職場の人のオススメで、『傲慢と善良』をオーディブルで聴きました。
作者は辻村深月さん。
『鏡の孤城』や『冷たい校舎の時は止まる』は読了中ボロ泣きしました。思春期の感情が突き刺さる、繊細な描写が上手い作家さんです。
でも私が恋愛小説が苦手なせいなのか、どうも『傲慢と善良』は合わなかった…。
いや、物語の登場人物はそれぞれ魅力的だと思うし、内面の描写も本当に見事で共感したり励まされたりするんです。でも…全体の筋がどうも…どうも…!
恋愛小説にこういうツッコミを入れるのも不粋だろ、とは思いながらも、自分のモヤモヤを消化せずにはいられず、このブログを書いています。
めちゃくちゃネタバレですので、未読の方はぜひ、実際の小説を読んでみてから私の感想を読んでください。
物語のあらすじ
前半の主人公は男性の西澤架(ニシザワカケル)。架は30代後半、東京生まれ東京育ち。
良い大学を出て広告代理店に入り、亡き父親が経営していたビールの輸入販売店を引き継いでいます。経済的にも安定しており、車は高級外車、容姿端麗で身なりにも気を使い、女性経験も豊富なモテ男ですが、いざ結婚して身を固めようと思い婚活を始めるとなかなか上手くいきません。過去に付き合っていた100点の彼女とつい相手を比べてしまい、結婚に踏み切れないのです。
そんな中、アプリで知り合い二年も交際する仲となったのが群馬出身のヒロイン、坂庭真美。
大人しく、自己主張が苦手な真美は過去に振った相手からのストーカー行為に悩まされるようになり、その事件をきっかけに二人は婚約。
結婚式場も予約し、真美は架の仕事を手伝うために現在の職場を退職します。
しかし、送別会の翌日から彼女は行方不明に。携帯電話も電源が切られています。
真美の失踪の心当たりがない架は、彼女がストーカーに拐われたのでは思い、警察に相談。しかし事件性がないとあしらわれてしまいます。
それでも彼女を心配する架は、真美の過去の人間関係から、彼女の行き先を調べはじめるのですが…。
胸糞その①:ストーカーがバレバレすぎる
はい、いきなりネタバレすると真美の失踪にストーカーは関係ありません。それどころかそもそもストーカーは存在していません。
まず、ここが私のモヤモヤポイント①です。
だってこの小説、恋愛ミステリーを謳ってるんですもの…。
真美の失踪がストーカーによるものだ、と本気で心配しているのは架と真美の家族ぐらいではないのでしょうか。
終盤で架の女友達が『ストーカーなんて実在するわけないじゃん!』と突っ込むのですが私も冒頭からバレバレすぎじゃね!?と思ってました。
だって、真美曰く『群馬時代に婚活で知り合い、断っただけの男が東京の自分の部屋に侵入し、電気を付けて立っている様子を外から見てしまった』んですよ!?
まず真美が住んでいる場所をどうやって突き止めたの?どうやって侵入したの?
しかも真美の大事なアクセサリーまでストーカーに盗まれたようだ、と真美は語っています。
侵入&窃盗っすよ?
相手の人が可哀想だから警察には言いたくない、じゃねーよ真美!って架の女友達が突っ込んでますがその通りです。なぜ真美はすごく良い子だから、で済ませるんだ架!
警察も架の話を聞いて、事件性はないと判断します。そりゃそうですよね…。
しかし架だけは真美を真剣に心配し、彼女を探すことになります。
ちなみに終盤架にストーカーは嘘でしょ、ってバラす架の女友達(既婚・自称架の親友)、めちゃくちゃ胸糞悪いです…。真美の嘘やインスタを笑う(確かに痛い)けど、友達の彼女のインスタをわざわざ眺めて友達に言っちゃう根性の悪さの方がよっぽどだなあと思います。
そもそも嫌だよね、彼氏の親友を語る女友達(既婚)!ぜったいその発言、架のためを思ってじゃなくて単なる嫉妬だよねぇ!?
私は親友だから、って幅を利かせて自分が男友達の彼女をジャッジできる立場だと思い込んでる女、マジ最悪。そもそも女友達を彼女に紹介すんなよ架…人付き合いが得意なタイプなら上手く行くかも知れないけど、真美はぜったい違うじゃん!わかるじゃん!
まぁあんまり真美の気持ちとか、この頃の架は深く考えてなかったって事なんでしょうね…。
胸糞その②:個人情報どうなってるん?
さて、私のモヤモヤポイントその②、個人情報どうなってるん?問題です。
真美を心配した架は、真美がストーカーに誘拐された前提で、真美が群馬で見合いをした相手や、群馬時代に同じ職場だった友人から話を聞きに行くのですが、『ストーカーに拐われて行方不明』ってかなりの醜聞ですよね?
それ堂々と言って歩くんだ…と、当初からストーカーを疑ってかかってた私は思ってしまいます。
つーか、最初興信所に頼むって言った架を外聞が悪いから、と止めた両親も薄々は察してたんじゃないかと思います。
だってめちゃくちゃ過保護な親で、真美が群馬にいた頃は男性と一緒のグループ旅行は禁止、合コンで12時を回るのも禁止、と本当に結婚して欲しいのか!?と思うくらいガチガチに30過ぎの娘を束縛してたわけですから。
そんな厳格な家庭環境で、お見合い相手にストーカーされる程深い関係を築ける訳がない…と察していたからこその、興信所禁止だったんじゃないのかなぁ、と私は思います。
とっても素直な架くん(しかし30後半、社長なのにずいぶんピュアだなおい)は、真美が見合い相手を紹介してもらった地元議員の奥さんや二人の見合い相手、真美が大学卒業後に働いていた県庁臨時時代の友人などに話を聞いていきますが、結局浮き彫りになるのは過去の真美や、見合い相手や友人たちの心情だけで、今の真美がどこにいるのかは分からないままです。
結局真美の居場所が分からないまま、数ヶ月が経過。刻々と結婚式場の無料キャンセル期間は迫っていきます。なんてこった…。
胸糞その③:キャンセル料は誰が持つ?
さて、私にとっての最大の胸糞ポイントです。
結局、真美が語るストーカー被害は架から結婚の一言を引き出すための嘘でした。
その嘘を楽しい送別会の後にばったり出会ってしまった架の女友達からあっさりと見破られた真美。しかもその胸糞の悪い女友達から『あなたなんて架にとっては70点の彼女なんだからね』と酷い中傷を受けてしまいます。ショックを受け、家に帰り何も知らずにスヤスヤ眠る架の首を絞めてやろうか、刺してやろうかぐらいまで思い詰める真美。
でもただシクシク泣くばかりで何もできません。
心の中では気づいて!察して!架くん!と叫んでいますが架は何も気がつかずスヤスヤ眠り、朝は朝で真美の事を起こさずにサクッと仕事に行ってしまいます。
まぁ、そうだよな…ここはいっそ刺しとけ真美。察してちゃんは良くないぞ。
けれど刺せない、言えない真美ちゃんはシクシク泣きながら実家に帰ります。でも駅に着いた途端親から電話が。内容は真美の結婚式の参列者に関する事。それを聞いて真美は実家に帰れなくなってしまいます。真美がもし今家に帰って、あった事を語ったら結婚が破談になってしまうだろうから。
まだ架に未練がある真美にとって、それは決して良策ではありませんでした。
かといって架のいる東京にも今は戻りたくない。
そんな真美の脳裏をよぎったのは一番最初のお見合い相手が語っていた、住み込みの震災復興ボランティアの話でした。
彼が語っていた団体名を検索し、今すぐ住み込みで手伝いたいと頼みこみ、真美は単身仙台へ。
そこで津波で流された写真を洗浄し、デジタル保存するボランティアに勤しんだり、住宅地図を作るアルバイトをしたり…と海岸沿いの美しい景色の中で体を動かす事で、どんどん健全な心と体を取り戻していきます。
良い話です。
ただ、真美の携帯は家を出てからずっと誰かと連絡を取るのが怖くて電源を切ったままです。
70点と評価されて傷ついた、嘘を見破られて不安になった…のは分かりますが、30過ぎた良い大人が家族や婚約者に、何ヶ月も心配を掛けるのはどうなんでしょう。
しかも真美が架と顔を合わせるのは、結婚式の予定日から2〜3か月を切った頃です。
キャンセル料が発生する頃です。
架に会ってようやく『キャンセルして』じゃねぇよ真美!その金誰が払うんだよ!?
なんか…恋愛小説にこういう事言うのはホント無粋だとは思うんですけど。
そこそこ高級な式場で、親族や友人を呼ぶ予定だったようなので300万くらいは掛かるだろうし、そのキャンセル料が数ヶ月前なら30%くらいかな?
真美、自分で払えよな!?
つーか自分でキャンセル入れとけや!
そう言うのを自分で処理するのが大人だと、自立だと思います私は。
あと真美は半年くらい仙台でボランティアしてた計算になると思うんですけど、その間東京のアパート借りたままです。
これは物語の展開上仕方ないんだけど、家賃無駄じゃねぇ…?
せめて電気と水道は止めておいて欲しい、でも携帯の電源入れてないから何もしてないっすよね真美。もうちょっと金を大事にしろ。群馬時代にたっぷりNISAとかに注ぎ込んでたのかも知れないけど。
とにかく結婚式場のキャンセル料が発生する前に連絡をよこさない女とは復縁できないな、と私だったら思います。
ただ真美は架くんのことめちゃくちゃ好きだし、だいぶ自分の意思もしっかりしたようだし、これから良い奥さんになるのかも知れませんね。良い奥さんになることが自立と呼べるのかはともかく。
先が気になる、とても面白い小説だった事は確かです。
でもツッコミどころが満載でモヤモヤしながら一人で盛り上がってしまいました。
最後に、この作品に対して私が一番強く思った事を一言。
キャンセル料は自分で払え真美
















