おのにち

おのにちはいつかみたにっち

子どもと大人に生活習慣を身につけさせる方法

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昔、とある会社の新人指導みたいな仕事をしていたことがある。
教えるのは仕事でもビジネスマナーでもなく、基本の生活習慣。
書類の整理整頓、洗顔歯磨き身だしなみ。

そんなの教える必要があるのか!?と思われるかもしれないが、例えば寝癖がついている会社員、結構見かけたりしないですか?

そんな訳で、今日は私が新人を教える中で学んだお話です。

 

指導のきっかけ

 

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私の勤めていた会社の地方支店には、新入社員が最初に配属されてくることが多かった。ほとんどが国立大卒、東京出身でずっと実家暮らし…というスペックの若い男性。

最初に遊ぶところのない田舎で一人暮らしさせ、修行感覚で仕事に専念させよう、という会社の思惑だったんだろうと思うけど、初めての一人暮らし、トラブルは多かった。

そのうち一人がオンラインゲームにハマり、仕事に来なくなり、結局退職することになった。それは仕方のない事なのだが、問題だったのは彼の机の中。
上司も知らない請求書がたんまりため込まれていたのである…。

どうやら発注した仕事が終わった後、届いた請求書をちゃんと経理に上げていなかった模様。
どれも相当月日が過ぎており、上司は平謝り。
危うく起訴は逃れられた…という手痛い事件があった。

 

その事件以来、新人に基本的な生活習慣を身につけさせよう、という新たな社内指針が出来た。

書類は回覧するもの、終わったもの、これからのもの…とちゃんと分類し、保存する。寝癖は直す、徹夜でゲームをして遅刻しない。外部のお客様との打ち合わせがあるときはきちんとスーツを着てくる、匂いの強いものを食べたらちゃんと歯を磨く…などなどなど。

どれも当たり前のことなのだが、20代~30代の若手以外は50代後半しかいない、という年齢の偏った、しかも男性社員ばかりの支社の中では、そうした基本的なことを怒らずに上手く伝授出来る人がいなかったのである。
そんな訳で数少ない女性事務職で子持ちの私に白羽の矢が立った訳なのだが。

同じ社員でも新卒、本社で採用された彼らと、中途社員で支店採用の私とではパワーバランスが違いすぎる。
国立大卒の若者は事務のおばちゃんを明らかにバカにしているし、当時はうつ病になる新人が増えていたのでこちらはそんな彼らを怒るのも禁止。

 

どうすりゃいいのよ…と思った私を救ったヒントは、当時読み漁った本で学んだ知識だった。

徹夜でゲームをしてしまう、そして仕事に行けなくなる…というのはもはや生活習慣レベルの問題ではなく、依存症なのでは?と思い、そうした本を色々読んだ。
その中にあった基本的な考え方が患者を否定しない、ということ。

若く、プライドの高い彼らは強く叱責されると必要以上に落ち込んでしまう。
また、ダメだ!とかこれだからイマドキの…などの否定的な意見を言われると、態度を改めるのではなくその人を忌避することでやり過ごそうとする傾向が見られた。

そこで私は雑談から入って、彼らを責めず、取りあえず『わかーるわかるよ君の気持ち』と肯定するところから始めてみた。

例えば『ゲームのイベント続きで毎朝眠いし、仕事に来て帰るだけで若い女の子に会う訳でもない。こんな田舎で寝癖とか身だしなみとか言われてもどうでもいいっしょ…』みたいな声。

田舎だからどうでもいい、という発言には多少ピキッとするけれどガマンガマン。
取りあえずうんうん、辛いよねー、と肯定する。

本人は自分が悪い訳じゃない、社会や会社が悪い、と責任を転嫁したい訳だからそれを一旦肯定してやる。

で、気持ちが軽くなったところで、でも会社もカタブツばかりだからなかなか変わらないし、変えられないよねー、みたいな話の流れに持っていく。
(〇〇くんが出世して会社のルール変えてよー、みたいな無理を言うと自分からイヤイヤウチの会社はそんなものだから…的な流れになる)

だったらそんな会社の中で、どう擬態していくのが自分にとって得策なのか?〇〇大卒のキミなら分かるっしょ…とプライドをくすぐっていく。

そして具体的で簡単な改善策を提案していく。
寝癖なら少しリンス入れた水スプレーとか、寝癖直しウォーター買うといいよ、みたいな基本的な話をしたり。

整理整頓が苦手な子には、机の上に未決書類を置く場所を作ってあげたり、ファイリングのコツを教えたり。
要は小学生の子供に教えるような事を、仕事でやってた訳である。

 

真面目で品行方正な学生を採用してたらしい本社。
結果新入社員は頭は良いのだけれど、どこか幼い部分のある、抑圧された雰囲気の子が多かった気がする。

例えば糖尿病の家系、と言う事で三食節制された手料理を食べていた子は、一人暮らしを始めた途端お菓子やカップラーメンにハマり、一年間で30キロも太り即健診で引っかかっていた。

当時30代、保育園の子を一人持つ母親だった私は、こうしたトラブルを教育一辺倒の子育てによる弊害だと思っていた。

つまりお勉強だけをやらせ過ぎて、基本的な生活習慣が身につかなかったのね、と。
正直、家庭のしつけの問題だと思っていたのだ、あの頃は。

 

家庭のしつけの難しさ

 

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小学生の子を二人持つ今は、だいぶ考え方が変わった。

まず、小学校のカリキュラムの素晴らしさに気付いた。
宿題やプリント、教材費といった期日のある書類や集金を、きちんと回覧し提出するのは仕事の基本だし、今は学校の机の中にトレーを入れて教科書やノートの整理整頓の仕方まで教えてくれる。
週に一回身だしなみ検査まであり、爪を切りハンカチちり紙を持つ習慣まで身につけさせてくれる。

後は子どもがきちんと守れるように、親が確認や声掛けという補助をしてあげるだけ…のはずなのだが。

 

たとえば小6の長男は、身だしなみは私以上にばっちり。
寝癖直しは当たり前だし、洋服も天気予報やその日の時間割を見て自分でTPOに合ったものを揃える。友達とのコミュニケーションも良好で、女子にもモテる。
なんとなく平成っぽい、スマートな男である。

なのに整理整頓や、集金袋を前日の夜までに出す、みたいなことが苦手。
高学年までランドセルや部屋の整理は一緒にやっていたし、何処に何を入れるか分かるように引き出しを細かくラベリングしたりもした。
集金袋を当日に出されても準備できないし先生も親も困るよね?みたいな話は口が酸っぱくなるほどしてきた。
それでもやっぱり苦手なものは苦手で、連絡物はいつもギリギリ。

小二の次男は、逆に机がいつもキレイ。
何がどこにあるかをキチンと把握しているし、何事も期限前に準備しておかないと落ち着かない。報連相はいつもバッチリな男。

ところが身だしなみに無頓着すぎる。
お下がりばかりじゃ洋服に興味が湧かないだろう…と季節ごとにきちんと選ばせているのだが、一向に興味を持たない。
それどころかトイレに行って直すのがめんどくさい…といつもローライズ、直しても直しても見るたびにパンツがズボン上からコンニチワ!しているハミパン野郎。
服も気がつけばどこかが汚れたり破れたりしていて、生傷も絶えず、なんとなく昭和臭がするやんちゃな子どもだ。

長女で『お姉ちゃんだから』といつも我慢を強いられてきた私。
兄弟で差をつけるのは嫌、となるべく公平に、同じように指導してきたつもり。
それなのにその子によって、砂に水が吸い込むようにスッと入っていく事、お前の心は防水加工か?と思うくらい飲み込みが悪い事が異なるのである。

その子の持つ個性って結構重要。
親のせいにして悪かったなぁ…とあの頃の私を後悔した。

 

出来なくても大人になれる


さて、ウチの長男みたいに、何度言われても、自分で分かっていてもやっぱり書類整理が苦手って人はやっぱり多いと思う。

安心してほしい、来年の春に退職予定の私の上司もそうだから。
紙の書類をいつまで経ってもファイリングせず積み重ね、とうとう机に置ききれなくなり床まで侵食していた。

定年まであと半年、引き継ぎ準備を課長からせっつかれ、ようやく重い腰を上げたのだが、筋金入りの整理整頓嫌いが何年分だか分からない書類を何十冊ものファイルに分類して仕舞う…などと言うめんどくさい作業を一人で出来る訳がない。

隣の席の私は案の定手伝いを頼まれ、自分の仕事が一つも進まない苛立ちと憎しみをこめ『大丈夫よ書類整理が苦手だってちゃんと定年まで勤められるんだからーー!だがお前だけはタヒ!いっぺんタヒって出直してこいやーー!』とこの文章を書き綴っている。

他人の書類の仕分けまでは知るか!と、彼がひとまとめにした書類をファイルに閉じて、テプラで背表紙を付けるところだけを引き受けたが、パンチで穴あけしていると28年に点在する25年、迷い込んだジャンル違い…などツッコミどころ満載で辛い。

だが見ない!見なかったことにするよ、私はズルい大人だから!

 

まぁそんな訳で、誰にでも得手不得手はあるし、出来なくっても大人になれる。

ただ一つだけ忘れないで欲しいのは、自分の仕事がどこに繋がっているのか、をちゃんと考えるということ。

例えば最初の会社で問題になった社員は、10万程度の請求書をたくさん引き出しにため込んでいた。
大きな会社だと、億単位の契約も多い。何千万、何百万、という仕事をしていると自分のお金じゃないのに感覚がマヒしてくる。
彼は多分少しの額だから、後回しでいいか…と仕舞いこんでしまったんだと思う。

でも取引先の、田舎の小さな会社では、10万20万の額だって予定通りに入らなければ経営が危うくなってしまう。
自分の小さな怠慢が、その会社の人たちを路頭に迷わせることになるかも知れない、という危機感だけはちゃんと持っていてほしい。

私たちはみんなどこかで、緩やかに繋がっている。
だから周りを、ほんの少し気遣って生きる。
譲り合い、お互い様の心配り。
そんな気持ちが、正しい生活習慣のベースになるのかも知れないな、と思いました。

 

…隣の人から、お礼に貰った豆大福を食べながら。
何もかも許せる気分になるから、疲れたときの甘味ってやっぱり大事やなぁ。
新人諸君、心配りとはきっと甘味を配ることなんだぜ…(違

 

菓匠松栄堂 しお豆大福 6個入

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