最果タヒさんの「君の言い訳は最高の芸術」を読んだ。
とても素敵な本だった。
短いエッセイ集なのだけれど、何度も何度も読み返したくなるような、ふとした瞬間に思い起こされるような、そんな一冊。
タヒさんの名前を知ったのは、同じはてなブロガーの若布酒まちゃひこさんから。
彼がよくタヒ、タヒと呟いていたからだと思う。
はてなブログには最果タヒがいる!
そんな風にまちゃひこさんが言っていて、今この本を読み終わった私も同じ気持ち。
タヒさんと同じ時代に生きて、同じはてなで書いていることが嬉しい、誇らしい。
口笛を吹きたくなるような楽しさです。
世界の温度を変える言葉
この本はタヒさんのいろんな気持ちが描かれたエッセイ集。
本を読んで最初に思った事は、タヒさんは私とは違うということ。
友達がいなくてもいいし、寂しさも平気。
そんな言葉をごく普通に紡ぐ。
強がるでもなく誰かを貶めるでもなく。
私はこうだよ、と少し違う世界の見方がとても自然に書かれている。
私と違うタヒさんは、とても素直にのびのびと手を伸ばすように言葉を紡ぐから、読んでいて楽しくなってくる。
ちょっと違っていてもいいんだ、それでも世界は楽しいんだ、と気持ちが楽になってくる。
この本を少女の頃の私に届けたかったなと思う。
違うことを恐れていた、違うことにもがいていたあの日の私に。
あの日の私と今の私は繋がっているから、今の私が癒されることにもきっと意味はあるのだけれど。
できたら私の代わりに、人と違う自分が嫌いな若い人にこそ読んで欲しい。
あなたが少し救われたなら、あの日の私も報われるから。
私が子供の頃、学校と言う小さな世界には目に見えない基準線があった気がする。
同じテレビを見て、同じ本を読んで、同じ服を着て。
そこからはみ出した人は、どんなにひっそり暮らしていても気持ち悪いとかうざいとか冷たい言葉で排除される。ひどいときには学校に来るな、死ねとまで言われる。
かつて私は転校生という異物だった。
目立たないように気に障らないように、地味にひそかに暮らしていたのに、それでも「むかつく」とか「うざい」とかいう人がいた。
私はあなたに話しかけないし、迷惑もかけない。接点一つ持たないようにしているのに、なんで?
あの頃はそう思っていた。
今思うとあれは私が分からないから気持ち悪い、排除したい、という彼女たちの防衛本能だったのかもしれない。
異質なものは怖い、気持ち悪い。目の届く場所に置きたくない。
だから白血球のように異物を排除しようとする。
それは花粉症と同じ、過剰なアレルギー反応なのかもしれないと大人になった私は思う。
タヒさんの言葉はヒスタミンみたいに、排除される痛みや異なることへの怯えを和らげてくれる。若い人に読んでほしいと思ったのは、この本のそういう所。
タヒさんの本を読んでいると、「わかりあえない」という言葉が浮かんでくる。
あなたと私は違うから、私はあなたの全てなど分からない。
でもわかりあえなくても、手を繋がなくてもいい、と思える。
あなたと私は違うけれど、あなたはとても綺麗だから、あなたの言葉は夜を小さく照らすから、私はあなたのことが好きだ。
違うけれども好きな人。
はてなブログには私が一生紡がないような言葉を書く人がたくさんいる。
でも違うから嫌い、じゃない。違うから面白い。輝いて見える。
世界は撒き散らかされた金平糖みたいだと思う。
丸いひと、尖ったひと、ピンクのひとみどりのひと。
中にはチョコレートやミンティアだって混ざっているかもしれない。
黒々光るかりんとう(たまに本物もあるかも)まで混ざった、はてな銀河で私は書いている。タヒさんと、同じ銀河で。
違うことは、楽しい嬉しい。そんなことを教えてくれる一冊です。
なお最後に自慢させていただくと、この本はタヒさんのサイン本なのです!(はてなブログのインタビュー記事のプレゼント商品。見事当選しました)うふふ!
本当に地球を、心を優しく柔らかくしてくれるような温度の素敵な本でした。
きっと何度も、読み返すだろうと思います。