おのにち

おのにちはいつかみたにっち

筋立てのある夢を見る

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オリーブオイルをドバドバかける料理が好きなので出勤前は「ZIP!」を見ている。

最近ユースケ・サンタマリア主演のホームドラマが始まったのだが、その中で夫婦お互いが「夫が浮気している・妻が包丁を振りかざして迫ってくる」夢を見てギクシャクする、という話があり、ほんのちょっと疑問に思った。

夢の基準がイマイチ分からないのだが、現実世界や知っている人物が登場するのが「普通の夢」なのだろうか?

 

それが多数派なのだとしたら、私の夢は多分変だ。

私の夢には現実が出てこない。
知り合いがいないし、知っている場所が舞台でもない。

主人公は「私」なのだが現実の私ではない。
男性だったり子どもだったり犬やドラゴンだったりする。

そういう知らないスキンの内部に私がいたり、あるいは神視点で箱庭を上から眺めていたりする。

子どもの頃から、こうした「現実の登場しない夢」を見ていた。

 

影響を多分に受けたのは5~6歳の頃に読んだレイ・ブラッドベリの短編小説で(私は星新一を愛する早熟な幼稚園児だった)、タイトルが思い出せないのだが自分の夢をDVDのように媒体化して販売、夢を他者と共有できる、人気夢作家のいる世界のお話だった。

その話を読んで物語仕立ての夢に憧れを抱き、自分でも見るようになった…のだが、そのかわりに現実と錯覚するようなリアルな夢を失った。
無意識化にあるはずの夢さえも左右する。子どもの頃の思い込みとは恐ろしいものだ。

 

夢を一番たくさん見ていたのは中高生の頃で、今思えば現実から逃れたい気持ちがあったのだと思う。昼間は本に逃げて、夜は夢に逃げて。

…逃げっぱなしの青春だったがそれで生き延びて今があるのだから、まぁいいか。

 

あの頃よく見ていた夢は、いかにも子どもが考えた物語らしく山場ばかりのファンタジーだった。

主人公が危機に陥り、あわや…という所で目が覚める。

夢の続きが観たくて、次の夜は妄想しながら眠りに着くのだが、また新しい話の山場だけを見せられたりして。

 

ブラッドベリの短編に出てくるドリームメーカーの女の子は、ストーリーテラーの才能があるのだが年若く経験が足りない。
しかし夢作家として成功してしまったことでマネージャー役の母親に押し切られ、学校に行けず遊びも忘れ、ただ夢を見るだけの生活に追い込まれスランプに陥ってしまう。

私の山場だらけの断片的な夢も、物語を組み立てる経験値が足りなかったせいなのだろう。

子どもの頃見た夢で一番印象的だったのが、巨大な塔の一階に閉じ込められていて、出口がないので上を目指す、しかし踊り場毎に別の世界があり、しかも上へ行く毎に世界が拡がっていくから寄り道ばかりでなかなか脱出が叶わない…というBLAME!みたいな夢だった。

しかしなぜ主人公は閉じ込められているのか、この世界を作ったのは誰なのか、という基本設定が曖昧なままなので(初心者がやりがちな罠)いつまで経ってもオチにはたどり着けず、ただ登り続けるだけなのだけれど。

この世界感はけっこう気に入っていて、中学生の頃友達と二人で交換日記ならぬ、交換小説をやっていた。

記憶を無くした主人公が塔の外に出ようと階段を上るのだが踊り場にたどり着くたび森の中だったりマンションの一室だったりして様々な事件に遭遇する、そして物語が一段落するとまた階段に逆戻り、という終わらない物語だった。

その頃私は設定を考えるのが好きで、友達はセリフを書くのが好きだったので、私が階段を上がった世界の状況や事件を拵えてさぁどうなる、という場面でバトンタッチ、という具合で書き進めていた。

分厚い大学ノートに一日数枚づつ、2~3冊は書いた気がする。
その頃私はミステリーとホラーにハマっていたので人がやたらと死にがちで、内臓もはみ出しがちだった。 友達はBLに夢中だったので、カップリングは原則男同士で、肛門の話が多めだった。

なのでファンタジー世界でも起きる事件はユニコーン殺人事件、犯人は聖なる乙女、殺害動機は処女じゃないことをバラされないため、探偵役の王子と司祭はケンカばかりだったのに最後はラブラブエンド、というカオスっぷりだった。

あと犯人が思いつかない時はよく死霊のせいにした。
私が中学生の時書いた推理小説の大半は前半がミステリー、後半はホラーで出来ている。

犯人はだいたい死霊。我ながらヒドイ。

 

あの頃の交換小説は全て焚書にしたつもりだったのだが、最近友達から1冊実家に眠っているかも、なんて おぞましい話を聞いた。
世の中には思い出にしておいた方が良いこともあるのだと、強く思う。

 

最近はあまり夢を見なくなった。

現実に満足しているのか、それとも睡眠不足なのか。
それでも今ならどんなに奇抜な山場が来ても、「犯人は死霊」よりはマシなオチが思いつけそうな気がするので。

たまには来てよね、私の夢よ。

 

飛ぶ夢をしばらく見ない (小学館文庫)

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