タカラ~ムさんという人の「ガタガタ書評ブログ」というブログが面白くて、最近よくチェックしている。
説明しすぎない書評スタイルが素敵だし、なにより紹介されている本がみんな好みだ。
先日紹介されていた、「きっとあなたは、あの本が好き。連想でつながる読書ガイド」と言う本も凄く面白そうだった。
早速Amazonで解説を見たら『共通点は読んで面白かったこと、という一点のみ』と言う一言にやられた。
ジャンル問わず、読んで面白かった本だけを書くブックガイドが書きたくなってしまった。
という訳で今日は「読んで面白かった本」の紹介。
ちょっと癖あり、でも面白い!と思った本のセレクト。
一冊でもあなたの興味を惹く本があったら幸いです。
ドキドキ、ワクワクがあるSF
面白い、で一番最初に浮かんだのが「シャングリ・ラ」。
面白い、という言葉には色んな意味があると思うけれど、荒唐無稽で子供のように純粋な「面白さ」がある本。
読んでいてとにかくワクワクした。
近未来、森林化した東京が舞台のSF小説。
さすがに戦車も壊せるブーメランはないだろ、と思ったし色々無理に満ち溢れてるけど。
いくつもの無理をぶっ飛ばして、こんなに長い小説なのに書いてる人が一番楽しいんだろうな、と思わせる勢いが池上永一にはある。
考えるな、感じろ本。
この本が面白かったら「テンペスト」もオススメ。
テンペストの方が前半はしっかりしている…かも。多分。
アニメ版は見てないんだけど、評価はどうだったのだろうか?
文章の勢いで読ませる本だと思うので、ストーリーの筋やきちんとしたラストが求められるアニメとして見るには辛い気がする。
でも村田 蓮爾さんの描いたヒロインはかわいいな…。
もう1冊は評価の別れる作品。
フランク・シェッツィングのSF小説「LIMIT」。
2025年、化石燃料は終焉を迎えた時代。
大富豪オルレイは新素材で宇宙エレベーターを建造。月面にホテルまで作ってしまう。
しかし肝心のお披露目パーティで事件が起こる…という物語。
この本は設定はすごく面白いのだけれど、登場人物が多く、場面切り替えも多いので読みずらい。しかも前半は盛り上がりに欠けるので、誰かに感情移入できないと(また分かりにくいキャラばっかりなんだ、これが)辛いかもしれない。
なかなか長く、(全4巻)1、2巻はほとんどプロローグである。
こう書くと結構苦行本だが、私はインターネット探偵ジェリコのパートが面白かったのでそこを足掛かりに読んだ。
何より設定が面白いし、ラストは盛り上がる。
人物描写が物足りないと言う人も多く、それは確かにその通りなのだがラストのヒロインの寂寥感は月面の景色と共に心に残っている。
私としては宇宙エレベーター、それから月面ホテルと言う設定が細かく書き込まれているだけでワクワクしたし、面白かった。
同じ作者の海洋冒険小説「深海のyrr」もやっぱり長いのだが面白い。
キャラクターと勢いで読ませる「シャングリ・ラ」、設定と筋立てで読ませる「LIMIT」、といった感じだろうか。
どちらも極端で偏っているけれど、そうした読み難さも含めて面白い本だと思っている。
英国紳士とミステリー
今度はガラッと変わって、ミステリなのに謎よりもキャラクターが魅力的で面白い名作ミステリ小説を。
ドロシー・L・セイヤーズ の「学寮祭の夜」。
- 作者: ドロシー・L.セイヤーズ,Dorothy L. Sayers,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2001/08
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 6回
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セイヤーズは、アガサ・クリスティと並ぶ英国女性推理家と言われている人。
英国貴族探偵、ピーター・ウィムジイ卿と執事のバンター、ヒロインハリエットは未だに大好きなキャラクター。
ピーター卿ものの長篇シリーズは全11冊。私はこの作品と「忙しい蜜月旅行」が大好きだ。
「学寮祭の夜」は、母校の学寮祭に出席したハリエットが、匿名の中傷文事件を内密に調査することになる…という主人公のピーター卿があまり登場しないミステリ。
メインの謎は匿名の中傷文の犯人探し、と割と地味なお話。
でも謎解き部分より面白いのは愛情と自立に揺れるハリエットがピーター卿からのプロポーズにどう答えるか、という恋愛パート。
大学の女性たちもみんないろいろ拗らせていて面白い。
大学に通うような高学歴の女性も、職業婦人も珍しい時代(1930年代)に書かれた英国の物語なのに彼女たちの悩みや考えが現代でも通用しそうな所は面白いのか怖いのか。
ミステリ部分よりキャラクターの心情に惹かれてしまう作品。
紅茶やお菓子やドレス、川でボート遊び、なんて細部も素敵だし。
ラストの犯人の慟哭、ピーター卿の言葉がミステリというものへの痛烈な批判に聞こえるところも、時代背景を考えたら凄いと思った。
セイヤーズの英国貴族世界は凄くそそられるのだけれど、読み難そう、と思う人にはP・G・ウッドハウスの「ジーヴス」シリーズのコミカライズ、「プリーズ、ジーヴス」がオススメ。
- 作者: 勝田文,P.G.Wodehouse,森村たまき
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2009/03/05
- メディア: コミック
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私はこのマンガの続きが読みたくて、ウッドハウスにハマってしまった。
「ジーヴス」シリーズは原作も読みやすいのでオススメである。
- 作者: P.G.ウッドハウス,Pelham Grenville Wodehouse,森村たまき
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2005/02
- メディア: 単行本
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同じく英国貴族のマンガだったら、坂田靖子さんの「バジル氏の優雅な生活」も面白い。
坂田靖子さんのマンガはどこか影があって、霧の立ち込めるロンドンの雰囲気にぴったりだと思っている。
ワクワクするファンタジー
ファンタジー小説で、とにかく長いけど面白いぞ⁉と思ったのはジョージ・R・R・マーティンの「氷と炎の歌」シリーズ。
「ゲーム・オブ・スローンズ」というタイトルでドラマ化されているのでそちらを見たことのある人も多いかもしれない。
中世イギリスや薔薇戦争をモチーフにした架空戦記であり、多彩なキャラクターが織りなす群像劇でもある。
- 作者: ジョージ・R.R.マーティン,George R.R. Martin,岡部宏之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 68回
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このシリーズはとにかく長い。分厚い。
現在第5部まで出ているが終わる気がしない。
7部で完結する予定らしいが、読んでる側からしたらまじか、である。
本当にあと2部で終われるのかこのシリーズ!
最終巻は全5巻、とかになりそうで怖いぞ…。
長い長い分厚い物語なのに、この本はとても面白い。
読みだすと止まらなくなる。
それは多分キャラクターが一人一人個性的でイキイキしているから。
登場人物がとにかく多く、メインのスターク家の子供たちでさえ6人もいる。(もちろん他の家もたくさん出てくる)
その上視点がコロコロ切り替わるが、混乱せずに読めるのは彼らがみな個性的なおかげだろう。
ラニスター家の小人ティリオンも、ドラゴンの母デナーリスも魅力的だけれど私が一番好きなのはスターク家の私生児ジョン・スノウと、彼が暮らす壁の向うの異形と戦う冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)たちの砦。
寒さに凍え、禁欲的な暮らしを続ける彼らの飢えがすごくリアルに伝わってくる。一杯のスープでさえすごく美味しそうに、貴重に感じられる。
彼らの住まいや、厳格なルールも詳細に描かれていて、このパートだけで一編の物語が出来上がりそう。
もっとも、「氷と炎の歌」は全てがそんな風に「濃すぎる」断片で組み上げられているのだけれど。長くなるのも致しかたないか。
「氷と炎の歌」の面白さは詳細に組み上げられた世界観と、キャラクターの個性。
それから目に浮かんでくるような詳細な情景描写。
舞台が目に浮かんでくるような素敵なファンタジーというと、何度も紹介している「図書館の魔女」だろうか。
とにかく巨大な塔の図書館が魅力的。
石畳の庭を歩いていて、音から地下通路を見つける…なんてくだりも絵が浮かんでくるよう。
塔、というのはやはり魅力的な舞台で荻原規子さんのファンタジー「西の善き魔女」でもヒロイン一家は辺境の地の塔の家、天文台に暮らしている。
ラノベ風の軽く明るい作品だが、辺境の地の少し寂しい暮らしの情景がとてもいい。
さて、面白い!だけでつらつら挙げていったらなんだかまとまりのない品ぞろえになってしまった。
改めて思い返すと私にとっての「面白い本」はどれも文章だけで情景が浮かんでくる、そんな個性的な世界観があり純粋にワクワクする物語ばかりだった。
「カラマーゾフの兄弟」や水村美苗さんの「本格小説」、
さて、あなたにとっての「面白い本」はどんな本だろう?
純粋にストーリーの面白さか、好奇心を満たしてくれるものか。
面白い、といえば笑ってしまうような楽しい本もアリかも。
ノンフィクションや専門書中心の品揃えになる人もいるだろう。
誰かの「面白い」は面白いな、と思った今日の小野です。