おのにち

おのにちはいつかみたにっち

あの家に暮らす4人の女、それから女の友情について。

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シルバーウィーク初日、朝のうちに掃除洗濯を済ませて10時くらいにはどこかへ遊びに行こう。

そう思っていたのに朝食後少しだけ、と手に取った本がやめられない止まらない状態になってしまい….。

 結局全ての家事が終わったのはお昼過ぎ。外は雨。もう外出する気分にもならず、初日からダラダラしてしまいました。

 でもこういう日もいいよね、家に引きこもってるのも幸せなんじゃない?

三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」は、そんな風に私を甘やかしてくれる暖かい一冊でした。

  

女四人暮らし、と言うファンタジー

   

あの家に暮らす四人の女

あの家に暮らす四人の女

 

  

表紙とタイトルを見て、女同士の少し怖い心理劇かと思ってました。恩田陸の「木曜組曲」みたいな。優しい表紙には不穏な黒い羽根が描かれているし黒枠だし。

 中身は世田谷の一軒家に暮らす元お嬢様の母親、刺繍作家の娘の元に転がり込む二人のOL、女4人暮らしの明るく賑やかな物語。

 元お嬢様の母はマイペース、刺繍を仕事にしている娘の左知は仕事が忙しいと風呂にも入らず着替えもしないような日々。左知と同い年、アラフォーの雪乃は仕事に生きていて恋や愛は要らないと思っている。唯一の20代、愛嬌もありモテる多恵美はだめんずばかりに引っかかる。

 ご近所さんに、「あちらのおうちは行き遅れのお嬢さんばかりが暮らしてるらしくて…」「あらまぁ」なんて噂されかねない変わった生活。

だけど楽しくて、可笑しくって時々寂しくて。

 一行目からこの世界にはまり込んでしまい、結局予定を変更して最後まで読む羽目になってしまいました。

 三浦しをんさんの作風好きなんです。すごくシリアスな話のなかでも、どこか可笑しさ、ユーモアを忘れない所。

特にこの「あの家に暮らす四人」は優しいユーモアに溢れている作品。

 東京の片隅で暮らす4人の女性という地に足のついた話なのに、ミイラとか、河童とか、河童殺害疑惑とか、どうしてそうなった!みたいなエピソードが次々出てくる出てくる。

突然カラスが過去を語りだすし、ミイラを『お父さん!』なんて呼んでみる。あげく父と言うよりビーフジャーキみたいだ、なんて言っちゃうし。本当のお父さんはダースベイダーで登場。

 なんなのこれ!

こんな風に少しのファンタジーと現実が絡み合った話なのだけれど、河童よりカラスより、女同士の普通の生活が童話みたいに美しくて優しい。

 些細な怪奇現象なんかより、彼女たちの日々が私にはファンタジーでした。

女同士も良いし、始まりかけの恋も楽しい。

 彼女たちが仲がいいのはそれぞれの考え方に呆れたり驚いたりしながらも、良いところを認めて尊敬しあえているからだと思う。

尊重する、って大切。

それぞれの生き方を大切にしているから、時々のちょっかいや踏み込んだ言葉も許せる。違う価値観も、あなたはそうなんだね、と認めあえる。

久しぶりに女同士っていいな、友達に連絡してみようかな、と思った1冊でした。

フェイスブックにいいね!してみようかな、それからコメントも。

 

台詞や文章も印象深かったので少しだけ。

 

私は遊びも恋も放擲して、毎日チクチクやっている!その気力と根性にちっとも気づこうとせず、「あら、かわいい」「オシャレ」などと気軽に刺繍を消費し、あまつさえ私の刺繍で身を飾って、街歩きやらデートを満喫するのか、おのれらは!一針一針に我が情念をこめて、おのれらの魂に直接刺繍してやりたい。おのれらの魂から噴き出す血潮で白糸を朱に染め、ものすごくリアルな髑髏を刺繍してやりたい!

 

 これは刺繍に情熱を傾ける左知の独白。
どうもこの心情は作者の心の叫びでもあるような気が…w

気を付けろ、魂に刺繍されるぞ!

 他にも、

「さっきの、ガールズトークだった?『目と同じ幅の涙を流しながら、河原で夕日に向かって吠えてる柔道部員同士』って感じに近かった気がするけど」

 

とか。分かる分かるぅ~、と日々そのようなガールズトークしかできない私は深く納得。
そうか、私の本性は汗臭い柔道部員だったのか…!

 柔道部員募集中‼︎みどりで青臭い今日の小野です…。