ちょっと前にこんな増田を読んだのです。
ミステリが好きすぎてしょうがないおじさんが、生ける屍の死や七回死んだ男みたいに現実ではありえない事が起きる異種ルールのミステリを教えて欲しい、という記事。
こういう話楽しいですね。
ブコメも盛り上がってて、私も「あれも!これも!」と色々思いついてしまいました。
ちょっと出遅れて、あざなわさんがもう書いてらっしゃいますが。
未読の作家が二人もいて、かなり面白そうなセレクトなんですががが。私のはド定番の古典寄りになってしまった…。とりあえず思いついたので書いてみます。
azanaerunawano5to4.hatenablog.com
アリス殺し/小林泰三
ブコメでも何度か名前の挙がってた小林泰三さん。
「アリス殺し」は、初読のラストで「うわっ!」と声が出た作品。
ホントに面白かった。
主人公は大学院生・栗栖川亜理。
毎夜、不思議の国に迷い込んだアリスの夢を見るようになる。
そして、夢の中の登場人物たちの死が現実社会とリンクしだして…というファンタジー仕立てのミステリー。
なんと続編が今月末に発売予定!
まさか続編が出るとは想像できなかった…。今回はどんな風に欺いてくれるのか?
すごく楽しみにしております。
『瑠璃城』殺人事件/北山猛邦
トリッキーでファンタジーなミステリ、と言ったら北山猛邦さん。
水没と焚書により多くの物が失われた世界のSFミステリ「少年検閲官」シリーズも面白いのですが、今回は一冊完結の「『瑠璃城』殺人事件」を。
城シリーズ、と謳われていますが綾辻行人さんの館シリーズのように単独で読めます。
1989年の日本の最果ての図書館、1243年のフランスの瑠璃城、1919年のドイツの塹壕。時と場所を変えて繰り返される殺人事件の真相は…。
時と場所が次々飛ぶのに、同じような事件が繰り返される理由はかなりトリッキィ。
でも終末SFもので、人ならざるものが出てくる「『クロック城』殺人事件」よりは分かりやすくまとまった作品かな、と思います。
この闇と光/服部まゆみ
ガラッとひっくり返される世界が快感を呼ぶミステリー。
盲目の王女レイアは失脚した父王と共に幽閉され外の世界を知る事なく生きてきた。
父が朗読してくれる物語、それから音楽が彼女の世界の全て。
ところが閉ざされた世界は彼女が13歳を迎えた朝に崩れ去り…。
これも『アリス殺し』のように「うおっ」と声が出ました。
違和感は所々に感じられるのだけれど、まさかここまでひっくり返されるとは、という驚き。
真相を知ったら、もう一度最初から読み返したくなること請け合いのミステリです。
現実ではありえない事が起きる異種…とまでは言えないかも知れませんが、設定をよーく考えると相当歪んでますので、異種ミステリにいれてあげて下さい。
闇の楽園/戸梶圭太
アナーキーでバイオレンスでコミカル、ど変態(褒め言葉)戸梶圭太のデビュー作。
マイラインの営業に力の入らぬ青柳敏郎は、町おこしのアイディア募集を見て「お化け屋敷のテーマパーク」を思いつき、応募すると見事採用に。だが、その町では反対運動が起きて、住民投票で決着をつける事態へ。敏郎たちが反対派の素性を探ると、謎の集団に行き当たった。あるカルト教団が町に道場建設を目論んでいたのだ。破天荒な犯罪をポップなノリで描く著者の衝撃的デビュー作。新潮ミステリー倶楽部賞受賞作を加筆・補強した決定版。
あらすじだけ見ると現実社会のミステリじゃないですか。
でもね、戸梶圭太はいつだって戸梶ワールドだから。
実在したら嫌だから。こんなドロッドロでどす黒い田舎町!
出てくる登場人物たちも、人のわーるい所を煮詰めたような濃いキャラばっかり。
ありえない、と言わせてください(白目)。
ひどい、ろくでもない。でも痛快で笑うしかない、この勢い。
くそったれで面白いミステリ。
あれ?でもよく考えたらどこにミステリ要素がw
ま、新潮ミステリー倶楽部賞受賞作、ってことで。
勢いで読ませる、ありえないギャングスタ・コメディ。
短編集「トカジャンゴ」「トカジノフ」も入門編としてオススメです。
あっ、人は選ぶと思います。コメディだけどかなりお下品なので。
大好きですが、現実社会では絶対に人に勧められない、これが好きだとバレると社会人としての信頼を失いそうな作品。
おまけ:「生ける屍の死」繋がり
異種ミステリ…ではないのだけれど、「生ける屍の死」が好き、とミステリおじさんが言っていたのでそこから思いついた繋がり作品を一つ紹介。
「生ける屍の死」は死者が生き返る世界でタイトル通り生ける屍となったパンク青年グリンが霊園を襲う殺人者の正体を推理する異色ミステリ。
この本の主人公グリンが口の悪いパンク青年なのに、ナイーブで純粋で反骨精神があって、なかなか愛すべきキャラクター。
このグリンによく似ている、と思うのがドン・ウィンズロウ「ストリート・キッズ」の主人公ニール・ケアリー。
- 作者: ドンウィンズロウ,Don Winslow,東江一紀
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1993/11
- メディア: 文庫
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ニューヨークの路上で「ストリートキッズ」として食い扶持を稼いでいた孤児のニール。
ある日財布をすろうとして失敗、その相手グレアムが探偵だったことから組織の使いっぱしりとして探偵業のイロハを叩き込まれながら成長する。
そんな彼は大学院に進み文学を志し、普通であろうとするのだが次々とグレアムからの依頼に巻き込まれ…。
へらず口で、一見冷めてる現代風の主人公ニールの、内に秘めたナイーブさ、実の父のようなグレアムへの屈折した感情がいい。
軽いハードボイルド、と言ったら矛盾してるのだけれど、そういった風合いの作品。
全5作。
あまりに発行スピードが遅すぎて(1巻が1993年、5巻は2006年!)第3作「高く孤独な道を行け」までしか読んでなかったことに今気がつきました。
これから読みます。世界は読みたいミステリで溢れてますね。追いつけない…!
「生ける屍の死」グリンよりぶっ飛んだヒロイン、チェシャが好きなら森晶麿さんの『怪物率』もオススメ。
怪物狂いのご主人様ナイトに仕えるはめになった没落お嬢様ウサギ。 怪物を探すはずがいつも妙な謎に巻き込まれて…というライトな短編ミステリ。
ラストが少し切ない所も、お嬢様な筈のウサギがライターで人を脅し物凄く毒舌な所も『生ける屍』っぽくて好き。
ではでは、少ししか紹介出来ませんでしたが今日はこの辺で。 あなたのおすすめ異種ミステリも良かったら教えてください。