一人で運転するときはマスクを外している。
そのまま人気のないセルフのガソリンスタンドに入り、マスクを忘れて給油していたらマスク姿の店員からセールのチラシを貰い、どうにも恥ずかしかった。
このコロナ渦の中、なんて不躾な私!
常識的な事がきちんと出来ていないと、なんとも居たたまれない気分になるものだ。
そういえばここ数日、職場の50代男性同僚が午前中から風俗の話を若手に振っていて気まずい。
そういう話を人前で堂々と出来るほど、緩い会社ではないはずなのだが。
過去にモラハラやセクハラで降格、退職した社員だって数名いる。
凍り付く空気や、明らかにエンターキーの音が高くなった女性上司を慮って、30代の男性社員が彼に「そんなことより…」と毎回上手く話を変えて場を取り繕っている。
50代の男性社員は過去に脳梗塞で倒れ、半年ほど入院したそうだ。
その後遺症からか、たまに手指の感覚がなくなる事があり、車を運転することが出来ない。
もしかしたら場を弁えない行動もそうした認知機能の衰えが関係しているのかも…と職場では噂されている。
とにかく、若手社員に本気で疎まれ、通告されてしまえば一発でOUTとなる行動である。来週も続くようなら別室に呼ばないと、と上司が苦い顔をしていた。
既に更年期を乗り越えた女性上司である。
自分の体が必ずしも、思い通りに動くものでないことは知っている。
それでも表向きだけでも健康的に取り繕っておかないと、退場させられてしまうのが現代社会なのだ。
常識的なことがきちんと出来ていない人間に対して、社会の風向きはとても厳しい。
それは共感性羞恥によるものか、それともきちんとやっている自分が貶められたような気になるからか。
ぼんやりはてなの白クマ先生の、正しい社会に関するエントリを思い出す。
自分だっていつ病に蝕まれたり、ストレスで歪むとも限らない。もしかしたら、明日は我が身。
とはいえ素直に下ネタオヤジ可哀想!とも思えない。
この現代社会において、朝っぱらからソープの話を聞かされる恥ずかしがり屋の若手社員のほうが、よっぽど悲惨である…。
そういえば50代の社員は、宴会の席で『昔はセクハラなんて言葉が無くて良かった。軽いジョークも通じない今、何を喋ったらいいか分からん!』なんて愚痴っていた。その言葉を女性上司はこんな風に窘めた。
「私はあの頃の宴席、セクハラだらけで最悪でした!昔さんざん好き勝手言ってたんだから、ちょっとくらいは我慢しなさいな」
そうして男性の膝を粋に、ピシャリと叩く。
でもそのピシャリさえ、今の世ではセクハラなのかも知れませんよ、とは言えませんでした…難しいよな、現代社会!