おのにち

おのにちはいつかみたにっち

ゾンビが町を救ってくれる?-越谷オサム『まれびとパレード』

スポンサーリンク

人生を変えてくれたのは、人間ではない何かでした――。

 今日は越谷オサムさんの短編集「まれびとパレード」の感想です。

物語に登場するのは、ゾンビ、座敷わらし、泥田坊、邪鬼と人ならざる「まれびと」達。ちょっと不思議で、でもほんわか心が暖かくなるようなお話ばかり。

サクッと読める可愛らしい怪異譚(?)なのに時折泣かされたりして。
なかなか、オススメですよ。

 

まれびとパレード

まれびとパレード

 

 

4つの短編が収録されているのですが、一番好きなのは元彼がゾンビになって帰ってくる「Surfin,Of The Dead」。

主人公は鯖が名物の海沿いの町で暮らすミナミ。
ダンナは漁協勤め、ミナミも実家の食堂を手伝っているのだがここ数年不況が続き、町の景気はドン底。

そんな時、ミナミは海でサーフィンをする腐乱死体に出会う。

ゾンビーー!?と驚愕するけれどよく見ればその顔は、昔海で行方不明になった元カレで…という甘酸っぱいけど生臭い(魚と死体が)お話。

 

ラストが…とっても良いんだけど、その魚食べるんだ…って感じで好きですw
鯖美味しいよね、サバサバ。

 

他には座敷わらしがきっかけで引きこもりを脱却する「弟のデート」、県有地にとりついた泥田坊に立ち退き要求をする羽目になる公務員の話「泥侍」、お寺の四隅で四天王に踏まれている邪鬼たちが、こっそり夜中に大冒険を繰り広げる「ジャッキーズの夜ふかし」などなど、奇妙でかわいい話揃いです。

 

なかでも夜中の境内で巨大鹿に追いかけまわされるジャッキーズ(正体・邪鬼)のかわいさったら!邪鬼でジャッキーズ、という言葉遊びも好きです。

 

もしかしたら鯖のエサはそういうこと…なのかも知れないし、夜中に仏像が歩き回っている可能性だって、無くはないかも?

そんな風に思わせてくれる短編小説です。

それでは今日はここまで!