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美味しいランチで職場のゴタゴタを解決?「ランチのアッコちゃん」

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柚木麻子さんのベストセラー、「ランチのアッコちゃん」を今頃読みました。「本屋さんのダイアナ」も、「ナイルパーチの女子会」も大好きな作家さん 。

 
すごく流行ってる本だし、読もう読もう、と思いつつも手が伸びなかったのは「アッコにおまかせ」を思い出してしまうタイトル。
 
和田アキ子さん、何となく苦手なんです…。
 
実際読んでみると。
タイトルの「アッコちゃん」は和田じゃなくて秘密のアッコちゃんだった!
 
黒川敦子、45歳独身。
173cmの長身、がっちりとした肩幅。黒いおかっぱ頭。
見た目は和田アキ子…だけど、性格は魔法使いみたい。
 
食わず嫌いを後悔しました。
もう読んだ方は多いと思うんですが、今日は私みたいな食わず嫌いさんのために紹介していきます。
  

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

アッコさんはイジワーニャ女王?

 
主人公は素直で前向きだけど仕事運に恵まれない三智子。彼女の様々なトラブルを、美味しいごはんやスイーツで解決してくれる人が先輩のアッコさん。
 
一見怖い、でも本当は優しいアッコさんは三智子が企画するキャラクター、悪の黒猫イジワーニャ女王そのもの!
冷たく見えて、レベルアップすると微笑んでくれる、優しい氷の女王様。
 
私は、大好きなPixivで連載中のマンガ「舞浜さんと邪悪な女王」の女王をイメージしちゃいました。本当は優しいのに、どっか意地っ張りで。
 
でもアッコさんは本当は万能の魔法使いじゃなくて、不器用な所も、失敗することもある普通の女性。誰にでも優しい訳じゃなくて、 三智子が昔の自分に似ていると思ったから構ったんでしょうね。
 
そんな風に美談だけで終わらない、最後には友情も感じられるところが好きだな。
 
 
 
4つの物語の短編集なんですが、三智子がちらっとしか登場しない最後の作品、「ゆとりのビアガーデン 」  が響きました。
 

頑張り続ける、は必ず正しい?

 
第4話「ゆとりのビアガーデン」のヒロイン、玲実は新卒で入った会社を3ヶ月で辞めてしまいます。
 彼女のことを思い返すのは社長の雅之。
 
雅之は彼女のことを「使えない奴」だと思っています。
でもこの彼女の仕事ぶりについて書かれた部分を読んで胸が痛くなりました。
 
人の話をどうしても 一度で覚えられない。
メモしてもそのメモを無くす。
集中力がなく子供の様に注意力散漫。
仕事中ぼんやりしたり、かと思えばのめり込みすぎる。
業務に関係ない事をしゃべりすぎる。
服を裏返しに着たり、おつかいの途中で別の事をしてしまう。

 

  
「ゆとり世代のマイペースなお子様」なんて馬鹿にされる玲実ですが、この症状はADHDの特徴に似ていますよね。
著者もそこを意識して書いていると思います。
 
 
結局、先輩からの「とっとと消えてよ!」という言葉で彼女は仕事を辞めます。
 
辞めた、というより辞めさせられたに近い気がしますが、彼女自身会社勤めは合わないと実感したのかも知れません。
 
それから一年、玲実は同じビルに帰ってきます。
 
笑顔で、ビアサーバーを背負って。
彼女は元職場の入っているビルの屋上で、ビアガーデンを始めることにしたのです。
 
 雅之は頑な性格で、途中退職者を「逃げた奴ら」だと思っています。
どんなつらい状況でも歯を食いしばって耐えるべきだ、と考える精神論者。
 
そんな性格が災いしてリストラが続く会社にしがみつき、気がつけば本社を追い出され、小さな子会社の社長に就任したものの、先は見えない。
 
明け方まで続く残業やノルマ、叱責に耐え切れず新入社員は心や体を患い次々に辞めていってしまう。
 
 雅之自身はバブル入社で、気長に育ててもらえた人。
自分だって新入社員の頃は玲実のような失敗をした、先輩社員は気長に見守ってくれたと解っています。
 
うちは少数精鋭、使えない社員を気長に育てる時間や余裕はない、と言いながら本当はちゃんと理解しているのです。
自分が若手を食いつぶしているだけだ、ということに。
 
 
ブラック企業の社長と、自分で起業したイマドキの女の子玲実。
 
現実はそんなに甘くないよ、っていいたくなるお話かもしれません。
作中でも雅之はくだらない、舐めている、失敗しろ…とひたすら彼女の失敗を願っています。
 
でも雅之の選んだ正しいはずの道も、それでいいの?って問いかけたくなる。
逃げちゃだめだ、頑張らなくちゃいけない、人並みの幸せが欲しくないのか。
 
人並みってなんだろう?
 
 
人それぞれ、得手不得手があって、みんなが持っているものがなんでも手に入るとは限らない。
 
誰かは逃げだと言うかもしれませんけど、自分にとって居心地のいい生き方なら、それもいいんじゃないのかな?
 
自分の得意なことを追求して成功する玲実。
 
しかし彼女には将来的展望が欠けていたのです。
ビアガーデンを冬場どうするか、考えていなかったのですから(笑)
 
でもここはベテランがサポートしてやらんと、なんて最後には雅之まで味方につけた玲実は最高の経営者だと思いました。
 
私の会社の近くにも、こんなビアガーデンがあったらいいのに。
 
そう思わせてくれた素敵な短編集。
元気が欲しいとき、美味しいごはんの話が読みたいときには是非オススメ。
 
ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

 

  

3時のアッコちゃん

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幹事のアッコちゃん

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