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おのにち

おのにちはいつかみたにっち

夏と花火とぼっちの記憶

生活 生活-家族

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地元の花火大会がだんだん始まる。

家族でよく見に行くのだけれど、子どもが賑やかだったりビールや焼き鳥が美味しすぎたりして花火以外のものに気を取られてしまう。

楽しいけど純粋に花火を楽しんでいるとは言い切れない状況。

今日は、体全体で花火を受け止めた日のお話。


高校を出たばかりの夏、女友達数人でスキー場の花火大会を見に行った。
会場はコースの下で、花火は山の頂上からあがる。

同じ高校の男子もたくさん来ていて、女同士のはずだったのに一人消え、二人消え、と気がつけば一人になってしまった。

会場は込み合っていて座る場所も無く、私はリフト乗り場に座り込みぼやっと花火が上がるのを待っていた。

屋台の辺りでは女友達が盛り上がっていたけれど私は行かなかった。
その頃はなぜか同級生の男子なんて子供っぽいわ、みたいな偏見があったのである(その後私が結婚した相手は同い年だったけど)。

リフトの下から斜面の上を見ると小さな明かりが見えた。
どうやらあそこから花火が上がるらしい。


花火に火をつけるところを見てみたい。

ふとそんなことを思いついた。
友達の車に乗せてきてもらったのでどうせ花火が終わるまでは帰れない。
時間つぶしにちょっと探検してくるのも悪くないかも。

よく来ているスキー場だった。
勝手知ったるコース、でもよく考えたら徒歩で登ったことは無い。

中腹辺りで私はバテバテになった。
サンダル履きにショートパンツ、明らかに登山向きではない服装。

それでもここまで来たんだから、と意地になって登ると山頂付近に黄色と黒のテープが見えた。

この先立ち入り禁止。

よく考えたら当たり前である、危険すぎる。


私はくたびれ果てて斜面に寝転がった。
下には会場の明かり、空には星が出ていた。

やがて花火が始まった。

昔「打ち上げ花火、横から見るか下から見るか」みたいなタイトルの映画があった。映画は見たことがないけれど、真下はあまりお勧めしない。

花火の打ち上げ場所から近すぎると、全景が良く見えないのだ。

映画館で最前列より真ん中あたりが人気なように、ある程度離れた位置の方が花火は見やすいと思う。


スターマイン、ナイアガラ。

やがて地をつんざくような音がして体が震えた。
音が怖くて震えたのではない、音で地面が揺れたのだ。

大きな大きな尺玉。

白い、シンプルな花火。
大きく大きく視界に広がって全てを埋め尽くして。伸びた流線はパチパチと音を立てながら降ってくる。

みぞれのように、白い花のように。

体中に花火が染み込んでくるようだった。

白い白い星を砕いたような光は私の体に落ちてきて…

私は「うあっち!」と逃げ出した。
降ってきたのは星ではなく灰で、洒落にならないくらい熱かった。

 

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花火が上がると子ども達はいつも口を開けて見上げる。

ブルーハワイに染まった舌の色、キラキラした瞳。
大きな大きな尺玉花火が降ってくると口角が上がって笑顔になる。


彼らも昔の私みたいに全身で降る星を受け止めているのだろうか。


たった一人で花火を受け止める日はきっともう来ない。
今の私は心のキャパを家族に分けてしまっているから、あの頃みたいな全身全霊の感動はもう感じられない。
でも子どもの笑顔に白い星が降ってきた日を思い出す。

かき氷はベッタベタ、白いTシャツはフランクフルトのケチャップで染まっている。
まったくもう、と怒りながらも私は笑う。

私の花火の記憶はきっともう更新されない。
あの日を超える素晴しい花火を見たとしても、それを受け入れる心のしなやかさを失ってしまった気がする。

感動に人は慣れてしまう。
最高のご馳走はいつだって初めて食べた時が一番美味しい。

でも毎日書き換えられていく子どもたちにとっては今が一番最高で、「来年もこようね!」って笑う。

彼らの瞳に私は星を見る。

ワガママだし甘えん坊のくせにいっちょまえだし手は掛かるし金も掛かる。
でも彼らといると人生を二度味わっているような気分になる。

 

一人の自由は失ったけど、それなりに幸せです。

 

 


ぶち壊しのおまけ:

釈迦堂川花火大会、という福島県内では有名な花火大会がありまして。
若い頃見に行ったんですわ。

河川敷から花火を眺めるんですが、中州の一番目立つポジションに陣取った浴衣姿のカップルが明らかに繋がってる…。

みんな花火が上がったら上を見る→終わったら中州、と忙しい忙しい。

盛り上がりすぎて結局警察に連行されましたけど、あれもまた彼らにとってはキラキラの花火の記憶なんでしょうか、それとも黒歴史?