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『BLAME! THE ANTHOLOGY 』感想-豪華すぎる階層世界の物語

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「BLAME! THE ANTHOLOGY」を読み終わった。
小川一水、野崎まど、飛浩隆と実力派揃いの豪華アンソロジー小説。

アンソロジーのテーマとなる「BLAME!」とは、月刊アフタヌーンにて1997年から2003年にかけて連載されていた弐瓶勉の人気SF漫画である。
遠い未来、太陽系をも飲み込む果てしなく巨大な構造物の中で、主人公の霧亥(キリイ)が敵対勢力と戦いつつ「ネット端末遺伝子」を探し求める旅を延々と続ける…というお話らしい。

問題なのは私が弐瓶勉の傑作SF漫画「BLAME!(ブラム)」を未だ読んでいない、ということ。

しかしこの短編集はBLAME!の舞台である、恒星さえも飲み込み無限に増殖し続ける巨大な階層都市をモチーフにした自由な物語だったから、主人公霧亥を知らなくても十分楽しめた。

とはいえ、読後は原作漫画読みたい!映画も観なくちゃ!という焦燥感に駆られるのだが。 珪素生物とは、セーフガードとは何なのだ?映像が欲しいってば!

 

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

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  • 作者: 原作:弐瓶勉,九岡望,小川一水,野?まど,酉島伝法,飛浩隆
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/05/31
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る
 

 

どの作品も面白かったが、最高なのが小川一水の「破綻円盤」。
小川一水ファンなら読んどくべきべきべきぃ!と強制したくなるような素晴らしさである。

主人公は旅籠屋を営む異端の珪素生物ルーラベルチ。
そこを探索者夷澱(イオリ)が訪れるところから物語は始まる。

BLAME!の主人公、霧亥の目的は探し物だが、夷澱の目的は外に出ること。
増殖し続ける階層世界の外には何があるのか、今自分が立っている場所はこの世界の上なのか下なのか。天地すら分からない中で、どうやって外を探せばいいのか。

そうして探索を続けるうちに命を落とす夷澱。
彼の死とはなんだったのかと、怒りすら覚えるルーラベルチの元を訪れた旅人は、夷澱が見つけた真実を教えてくれる…。

この物語、本当に最高だった。
試行錯誤を繰り返しながら外に続く道を追い求める夷澱、なぜ珪素生命ルーラべルチと代理構成体のボイドが営む旅籠が彼の港に選ばれたのか、そして増殖していく町。

無関係に見えた一つ一つの点が、最後に繋がるときのエウレカ!と叫びたくなるような感動。 ルーラべルチが最後に掴んだ真実は、まだまだ遠くてそれでも輝かしい。

漫画未読の私には、縦貫溝や大放水口という絵が巨大ダムにしか見えなくてウガガガ、となる部分もあったが、それでも面白いんだから素晴らしい。

BLAME!の荒唐無稽に見えてその実深く練り上げられた世界感と、小川一水ならではの細やかな考察が上手く嚙み合わさって、とにかく最高、とにかく美味しい物語であった。

だからしつこいけれど小川ファンは読むべきベキベッキー。
射出線の向こうを覗きたくなるような短編である。

さて、BLAME!アンソロジーの感想なのに小川一水マンセーだけで終わってしまいそうである。 もちろんその他の作品も素晴らしかった。

人間と珪素生物、はぐれ者どうしの出会いを描く 九岡望「はぐれ者のブルー」、重油が流れる町に住む人々の暮らしを江戸時代のような火消し(もしくは消防団?)を通して描く 野崎まど「乱暴な安全装置」、巨大な大陥穽の中をひたすら落ち続ける発掘団の物語 酉島伝法「堕天の塔」、環境調和機連合知性体が三万年の世界の歴史を紡ぐ 飛浩隆「射線」。

同じ階層都市を舞台にしたアンソロジーなのに、どれもみな異なる世界を描いていて面白い。 原作の太陽系すら飲み込む巨大な階層世界という設定が、SFとして最高で最適なのであろう。

そういえば弐瓶勉の別作品、「シドニアの騎士」アニメ版はすべて視聴した。
こちらは巨大な宇宙船を外敵から守るために戦う、広大な宇宙の物語なのだが、冒頭で主人公は立ち入り禁止の地下区域から這い出して来る。

BLAME!アンソロジー読了後にそのシーンを思い出すと、シドニアさえ階層世界の一部のように思えてくるから凄い。広がり続ける世界、最強である。

さてさて、そんな訳で「BLAME! THE ANTHOLOGY」。
「BLAME!」を読みたくなる、空の果てを疑いたくなる(ずっと進んでいったら違う階層にぶち当たるんじゃないか?なんて)とっても面白いアンソロジーでした。

これを読んで、更に「BLAME!」を読んで、映画版「BLAME!」を見て(11月が待ち遠しい)、ついでにシドニアの騎士も全巻購入して(こっちも新装版が月末発売)金欠に泣くが良いわ!と、自分に言ってます...。

 

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

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