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華文ミステリ入門編にピッタリ!陳浩基/ディオゲネス変奏曲

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華文ミステリの第一人者と呼ばれる陳浩基さんの短編集『ディオゲネス変奏曲』を読みました。

2017年に発行された「13.67」は香港を舞台に現代から過去へ、時代を遡る形式の警察小説&本格ミステリというちょっと凝った趣向の本で、2018年の本屋大賞翻訳部門2位、このミス海外部門でも2位、本格ミステリベスト10海外編では1位と、非常に高く評価されている作家さんであります。

 

13・67

13・67

 

 

で、そんな彼の才能が遺憾なく発揮されているのが今回読んだ短編集『ディオゲネス変奏曲』である…という訳。

短編集なのでサクサク読みやすい、なのに正統派ミステリは勿論、ホラーサスペンスあり、SFあり、殺人の起きない推理ゲームあり、なぜかショッカー的な悪の軍団内部事件モノもあり…と盛りだくさんで非常に楽しめました。

翻訳物は読み難い部分もあり、苦手な人が多いジャンルだと思うんですが、華文に関しては同じアジアの作家さんだからか、そういったハードルをあまり感じさせることなくスラスラ読めます!

(とはいえマイルズシリーズにおける小木曽訳みたいな、古典的な文章もそれはそれで味わい深いのですが)

 

全17編と内容は盛りだくさんですが、私が好きなのは裏掲示板でストーカーが蠢く『藍を見つめる藍』、時間を売買できる世界を描いたSF『時は金なり』、皮肉に満ちたメタ小説『作家デビュー殺人事件』、科学技術が発達し、更に全体の進歩を望む発展派が主権を握る世界で古めかしい「探偵」が存在する意義が問われる『カーラ星第9号事件』、講義の形をとった推理ゲーム『見えないX』などなど。

他にも悪のジャガイモ怪人が、秘密基地内部でマッシュポテト⁉にされ、犯人を捜す『悪魔団殺(怪)人事件も面白いし…基本、どの作品も最後にどんでん返しやオオゥ⁉と驚愕させられるオチがあり、楽しんで読めました。

 

一番良かったのは、やっぱりラストの『見えないX』かな?

大学の推理小説鑑賞講義の初日、教授は学生たちに推理ゲームを提案する。

この教室内に一人、見えないX-講座の助手が潜んでいる。
それが誰かを最初に当てることのできた者に成績Aを進呈する、というゲームである。

ゲームは早い者勝ち制。一番最初に犯人を指し示し、理由と証拠を説明出来た人間の勝ち。ただし回答権は1回きり、最初の推理が間違っていれば参加資格を失ってしまう。

学生たちはお互いに駆け引きを繰り広げ、会話の中から犯人を探し出そうとするのだが…というスリリングな推理ゲーム。

設定だけでも面白そうじゃないですか?小説は更に2転3転の展開で、思いがけない犯人の上に思いがけないオチもあり、楽しかったです。

私もこういう推理ゲームに参加したいなー。今体験型謎解きゲームとかたくさんありますよね?是非一回チャレンジしてみたいもんだ、誰か付き合って…と全然作品と関係ないオチにたどり着いて今日はオシマイ!

 

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)