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このオチはアリなのか?怪作『予言の島』澤村伊智

『ぼぎわんが、来る』で日本ホラー小説大賞を受賞された澤村伊智さんの新作『予言の島』を読みました。

基本的には面白かったんですがこのオチはありなのかーー⁉と感想を書かずにはいられなくなる怪作でした…。

 

予言の島

 

 

物語の舞台は瀬戸内海にある小さな島、霧久井島。
名物も絶景も無く、島民は30人程。

しかし、この島はネットで有名な心霊スポットだった。
90年代半ばにここで心霊番組を撮影していたスタッフが次々と異常をきたし命を落としたという。

そしてここは人気霊能者、宇津木幽子が最後の予言を残した島でもあった。

今年の8月25日から26日の未明にかけて、霧久井島で6人が死ぬと。

 

8月24日、会社員の天宮淳は最近ブラック企業を辞めたばかりで鬱気味な友人大原宗作、それから面倒見の良い親友岬春夫と共にこの島へ旅行に向かうことになる。

かつてはオカルト番組が大好きで、宇津木幽子の本に心霊写真を送ったこともある淳、宗作、春夫たちにとっては予言された島でのホラースポット探しは良い気分転換になるはずだったのだが…

 

あらすじはこんな感じ。


よりにもよって予言された日程に合わせて霧久井島を訪れてしまった仲良しトリオ。

同じ宿に泊まるのは自称霊能力者の霊子、20代の息子と異常に仲の良い遠藤母子、それから元看護師の江原数美。

霧久井島は独特の風習やしきたりを持つ、閉じた島だった。
立ち入りを禁じられた疋田山、怨霊から身を守るための木炭で出来たお守り『クロムシ』、そしてヒキタの怨霊…。

小さな島の中で次々に人が亡くなり、謎のサイレンが鳴り響く。
果たして淳たちは生きてこの島を出られるのでしょうか?

前半は横溝や三津田風の伝奇ホラーテイスト、中盤からはミステリ、そしてラストは思いがけないどんでん返し…

 

オチは『葉桜の季節に君を想うということ』を思い出しました。

葉桜~の名前を出してしまうと、ミステリ好きならああ、こういう系のオチなんだな、ってなんとなく察しちゃいますよね?

確かに冒頭から、なんとなく奇妙な会話が続くのですが…
でもっ!絶対わかるかこんなオチ――っ!(ちゃぶ台返し

オチまで読んで、実際のシーンを想像したら正直笑えました。
いやこれバカミスでしょ?

設定は良いし、ホラーからミステリーに移行していくのも自然な雰囲気。正直怨霊の正体は逃げ方からなんとなく察してしまうのですがそれでもヒロインの感情の流れやかつての事件との因縁なんかでさくさくラストまで引っ張っていってくれます。

でもな…やっぱオチ…(しつこい)

しかしまぁ感想を書かずにはいられなくなるオチ、っていうのはSNS時代にぴったりの宣伝方法なのかも知れません。

とりあえず読んだ人とこのオチはあり得るのか?と熱く語りあってみたい私です。
あるあるあ…やっぱねーよ⁉

  

予言の島 (角川書店単行本)

予言の島 (角川書店単行本)

 

 

『天気の子』は『ハイドライド3』より『雲の王』に似てる!と思った件

おっさん社会人ブロガーコバさんのこんな記事を読みまして。

 

www.cobalog.com

 

いやいやいや、ハイドライド3って何やねん?マニアックすぎるやろ!

しかし、実は私も『天気の子』のCM動画を見て以来これってアレやろ、あの作品に似てるやろ…とひそかに思っておりまして。

 

 

 

それがこちら、川端裕人さんの傑作気象エンタメ小説『雲の王』!

 

雲の王 (集英社文庫)

 

7月公開予定の『天気の子』のあらすじがこんな感じでして。

 

高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。 彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。 ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。

「ねぇ、今から晴れるよ」

                         (公式サイトより)

 

そんで『雲の王』のあらすじがこんな感じ。

 

その夏、母と息子は「空の一族」と出会った――。
ゲリラ豪雨や台風を、不思議な力で回避することが出来たら?
人と自然のかかわりを見つめなおす、壮大な長編小説。

気象台に勤務する美晴は、十代の頃に事故で両親を亡くし、今は息子の楓大と二人暮らし。行方知れずの兄からの手紙に導かれ、母子はある郷を訪れる。そこで出会ったのは、天気と深く関わり、美晴の両親のことも知っているらしい郷の住人たち。美晴たち一族には、不思議な能力があるらしい。郷から戻った美晴は、ある研究プロジェクトに参加するが……。

一族がもつ能力とは? 彼らが担ってきた役割とは?
「空の一族」をめぐる壮大なサーガ、開幕!

                   (Amazon商品ページより)

 

ねっ?『天気の子』はボーイミーツガール、『雲の王』は母子の物語と
人物設定こそは違うものの、天気を操るチカラ、というのは似てますよね?

でもまぁ設定は恩田陸の『常野物語』やX- MENのストームさんにも似てますし、ありがちと言えばありがちなんですが。

 

新海誠監督の作品ですからきっと雨上がりの街は過剰なほどキラキラと美しく、クライマックスではRADWIⅯPSがガンガン泣かしにかかるのでしょう…イヤ私実は毎回コテンパンに泣かされてるんですけど!結構ベタなの弱いんですってばーー!

 

そ、そんな訳でとても楽しみな『天気の子』ですが残念なことに公開は7月。
予習として傑作気象エンタメ『雲の王』読んどきましょうよ!

 

雲の王 (集英社文庫)

雲の王 (集英社文庫)

 

 

文庫版出てるし!ファンタジーだけど主人公が気象予報士という設定だからリアルで面白いの。竜巻を観測するという危険な映画『ツイスター』を彷彿とさせるシーンも満載。私は本当に大好きな作品で、続編をーー!と盛り上がってたのですが短編集と本編のみで終わってしまいました…寂しい…

  

yutoma233.hatenablog.com

 

とりあえず今日は、『天気の子』は『ハイドライド3』より『雲の王』に似てるぜ(多分)!そして『雲の王』読んどけ!というお話でした。

とは言えまだまだ『天気の子』に似てるシリーズありそうですよね?
その際は乱入お待ちしてまーす!(格ゲーか

 

閉ざされた陸の孤島ミステリ/今村昌弘『魔眼の匣の殺人』

今村昌弘、『魔眼の匣の殺人』読了。
主要ミステリランキング第一位を総なめにした話題作『屍人荘の殺人』の続編です。

メインキャラ2人は前作から引き続き、ストーリーの流れも前作ラストで登場した謎の組織を追って山あいの集落へ…という感じなので、前作は読んでおいた方がいいかも。

 

yutoma233.hatenablog.com

 

さて、タイトル通り「屍人」が大活躍した前作とは異なり、今回は『魔眼』-いわゆる千里眼や予知能力がテーマとなっております。

少し地味?いやいや、表紙を開けたらこれですからね…。

 

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集落&館マップ!

この図を見て胸がワクテカする方は読んだ方が良いと思われます。
みんな大好き、閉ざされた館モノ!

前作はゾンビがいるから外に出られない、と言うかなりの変化球でしたが、今回は一本だけしかない橋が焼け落ちた、という古典的な手法になっております…好きっ!

ゾンビという飛び道具+正統派ミステリが前作の特徴でしたが、今作も予知能力によって予告された連続殺人事件、ただし謎解きは本格と言う絶妙なバランスになっております。

ネタバレしちゃうとつまらないから、あまり詳しくは書けないけど行ったきりの足跡をつけるトリックとか正統派でいいですよね…白い服を着た謎の男が角を曲がったら消えるのも!わ―いみんな古典で読んだ展開!大好き!

 

魔眼の匣の殺人

 

えっとこのままだと古典ミステリっぽい!好き!というシンプルすぎる感想になってしまう!それだけではあまりにもアレなんで、簡単にあらすじをば。

 

前作『屍人荘の殺人』で思わぬ事件に巻き込まれた葉村譲、剣崎比留子。
二人は前回の事件の主犯である班目機関の痕跡を追い、かつて彼らが研究をしていたという山奥の実験施設を訪れる。

施設の呼び名は『魔眼の匣』。そこには予言者として村人から畏れられているサキミ、世話係の神服が住んでいた。

ところが彼らが訪れたのはサキミによって『この場所で男女が二人ずつ、四人死ぬ』と予言された11月の末だった。

予言に巻き込まれる事を恐れた村人たちによって、施設と集落を繋ぐ橋が燃やされ、魔眼の匣にいた人間達はみな、陸の孤島に閉じ込められてしまう。

その場に居合わせたのは機関の謎を解きたい譲と比留子、取材に来た記者の臼井、サキミに会いに来た高校生真理絵と茎沢、たまたまバイクのガソリンを切らしてしまった会社員の王寺、墓参りに来た元村民の朱鷺野、車が故障した師々田親子、予言者サキミと神服。

はたして11人の中で生き残るのは誰なのだろうか…?

 


物語の先が気になって、グイグイ一気読みしてしまいました!
GWにオススメのミステリです、それではまた。

 

魔眼の匣の殺人

魔眼の匣の殺人

 

 

華文ミステリ入門編にピッタリ!陳浩基/ディオゲネス変奏曲

華文ミステリの第一人者と呼ばれる陳浩基さんの短編集『ディオゲネス変奏曲』を読みました。

2017年に発行された「13.67」は香港を舞台に現代から過去へ、時代を遡る形式の警察小説&本格ミステリというちょっと凝った趣向の本で、2018年の本屋大賞翻訳部門2位、このミス海外部門でも2位、本格ミステリベスト10海外編では1位と、非常に高く評価されている作家さんであります。

 

13・67

13・67

 

 

で、そんな彼の才能が遺憾なく発揮されているのが今回読んだ短編集『ディオゲネス変奏曲』である…という訳。

短編集なのでサクサク読みやすい、なのに正統派ミステリは勿論、ホラーサスペンスあり、SFあり、殺人の起きない推理ゲームあり、なぜかショッカー的な悪の軍団内部事件モノもあり…と盛りだくさんで非常に楽しめました。

翻訳物は読み難い部分もあり、苦手な人が多いジャンルだと思うんですが、華文に関しては同じアジアの作家さんだからか、そういったハードルをあまり感じさせることなくスラスラ読めます!

(とはいえマイルズシリーズにおける小木曽訳みたいな、古典的な文章もそれはそれで味わい深いのですが)

 

全17編と内容は盛りだくさんですが、私が好きなのは裏掲示板でストーカーが蠢く『藍を見つめる藍』、時間を売買できる世界を描いたSF『時は金なり』、皮肉に満ちたメタ小説『作家デビュー殺人事件』、科学技術が発達し、更に全体の進歩を望む発展派が主権を握る世界で古めかしい「探偵」が存在する意義が問われる『カーラ星第9号事件』、講義の形をとった推理ゲーム『見えないX』などなど。

他にも悪のジャガイモ怪人が、秘密基地内部でマッシュポテト⁉にされ、犯人を捜す『悪魔団殺(怪)人事件も面白いし…基本、どの作品も最後にどんでん返しやオオゥ⁉と驚愕させられるオチがあり、楽しんで読めました。

 

一番良かったのは、やっぱりラストの『見えないX』かな?

大学の推理小説鑑賞講義の初日、教授は学生たちに推理ゲームを提案する。

この教室内に一人、見えないX-講座の助手が潜んでいる。
それが誰かを最初に当てることのできた者に成績Aを進呈する、というゲームである。

ゲームは早い者勝ち制。一番最初に犯人を指し示し、理由と証拠を説明出来た人間の勝ち。ただし回答権は1回きり、最初の推理が間違っていれば参加資格を失ってしまう。

学生たちはお互いに駆け引きを繰り広げ、会話の中から犯人を探し出そうとするのだが…というスリリングな推理ゲーム。

設定だけでも面白そうじゃないですか?小説は更に2転3転の展開で、思いがけない犯人の上に思いがけないオチもあり、楽しかったです。

私もこういう推理ゲームに参加したいなー。今体験型謎解きゲームとかたくさんありますよね?是非一回チャレンジしてみたいもんだ、誰か付き合って…と全然作品と関係ないオチにたどり着いて今日はオシマイ!

 

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

平成とは何だったのか会議

さてさて、今日は平成最後の日、TVは朝から大騒ぎしております。
これだけ平成のニュースを流されればイヤでも時代を振り返ってしまう、という訳で。

今回は田舎で暮らす普通の40代主婦にとって、平成とはどんな時代だったのか…というお話です。

なおあくまでも個人的な、自分語りなんで。

違うだろ、平成とは…とか薀蓄語りたい奴は黙って自分のブログでやんなさいよね!(グダグダ言われる前に釘をめった打ちにしていくスタンス)

 

さて、平成が始まった頃、私は中学2年生でした。
北海道のマンモス校から、会津の超閉鎖的な中学へ転校して、転校生として浮きまくっていた時代でありました…。

なにしろ保育園、小学校、中学校とほぼ同じメンバーが1クラスに揃っている、という田舎ならではの団結力。

古い付き合いだからこその、口に出さなくても分かるだろ…的暗黙の了解がそこかしこでまかり通っていて、毎日地雷原を歩くような気持ちだったことを思い出します。

しかし、当然ながらそうした閉鎖的なコミュニティが長続きする訳もなく。

高校に進学して、大きな世界に放り込まれると今まで権力を握っていたはずの人間ほど適応できず不登校になったり、中退したりしていきました。

私がなんとか閉鎖的な環境に馴染み、その後は楽しい高校生活を送れたのは本の世界という学校とは別の逃避先を持っていたからでした。

 

一つのコミュニティに染まりすぎない。
仕事や家庭以外にも趣味を持ち、なるべく広い視点を持つように努める。
小さな世界の『当たり前』を信じない。

この3つは私が平成元年から6年の間に習得した考え方です。

 

平成元年には東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件もあり、ファンロードやぱふを買う事すら後ろめたい雰囲気だったのですが…

本を読むほかにも絵を描いたり、文通したり。
そうしたオタク・コミュニティが私を救ってくれたことは確かです。

 

Fanroad (ファンロード) 1988年9月号 8周年超特大

Fanroad (ファンロード) 1988年9月号 8周年超特大

 

 

 

就職したのはバブル崩壊の末期でした。
一時期の就職氷河期からは多少持ち直していた頃。それでも就職先は限られていましたし、ボーナスが出ない会社も多かったです。

当時先輩達からは、社員旅行で海外に行ったこと、ホワイトデーや誕生日のお返しはブランド品が常識だったことなど、バブリーだった私自慢を散々聞かされましたが、バブル期は真面目な学生だった私は『何浮かれた話してんだこいつら』とイラッとしたことを覚えています。

そういえば50代の先輩は、あれから4半世紀が過ぎているというのにバブル期のホワイトデーのお返しはシャネルやティファニーだったことを未だに給湯室で布教しています。「それが当たり前だったのよー!なのに今の男子は」的な。

良い時代を過ごしてきたという、美しい思い出なら良いのですがなんかどうも鼻につくというか、能天気なバカにしか見えねーというか…

正直、そんなクソくだらねぇ栄光いらねーわ!と思ってしまうのは氷河期人の強がりなのでしょうか?

 

なお私が当時彼氏から貰った忘れられないホワイトデーのお返しは、初心者なのに分量を量らないで作ったチャレンジ精神満載のクッキーでした…。

奇跡的に食べられる味には仕上がっていたのですが、何かが過剰にみっしりしていて、一枚でお腹がいっぱいになる非常食っぽい仕上がり。

「これ、山で遭難した時にいいよね!」と懸命に褒めたことを思い出します。
やっぱりティファニーが良かったのでは

 

1990年代(平成2年~平成11年)にはバブル崩壊の他にも地下鉄サリン事件が起こったり、暗いニュースがたくさんありました。

個人的にはプレイステーションが発売になったことが一大ニュース。
私はFF7発売と同時に予約購入したんですけど、あの頃はドラクエとかFFの発売日に行列が出来てたからスゴイ。

そういえばポテチとコーラを準備してゲームを徹夜でプレイする楽しさ、最近味わえてないです。

GWにやろうかな?でも今はPSやスイッチよりも『Steam』の時代ですよね、ゲーム用のパソコン欲しい…誰かホワイトデーにくれ、バブル期カモン!(おい)

 

アルティメット ヒッツ ファイナルファンタジーVII インターナショナル

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子育てに追われていたのは平成18年からの10年間。
正直二人の子どもが小学校に上がる前のことは必死過ぎてあまり記憶がありません…。

ワーキングプア、ネットカフェ難民が当時の社会問題となりました。
その状況は現在も変わりませんね。

 

そして昨今!

平成29年ごろからは子育てにも余裕が出来て、仕事の他にブログを始めたり、オフ会に行ってみたり、Twitterを通じて友達が出来たりツイキャスしたりラジオもしたり…ネット文化を満喫しています。

周囲でもインスタやFacebookなど、各種SNSを楽しんでいる人が増えました。
そのせいか多様な価値観を許容できる人も増え、生きやすくなった感があります。

 

これから・この先はどうなっていくのか?

ニュースではひたすら暗く、不安な未来ばかりが強調されて描かれていますが、自分の実感としては年を取るほど余計なものに縛られることなく身軽に自由に生きられる気がして、楽しいです。正直女の子扱いで軽んじられていた(チヤホヤとも言うけど)若い頃より、お年寄りとして多少は尊重されるこれからの方が絶対生きやすい気が。

まぁ腰やら老眼やら、体にガタがくるとまた違うのかもしれませんが。
今後の目標としては健康寿命を限界まで引き延ばす!ですね。
運動嫌いだけど頑張ろう…自分の足で歩けないと人生楽しくないもの。

 

そんな訳で私の平成は、転校生で浮いていた中学生が、子育てに必死になり、今は老後の健康について思い悩んでる31年間…と相成りました。

平成は短いと思ってたけど、10代から40代までってホント色々あるね。

さてさて、老年期を迎える令和はどんな時代になるのかな?

けっこう、楽しみにしています。

 

 

祝! 令和 ステッカー&クリアファイルBOOK (バラエティ)

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五十嵐貴久/マーダーハウス感想-とっても素敵なシェアハウスにようこそ!

五十嵐貴久さんの『マーダーハウス』読了。
ミステリだと思ってたけど終盤かなりホラーテイスト。
春の夜に震える読書と相成りました…。

 

マーダーハウス

 

 

物語の舞台は鎌倉。バス停からは徒歩15分。人気のない林を抜け、坂道を登った先にある瀟洒な洋館、それがシェアハウス『サニーハウス鎌倉』。

大きな庭にはプールやジャグジー、地下にはシアタールーム、一階には広々としたリビング。個室は18畳あり、それぞれの部屋にバストイレ付きだからプライベートも快適に過ごせる。そんな理想のシェアハウスが、なんと光熱費込みで月々4万5千円!
敷金0、礼金0。しかも家具は備え付けって、誰だって住みたくなる物件じゃありませんか奥様。

もちろん物語の主人公、大学生の理佐ちゃんはウッハウハで『サニーハウス鎌倉』にやって来ます。

迎え入れてくれたのは美男美女揃いのルームメイト達。
超豪華なシェアハウスで、まるでドラマのような生活が始まる…と思いきや前住人が行方不明になっていることが分かり、そこから不穏な影が立ち込めるのです…

 

鎌倉の森の中に立つプール付きの豪華シェアハウス、そこで暮らす男女8人。

これって『テラスハウス』の新シーズン⁉
物語の前半は正にそんな感じで、若者たちのきゃっきゃうふふの青春のあれこれが描かれていく訳なのですが、所詮は他人同士。

新潟育ちで素朴な理佐ちゃんにも、だんだんシェアハウスの闇が見えてきます。
一見仲が良さげに見えても影では悪口を言っていたり、男性を取り合ったり年齢で差別したり。

そこで事件が起きる訳なのですが、この後の展開は物語の帯にだいたい書いてあるなぁオイ…!

こういうのはもっとキラキラした、青春っぽい表紙で『テラハ』っぽさをウリにした方が楽しめた気がー。私は図書館で帯無しバージョンを借りたので、終盤にコレってサイコミステリかよ!?と驚けて良かったです。

 

物語を一言で言い表してしまうとテラハ+サイコ。
ベタ満載なんだけど、ベテラン作家らしく上手くまとまっていて、ゾワゾワ怖くて面白かったです!こういうサクッと読めるミステリー結構好きです。

ちょっと肌寒い夜に、自分の部屋で一人静かに読むことをお勧めします…それではまたー。

 

マーダーハウス

マーダーハウス

 

 

夜の桜を撮りに行く

 職場の歓迎会で飲んだ夫を迎えに行った帰り道、国道沿いの桜が満開だった。

かつて火葬場だったそこは、枯れた蔦に覆われた廃墟になっている。開業当時に植えられた桜だけが咲き誇り、生気を保っていた。

 街灯に照らされた桜と廃墟がとても綺麗に見えて、写真に残したいと思ってしまう。

 

とはいえ私のカメラは今やスマホだけ。フォルダに詰まった写真だって、子どもの成長記録や日々の料理の写真ばかりだ。最後に家族抜きの風景写真を撮ったのはいつだったろう?

なぜだか、どこかに私自身を置き忘れて来てしまったような気がして、バックミラーに映る桜を惜しみながら家路に着いた。

 
夜も更け、風呂を済ませた子どもは眠り、夫も早めに寝ると言った。

 どことなく落ち着かないままでいた私は、買い忘れたものがあると言って車のエンジンを掛け、そっと火葬場へ向かった。

ガードレールに寄り添う満開の桜に、スマホを向けてみる。やっぱり小さなカメラでは、真夜中の美しさを上手く残せない。

それでも久しぶりの夜の空気の甘さに、私は深く息を吸い込んだ。

昔は一人で、車で出かけたっけ。
ブルーマイカのかわいい車、同じ色に揃えたマニキュア。
自動販売機でよくミルクティーを買った。

今の私は爪を青く染めないし、甘い飲み物も滅多に買わない。
けれどあの頃の思い出は、とても温かく優しい匂いがする。

今でもやっぱり、夜が好きだ。
自由が支配する、全てが眠りについた夜。
そうして闇の底で息を潜めて、朝を待つのも好きだ。

やがて訪れる真新しい朝の町を、我が物顔で歩き回るのも好きだ。

 

私がいつか手に入れたと思った夜は、知らないうちに指の間をすり抜けて遠い誰かのものになってしまった。暖かな布団の中で守られて眠る私の子も、いつか夜の王様みたいな顔をして、新しい朝を独り占めするのだろうか?

 

春の夜は甘く柔らかい。
今、夜を手中に収めているあなたに、静寂の中にある自由が訪れることを願う。その軽やかな万能感で、ガードレールを乗り越えて、どこまでも遠く走って行けますようにと。

 

家に帰って写真を確かめる。
夜の桜は案の定、あまり綺麗には見えなかった。でも私は知っている。

 

本当に美しいものは、いつだって上手く切り取れないのだ。

 

 

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今週のお題「平成を振り返る」