短い秋が過ぎ、会津の町にまた長い冬がやって来た。
雪の日は視界が濃い霧に包まれ、白い壁の中にいるようだ。
若い頃は冬が嫌いだった。
道路が凍結すれば気軽に出かけられなくなる、なにより寒さにフットワークが鈍る。
休みの日にいろんなお店やデートスポットに出かけることこそが豊かな文化だと信じていた私。
スタバも、オシャレな美術館もない田舎に、劣等感を抱いていたこともある。
今は違う。
夏の間いろんな場所に出かけ、様々な人に会うと少し疲れを感じる年になってきた。
お出かけも楽しいけれど、手作りケーキの焼ける甘い匂いを楽しみながら、暖かい家の中で好きな本を読み、窓の外の白い世界を眺める。
そういう静かな時間もまた、豊かさなのだとようやく分かる年になってきた。
デート、合コン、勉強会。
人と会うこと、学ぶこと。
現実社会の新しい情報を得ることだけに躍起になって、家で過ごすのは無為な時間だと毛嫌いしていた、あの頃の私に伝えたい。
停滞して見える無為な時間も、ホントはとても大事なんだよ、と。
雪解け水が運んでくる養分で、会津の土地はより豊かに育っていく。
同じように白い雪が覆う空白の時間こそが、私の心にも豊かな土壌を育んでくれるのだと信じて。
無為も無益も、静かに楽しみながら過ごしてしまおう。
…だが、静かに過ごすことによって日々蓄積する脂肪。
テメーだけは追放だッ!