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おのにち

おのにちはいつかみたにっち

スノーボード、Green Day、左足のスイッチ。

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ラジオからグリーン・デイのバスケットケースが流れてきて、皿を洗う手が止まった。

懐かしいメロディにあの頃の景色が浮かんできた。
昔聞いた音楽は思い出と密接に結びついていて面白い。


1995年から2005年の10年間、特に最初の5年はシーズン中の休日ほとんど全てをスノーボードに費やしていた。

最初は当時付き合っていた彼氏に誘われて、つき合いで行っただけだった。
一回目はまるで滑れなかった。

私も、始めたばかりの彼氏も、一緒に行った友人たちもみんな生まれたての小鹿のよう。

みんな初心者。
それがスノーボードを始めるきっかけだった。

 

私は小学生の頃から運動が苦手だった。
不器用なこともあったが、一番辛いのがマラソンのような有酸素運動を行うと目の前が白黒してくること。

私はずっと自分のことを体力も根性も無い奴だと思っていた。
こんなに苦しいのになぜみんなは話しながら走れるのか、不思議だった。
私が運動をサボっているせいかも知れない、とこっそり走ったりもしたがすぐフラフラになる始末だった。


真相が分かったのは高校入学時の健康診断。
私は重度の貧血だった。
その時初めてみんなは走っても目の前が白黒したり、息切れで死にそうにならないのだ、という事を知った。

高校になって鉄剤を飲むようになったらマラソンは少し楽になったけれど、運動が苦手という意識は変わらないままだった。

成長期を過ぎたら貧血はすっかり良くなり、立ち仕事をする内に体力もついて逞しくなった。でもその頃もスポーツは嫌いなまま。

学生時代体力が無さ過ぎて、下手すぎてさんざん笑われた記憶がなかなか消えなかったのだ。
今は下手くそでも楽しければいいじゃないか、と思うのだがあの頃はまだ自意識が捨てられなかったんだと思う。

 

私が20歳になった頃、スノーボードはちょうど「流行りはじめ」だった。
みんな下手くそ。出来なくて当たり前。

そんな状況のおかげで、私にもハードルが低く感じられた。

ほんの一歩、皆より早く立てたり曲がれたりしたことが自信に繋がって、私は休みのたびにスキー場に通うようになった。

最初は彼氏や友達と。
その内一人で早朝から通うようになった。
助手席を倒してボードを積んだら誰も乗れなくなる、小さなトゥディで恐る恐る山道を登った。

 

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画像:ぱくたそ/雪が降り積もるゲレンデのリフト

 

朝7時、日が差し始めたばかりのスキー場が好きだった。

リフトもまだ人がまばらで、前の晩に雪が降った日は固く締まったコースの上に薄い粉雪が積もって、柔らかな絨毯のようで。

冬の空気は澄んでいて山頂からは遥か遠くが見える。
風は冷たいけれど日は暖かい。

右足の金具を止めて、軽くジャンプして向きを変える。

スタンスは左足が前。
板の先は斜面から少しだけ浮いている。
足を踏み込む、その一瞬がたまらなく好きだった。

左足の下に見えないスイッチがあるような気がした。
ぐっと踏み込むとスイッチは押され、私を放出してくれる。

いつもそんな気分で滑り出していた。

あの頃スキー場のスピーカ―から流れていたのはいつもメロコア。

 

 

Green Day、LAGWAGON、OFFSPRING。
邦楽だとHi-STANDARDやHUSKING BEEが好きだった。

 

スキー場で流れていた曲を聞くと、てっぺんから滑り出すときのあのワクワクを思い出す。


そんな風に大好きだったスノーボードをやらなくなって10年。
辞めたきっかけは妊娠だった。

子どもが少し大きくなって再開しようと思った頃2人目を妊娠。

今は学校でスキー教室のある子供たちのためにスキーを一緒にやったりする。

スキーはスノーボードに比べたら体力的に楽な気がする。
ストックがあるせいか、スノーボードのように次の日筋肉痛で立てない、となったことはない。

子どもたちはすぐに私よりスキーが上手くなって、もう教えることも無い。

時折、スノーボードのレンタルに目が向いたりする。

でも毎日立ち仕事をしていた若い頃でさえ、シーズン初日の筋肉痛は酷かった。
夕方にはフラフラで帰って死んだように眠った。

あの頃は体力があったからボロボロでも次の日仕事に行けたし、独身だからご飯もお風呂にも入らず好きに眠れた。

デスクワーク続きの今は次の日どころか一週間筋肉痛に苦しみそうだ。
家族への責任があるから、勝手に寝る訳にも怪我をする訳にもいかない。

 

ままならぬものだ、と思うこともある。

でも私のスイッチは今でも日常に潜んでいて時折ワクワクさせてくれる。

知らない駅に降り立った時。
初めての人に会う打ち合わせ。

ブログの公開ボタンを押すときも。

ぐっ、と左足を踏み込むイメージで。
心は新しい世界へ飛び込んでいく。

 

私に宙へ踏み出す感覚を教えてくれたスノーボードも、あの頃に引き戻してくれる音楽も。

今でもかけがえのない思い出である。

 


Green Day - Basket Case [Official Music Video]

バスケットケース、代名詞はHeなんですね。今頃知りました…。