おのにち

おのにちはいつかみたにっち

ウエストメジャーの悪魔

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Xデーまであと一か月。
もうすぐ、あの日がやって来る。

来たるべき戦いに備えて私は今日から禁酒することにした。
つまみはもちろん、おやつも禁止。
職場のトイレは今日から三階のものを使用。
私は一階在住なので、一日数回の階段上り、という負荷がかかることになる。

慣れてきて、スマホを見ながら回せるようになったフラフープも一日30分。
最近はフラフープしながらTwitterの返信くらいお手の物である。

ただ視界が常に揺れているので、誤字脱字率はめっちゃ高い。
今度私が誤字ったら、コイツ回してるんだな…と察してほしい。

さて、そんな日本古来のお察し文化はともかくとして。
私が何に備えているのか?という話である。

来る…きっと来る、どころじゃない。もう日程は決まっているのである。

恐怖の生活習慣病予防健診がががーー!

 

健康診断に備えてダイエットしよう、とか禁酒しようと言う人は多いと思う。
付け焼刃でもいい、健康になりたい。
それが人心というもの。

日本の検診にウエストのサイズ、という概念が導入されてから幾年月。
メタボという言葉はもはや迷信に過ぎないのでは、と言われつつあるが私の職場の検診では未だにウエストサイズを毎年測る。 ただ測るだけではない。
そこにはウエストメジャーの悪魔がいるのである。

 

彼女と出会ったのは、3年前の10月だった。
麗しの豊満ボディ、現実を激しく逸脱した眉毛とアイライン。
ピンクのナース服に、なぜかピンヒール。

思わず二度見してしまった。
検診センターでピンヒール。

そういう検診センターなのか?と辺りを見回したが、他の看護師さんは普通のナースサンダルである。
なぜか、ウエストを測るコーナーにだけ、メジャーを鞭のようにしならせた濃くてデカいお姉さまがいる。

私は映画「ピンクフラミンゴ」のディヴァインを思い出した。
検診センターのディヴァインは、見た目が怖いが言葉も怖かった。

1cm、たかが1cm。
ウエストが増えた私にディヴァインは重々しく伝える。

「増えてますよー。気をつけないとぉー」
そしてはああああ。地獄の底から響くような溜息!

それは事実。確かに事実なのである。
だが1cm。たかが1cm!
誤差の範囲ではないのか?
ちょっくらトイレ行ってくるから!もう一回計ってみろガガガガガ!

けっこう増えてしまった(といっても元が細い)後輩女子も酷い扱いを受けていた。
「はあああああ」と地の底から響くような溜息と、「急激に増えるのはメタボ予備軍ですよー?」というヒドイ台詞。

だが待て。いや待て。
女性のメタボは腹囲90cm以上のはず。
後輩女子は元が細すぎたので、急激に太ったとはいえ60cm台だ。

それに対してディヴァインは…

みんなが恨めしくディヴァインの下腹を眺めていることに気がついたのだろう。
彼女は胸を張ってこう言い放った。

「私は!20歳からサイズ変わってませんからね!」
20歳から!ディヴァイン!
この人には一生敵わない気がしてきた。

 

そして3年目の検診。
去年もディヴァインはメジャーをピシパシしならせて立っていた。
今年も多分いるのであろう。

そして今年の私…だんだん更年期なのかな…お腹周りがヤバい…!
このままでは地獄の番犬ケルベロスのような唸り声と小言を聞かなくてはいけない。

マジ怖い。マジ屈辱。
だからこうして血の滲むような努力をしているのである。

もういっそ、お腹の脂肪を注射で溶かしてしまいたい。
そんな危険な施術を望みたくなるほど、ディヴァインの溜息が怖い。

 

だが、会社側から見てみると、こうやって太ることへの恐怖を植えつけるディヴァインさんは、医療費削減に大変役立つ天使なのかも知れず。

また私自身にとっても、もう年だからいっか…と諦めさせてくれない彼女の存在はいい薬なんだろうと思う。

そして今年気がついたのだが。
ディヴァインさんと毎年ウエスト争いを繰り広げる私と会社の仲間たちって、もしかしてマーブル一家ポジション…?

とにかく戦いは今年も続くのである。
負けるな!生活習慣病予防健診!

  

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