。あんたは悪くない』と吹き込んでいる。

その泥沼から、ダイエットドリンクでようやく抜け出せたヨシエ。
でも、母が作ってくれるようになったダイエットドリンクは私のモノより美味しくて、なんだか体重が増えていくようで…?


愛情じゃなくて、依存で繋がる親子関係。
テレビの前で、お菓子をつまむ太った母娘。そんなよくある光景が怖くなる話!

 

シークレットロマンス

男性会社員×2と女子社員の恋の話?と思いきや物語はどんどんおかしな展開に。
BLかと思ったら凄いオチだった。

女子向け?と思いきや、一番血なまぐさい話かも…。
そんなひねくれ具合も真梨さんらしいと思える一編(笑)

 

初恋

 

14歳の初恋が拗れて怖いことになっていく話。
殺虫剤やら伏線が詳細なのに細部ははっきりしていない所が怖い。
本当は何が起こって、誰が一番悪かったんでしょうか…?

色々考えたくなるラスト。

 

小田原市ランタン街の惨劇

 

飽き飽きしていた彼女から最後のメールを貰った主人公。
これで終わり…と思っていたら職場に弁護士が現れる。

どうやら彼女が自宅で堕胎し、子供を殺した罪に問われているらしい。
知る余地のないことだったが、生々しいメモを読み証人を引き受けることを承諾する。しかし、付きあい始めた時期と妊娠の計算が合わないことに気がつき…。

ボタンの掛け違えのようなイヤミス。
悪意がないように見えてそこそこヒドイ弁護士は、星新一のキャラクターを彷彿とさせます。


ネイルアート

最後の話が一番リアルで一番気持ち悪い。

小説家を夢みて、ライターとして忙しい日々を送っているヒロイン。
とある電機メーカーから、育児サイトの管理人を頼まれる。

給与も良く、楽な仕事に思えたがそこの掲示板は度々炎上していて…。

ヒロインが持つ管理人権限という設定が面白い。
削除権限があったり、書き込みが自演であることが分かったり。
しかし児童虐待をほのめかす書き込みから、ヒロインの身辺が脅かされて…。

ネイルアートのタイトル通り、爪にまつわる話なのですが…怖い!怖いよこれ!
しかも後味悪いよーー!これぞイヤミス…。
じっと自分の爪を見てしまいました。

最後の告白で冒頭の印象がガラッと変わって来るのも面白かった。

 

おわりに

 

気持ち悪いし、怖いんですけど。
たまに覗きたくなるイヤミスの世界。

それは最後のお話で管理人権限に夢中になるヒロインの心理に似ているのかも知れません。怖いものほど、覗き見たいのさ…!?

ではでは、今日はドロドロしたイヤミスがサクッと読みたい!人にはオススメの一冊を紹介させて頂きました。

爽やかで明るい気分になりたい人は、読んじゃいけませんよ絶対に…!

 

イヤミス短篇集 (講談社文庫)

イヤミス短篇集 (講談社文庫)