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現実と幻想の継ぎ目〜手のひらの幻獣

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こんにちはみどりの小野です。

今週は三崎亜記さんの「手のひらの幻獣」を読みました。

手のひらの幻獣

ファンタジーでありながらリアル。そんな三崎さんならではの小説でした。
主人公は日野原柚月。彼女は様々な生き物を表出することで具現化できる表出者。ちょっと分かりずらい説明ですね。
ライオンや、シマウマをイメージすることでその場に作り出し、自分の姿を消すことの出来る、凄い力の持ち主です。
彼女はその特殊な力を使って動物園などで仕事をしています。
SFやファンタジーに傾いてしまいそうな物語がリアルに感じられるのは、柚月が仕事をする時に確認するマニュアルや法律、国の姿勢などが整然と考えられているからでしょうか。
幻獣という幻想の物語が、法やマニュアルという現実の楔で打ち込まれていて、あり得ない力が身に迫って感じられるのです。
前篇、後編に分かれていて前篇は柚月もまだ若く年上の憧れの人との関係に迷っていて、後編では40を間近に控え幼い者たちを導きながら自分の迷いから解き放たれる様子が描かれています。
「手のひらの幻獣」は柚月が自分の力、親という幻想から解き放たれる物語だと感じました。
力を持つ子供達が親の無理解に苦しみ傷つく様子は痛ましく切ないです。
柚月は大切な人とこれからも二人で生きていけるのでしょうか?
綺麗なエンドですがこの後も気になる、そんな魅力的な物語でした。