おのにち

おのにちはいつかみたにっち

無重力は静謐

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夜の道路が好きである。

町と町の継ぎ目の、峡谷を抜けるような道路が特にいい。
月のない夜、谷に囲まれた2車線の道を走っていると、ガードレールと街灯しか見えなくて、私は今どこにいて、どこに向かうのだろうと心許ない気分になる。

地に足が着いていないような、このまま闇の底に飲み込まれてしまうような。
街灯がオレンジ色のナトリウムランプだったりすると、更に現実から離れていくような、そんな気分になれていい。

 

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ただ真っ暗な山道を走ると神経が疲れるようで、よくガードレールを突っ切って、谷底に落ちる夢を見る。フワッと浮いて、落ちる感覚。

子どもの頃、プールでたくさん泳いだ後もこんな夢をみた。
心地よく泳いでいたのに、突然ガクッとどこかに落ちる。

 

落ちる感覚も、実は好きだったりする。
昔、ブランコの頂点が好きだった。
ぐんぐん漕いで、地面と体が垂直になるくらいのブランコの頂点。
加速の後、後ろに落ちる前にフワッと浮くような感覚があって、その一瞬が一番好きだった。フワッ、は本当に一瞬で後はグゥン、と落ちるからフワッが味わいたくて何度も漕いだ。

遊園地のバイキングも好きだ。
グングン加速をつけて、船が回転して、一瞬止まった感じになる。
あの時のフワッ、が好きだ。
賑やかな音楽さえ聞こえなくなるような、虚空。

フリーフォールも大好きだ。
落ちる落ちる落ちる、その一瞬のフワーーー!
ここまでくるとさすがに怖い。でも怖いと楽しいは結構近い感じがする。
ジェットコースターを蒼白の顔で降りた後、怖かったよとつい笑ってしまう。

 

落ちる時のフワッは無重力感、という奴なんだと思います。
だったら宇宙に行けばずっと大好きなフワッを味わえるのかと言うと…

違うんだろうな、絶対酔いそう。

 フワッはきっと一瞬だから良いんです。
賑やかな公園でも遊園地でも、 フワッ、の一瞬は無音になったような気がします。
どこか違う世界に迷い込んでしまったような感覚。
それは真夜中のナトリウムランプに似ています。

ではお休みなさい、あなたが落ちる夢を見られるように、心を込めて呪っときますね。
バイキング嫌いな人多いよね、ぐふふふふ。

ほーら落ちるよ夜の底へ!