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おのにち

おのにちはいつかみたにっち

FRINGEフリンジ~結婚、子供のコスパを考える人達へのアンサー

社会

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ちょっと前に、はてな匿名ダイアリーにこんな記事が投稿されて注目を集めていた。

 

anond.hatelabo.jp

 

子供を持つこと、結婚すること。

 

私達の親の世代では当たり前だったことが、現代の様々な事情のなかで扱いが変わってきている。婚姻届も、出生届も年々減少している。

 

記事を書いた増田は自分たちが子供を作る気がない理由をこんな風に書いている。

 

子供にかかる費用半端ない。そしてお金をかけたからといってそれが返ってくるわけではない。

プロゴルファーにでも育てあげればリターンも大きいのだろうが、大抵は自分と同等の年収時代を考えると同等以下になる可能性も高い)になってしまうだけで、リターンはほとんどないだろう。挙句子供は親がコントロールできるものではないから、いつ犯罪を犯すか、いつ事故を起こすか、いつグレるか、ずっと心配する必要がある。高いくせにリスクが大きすぎると思う。

時間を年単位で取られ、莫大な費用もかかる子供は、人生で一番高い買い物だと思う。

それに価値を見いだす人がいるのももちろん理解できるけど、買い物しない人を「人じゃない」みたいな扱いするのはやめてほしい。私たちコストパフォーマンスを考え、子供を作らない選択をしているだけだ。

 

 

リスク、リターン、コスパ、高い買い物。

どれも人間を語る言葉ではない気がして違和感を覚えたのだけれど、その一方で「その通り、子供を産めという人たちは感情論だけで語る」と言うような意見もあって、考えさせられた。

 

感情論以外で、子供を産むことのメリットって何だろう。そもそも子供にリターンを求めていいのか?

損得じゃない、コスパじゃないっていう奴は何なのかね?

 

何なのかね?の答えをずっと考えていた。

 

そしてつい最近、本当に今頃(二年前に完結した作品だ)海外ドラマ「FRINGE(フリンジ)」の最終回を見て。


ああこれが感情を、情動を切り離して社会を合理的に考えようとしている人達へのアンサーなのだ、と思った。

 

ドラマ「FRINGE」について

 

FRINGE / フリンジ 〈ファースト・シーズン〉セット1 [DVD]

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フリンジは二〇〇八年から二〇一三年、六年に渡って放送された全百話のドラマだ。

制作総指揮はJ.Jエイブラムス。
「LOST」も面白かった(ラストはともかく)。
「アルマゲドン」や最近では今年公開予定の『スター・ウォーズep7』の監督も務めている。


海外ドラマは長すぎて途中で挫折することが多いのだけれど「フリンジ」はとうとう最後まで観た。

 

旅客機627便の乗員・乗客全員の肉体が溶け落ちるという奇怪な事件が起こった。 FBIボストン支局の女性捜査官オリビア・ダナムは、フリンジ・サイエンスの天才科学者のウォルター・ビショップ博士、そして彼の息子でIQ190の天才というピーターと共にこの謎に取り組む。 やがて、彼らは今回の事件は世界中で起きている一連の不可解な現象「パターン」の一端であることを知る。 国土安全保障省のフィリップ・ブロイルズ捜査官の指揮下に編成されたオリビア、ウォルター、ピーターらフリンジ・チームは、その後も次々に起きる「パターン」を調査することになる。 やがてオリビアは「パターン」の背後にある驚愕の事実、「もうひとつの世界」の存在を知る。そして、その世界との戦いが間近に迫っていることと、それにはウォルター、ピーター、そしてオリビア自身が深く関わっていることも..

 

この先物語について深く言及しています、ネタバレ注意!

  

フリンジの主人公はFBIの女性捜査官オリビア。
彼女は「パターン」とよばれる不可思議な事件を解決するためにフリンジサイエンス(非主流科学)の専門家ウォルター・ビショップ博士を訪ねる。
しかし彼は過去に事件を起こし精神病院の隔離病棟に入っていた。

彼を外に出すには家族の同意が必要だと言われ、オリビアはウォルターのただ一人の家族、息子のピーターを探す羽目になる。

アインシュタインの後継者と言われるほどの天才でありながら奇行の多いウォルター、冷静沈着だが頑なな所もあるオリビア。マルチリンガルの天才だが父と確執があり裏社会で暮らしていたピーター。

三人は協力して不可解な現象を解決していく。そのうちに、もう一つの世界の存在と二つの世界に迫る危機が明らかになっていく…という物語。

 

最初は「Xファイル」のように1話完結の超常現象を紐解く物語なのだけれどそのうちにそれらの超常現象が彼らと深く結びついていることが分かってくる。

人知を超えた存在や、もう一つの世界が登場する壮大なSFなのだけれど、主軸はシンプルで、ウォルターとピーター、不器用な父子の物語だった。

途中少し中だるみ気味だったりパロディだったりする部分もあるのだけれど、前半は少しづつ見えてくる謎を追いかける展開にワクワクし、後半は人間味豊かなそれぞれのキャラクターたちに肩入れしてつい涙してしまった。

全百話、という長さなのでなかなかお勧めしずらいのだけれど完結したいまならDVDも安く借りられると思う。

何よりおじさん(おじいさん?ウォルターの可愛さったら!)とおばさん(ニーナ・シャープ役のブレア・ブラウンは素晴らしい!)が魅力的だった。皺もあるし体系も年相応に見えるのに二人は本当に愛おしく美しかった。

美男美女だけじゃなく人間味のある演技を見せてくれる大人が登場するドラマは本当に楽しい。

 

フリンジで描かれた親とは何か、という答え

 

FRINGE/フリンジ<ファイナル>セット1(3枚組) [DVD]

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フリンジのファイナルシーズンは人が生きる理由、愛情や優しさを大切にする理由、そして正に家族とは、親とは何なのかがテーマだった。
様々な事件を解決して行く彼らだったが、最終巻シーズン5、ついに強大な敵に世界は奪われそうになる。
最後の敵は人間から感情を奪い、代わりに知性や特殊能力を強化した人類のハイブリッド。

人間を超えた、神のような視点を手に入れた彼らは人類は増えすぎた、感情は不要、と偏ったディストピア世界を作り上げようと世界を侵略しにやって来る。

 

強い敵への対抗策は結局主人公オリビアが語るどんな過酷な状況にあっても忘れてはならない「思いやり」や「愛情」だった。

陳腐かもしれないけれど、ターミネーターと同じようにそれが人間と機械を分ける境なのだ。

ハイブリッドである敵も、彼らと同じような知性を持ち合わせながら世界を愛し不条理な行動をとるウォルター達にかき乱され、影響を受ける。

天才科学者であり、かつては自分の事を神のように思い世界を変える事もそのために払われる犠牲も気にしていなかったウォルター。

しかし彼は息子への愛、という楔で人間らしい心を手に入れる。

父親が息子に贈る無償の愛情。

ウォルターは誰よりも世界を愛していた。涙を流し、怯え、怖がりながらもそれでも息子の未来のためにすべてを手放す決意をする。

彼が何より大切にしていた心の支えは最後息子へと贈られる。

 

何一つとしてリターンはなかった。

世界は変わり、争いはなかったことになり、父親は忘れられる。

物語はそれで終わる。

 

リスクとリターンと人の感情

  

増田の記事を読んだ時、私はまず心と体を切り離して考える、ということに違和感を覚えた。

リスク、リターン、コスパ。掛けたお金、帰って来るもの。

それからコメントにあった損得じゃない、コスパじゃない物。

 

コスパ、ってなんだろう?
例えば時間を確認するためならカシオの千円の腕時計で充分だ。コスパ最高。
でも世の中にはフランク・ミュラーの腕時計を買う人もいる。

両者の境目は何だろう?分けるキーワードは価値観、だと思う。
私達は結局自分を幸せにするために生きている、と思う。

勿論他者や世界の幸せを願う気持ちもある。
でもそれは結局見ている自分の幸せのためなんじゃないか、と私は時々エゴイスティックに思う。

子供の伝記に描かれたガンジーやナイチンゲールは美しすぎる。

勿論偉大な人であることは間違いない。

でもガンジーは晩年裸の女性と添い寝したし、ナイチンゲールは愛情だけじゃなく衛生面の知識で兵士を救った。

世界を変える人は愛情や優しさだけでそれを成し遂げるのではない。勿論それは大切な人間の感情だ。でも犠牲的な気持ちだけでは世界を変えるほどのエネルギーは得られない。

結局楽しいのだ、それが自分の幸せなのだ。

フランク・ミュラーを買う人は時計そのものが貴重なのではない。それをつけている自分が誇らしく幸せなのだ。

リスク、リターン、コスパを語る人たちはその合理性を追求する姿勢が幸せなんだと思う。


私たちは自分の精神、というフィルターを通してしか世界と向き合えない。
神のような視点で、思い入れせず冷静に俯瞰で世界を見るのは難しい。
ゲームだって、コスパ抜きで持参金付きのお嬢様より一緒に旅をしてきた幼馴染の女の子を選んでしまったりする。(私はフローラ派だったけど。ごめんビアンカ!)
公平でいようと思っても誰もが何かしらの思い込みや偏見に縛られている。

そんなことない、私は自由だ、って思う?
たとえば私は虫が食べられない。これだって違う場所では偏見であり思い込みだ。
だから世界はいつも紛糾するしはてなだって炎上する。

 

結局コスパ最高さんと感情論さんの価値観は相容れない。

 

答えは出てしまったけど、とりあえず感情論で「何なのかね?」の答えを考えてみることにした。

 

子供は「世界の窓」

 

 

フリンジの物語には「もう一つの世界」が登場する。
同じ人間、同じ場所に見えるけれど少しづつ異なる、パラレルワールドのような世界だ。
ウォルターは窓からもう一つの世界の息子を覗く。

オリビアも違う世界の自分を知る。明るくて積極的なもう一人の自分を。

 

時折子供はパラレルワールドみたいなもんなんじゃないか、と思う。

一つの性を、一つの人生を生きる私がもしかしたら得られたのかも知れない違う世界。

勿論パラレルワールドの向うにいる人は自分によく似ているけれど違う人間だ。

価値観も違うし、敵対することもある。

私達に出来るのは彼らに自分よりも幸せな人生を送ってほしい、と願い助言するだけだ。

かなわなかった夢を彼らに背負わせたり、過剰に干渉するのは間違っている。

へその緒を切った瞬間から、彼らは私とは違う人間になったのだ。

親はつい自分の視点でこれがいい、あれは良くないとレッテル付けしたくなるけれど最終的に法に反していない限りは彼ら自身の決断を支持してやるしかないのだ。

 

私達は一時的に子供を眺めることを許されてもう一つの人生を見せてもらう幸運に預かっただけだ。

子供は別の人間だからカーテンはいつも開いているわけじゃないし、親と言う言葉を特権と勘違いして無理に開いてはいけない。

だから思春期が来たらお風呂は別に入るしベッドの下のエロ本は暴かない。

家族の間でもプライバシーは存在する。

自分がやられて嫌だと思うようなことは子供にもしてはいけない。

 

子供たちの運動会や発表会、スポーツの試合を見るたびに私はいつも泣きたくなる。

彼らはいつも少しずつ努力していて進化している。

自分にはどうしても厳しくなってしまう。努力が必ず報われると思うな、なんて悲観的な考え方をしてしまう。

でも子供のことはもう少し客観的に見られる。

全体ではなく、去年、さらに昔の彼らと重ね合わせてみる。

そうすると少しずつでも進化している、変わっていることが分かる。

それだけで努力はやっぱり報われるのだ、私がしてきたことは無駄ではないのだと思える。

 

結局は自分の幸せの話だ。

本人が幸せならもうひとつの人生なんていらない。

たとえ不幸でも本や映画やアニメがもう一つの人生を見せてくれる。

子供は幸せの小さな窓を開いてくれるだけだ。

覗けるときも、閉ざされてしまう日もある。子供がくれるのは時折心を震わせるほんの小さな幸せだけだ。

結局お金や見返りなんて期待できない。思い通りになんてならない。

 

今が幸せで、何不自由なく満足ならそれでいいのかも知れない。

 

子供は人生で一番高い買い物

 

最後にこの言葉にだけは同調せざるを得ない。

食費や学費、掛かる費用の問題ではない。子供を授かる、ということ自体が希少なのだ。

厳密にいえば高い、ではなく一番手に入れ難い物、なのだと思う。

私は三年不妊治療に費やした。

 

子供を好きな人も嫌いな人もいる。

欲しくても得られない人もいる。

子供は人生で一番高い物ではないけれど、希少な物だとは思う。

得るも得ないも自由だ。

でもコスパじゃなく、「自分の幸せのために」得たいのだ、得ないのだ。

出来ればそう言って欲しいと思う。

 

最後に

 

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

 

 

子供や、家族のいる幸せな映画やドラマが好きでいつも泣かされているのだけれど本当に憧れる理想の人生は少し違う。
私が憧れているのはヘンリー・ダーガーだ。

彼は掃除夫などの仕事をしながら一生をかけて創作をした。

でもその膨大な作品群を画壇や文壇に向けて発表しなかったばかりか、 誰にも見せようとしなかった。

 彼は自分だけの王国を創り、それだけで死んでいった。

彼が幸せだったかどうか、本当の事はわからない。

でも誰にも見せない自分だけの閉じた世界に没頭できる、1万5千 ページもの小説を書ける。

自分の精神世界に安住の地がある。

人生は本当はそれだけでいいのかもしれない。

でも私はそんなに強くなれなくて、だから家族が欲しかったんだと思う。

自分の豊かな帝国を持つ人はそれだけで幸せなのです。

あなたが一番大切な物を、心に抱いていてください。

それが本当にリスクリターンコスパならそれでいい。
でも節約は何のためなのか、その先を(子供だけじゃなく、人生のことを)少しだけ、考えてみて下さい。