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「非正規雇用」問題について考えてみた

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今日は盛り上がっている非正規雇用問題に参戦。

多分この問題は色んな目線からの意見があった方が全体像が構築しやすくなるのでは、と思ったので自分の身近なことぐらいしか理解出来ていない私もエントリー。

 

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watto.hatenablog.com

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正規雇用→非正規雇用(パート・扶養枠)→非正規雇用(フルタイム)の共働き子アリ主婦の目線から、なぜ自分がこうした雇用形態を選んできたのか、正規、非正規雇用の中で感じたメリット、デメリットを書いてみます。

正直雇用に関する法律関係なんかは相次ぐ改正に頭が追いついていません。
間違いやその当時ならではの話もあると思うので、違う!と思った方はビシバシご指導の程よろしくお願いします。

 

1.正規雇用期:20年前の話

 

一番最初の仕事は地元企業の事務員でした。
田舎はまだ「女の子に学問や手に職はいらない」という考え方が根強く、割とみんな腰掛け感覚で、それでいて「正社員がいい」「事務員がいい」と適性などは考えずイメージだけで仕事を決めていました。

私が入った会社は家族経営の小さな所で、10年以上勤め良い事も悪い事もありましたが最終的には地雷でした。

この会社を辞めた後はなるべく大手企業もしくは官公庁の臨時(ただし派遣会社経由は避ける、お賃金が安いから)で働く、という方針に切り替えています。

家族経営の会社と言うのは本当にフリーダムです。
私は事務員として入り、接遇研修や簿記2級を取らせて頂いたのは有難かったのですが(新卒正規採用のメリット)気が付いたら会社が運営する花屋の店員になっていました。

何を言っているのか分からないと思いますが小さな会社の雇用契約なんて無きに等しいのです。

労働時間も好き勝手に変わり、土日休み8時~5時の仕事が平日不定期休の9時~6時になってました。
新たに契約を交わした覚えはありません。

花屋自体は事務員より性に合い、平日休もどこも空いているのが楽しかったので結果オーライでしたが。

辞めるきっかけは店長という役職に強制的にされたことです。
長引く不況で経営が傾き、残業代が出せなくなったのか私は突然今まで社長が兼ねていた店長の座に就かされました。
もちろん事前説明も承諾も無しです。
給与は少し上がりましたが、この頃から残業が異常に増え、残業代はすべてカットされたので月5万近く損をしています。

店長になる少し前に不妊治療も始めており、毎日手当もつかない残業続き、貴重な休みは病院に行って終わり…という毎日に『何のために生まれて何のために生きるのか』とアンパンマンのようなことを考え出し、突然涙が止まらなくなったのでこいつはやばいと退職しました。

退職はそこそこ揉めましたが、もう辞めるのだからといままでモヤモヤしていた法律上の不備を全部指摘し、労基をほのめかせたら退職金も残業手当も貰え有給休暇も消費でき、キレイに辞職出来ました。

私が巻き込まれたのは今でも問題になっている『名ばかり管理職』という制度。

従業員に呼称上「店長」などの肩書きを与えることで、労働基準法で勤務時間管理の規制外となる監督者を装わせ、残業代の支払い対象から除外する…という手口です。

正規雇用にもこんな落とし穴がありました。

しかし退職後は退職金が貰え、失業保険も2ヶ月後(自己都合の退職でしたので)には貰えるのですぐに生活に困るような事態にはなりませんでした。10年以上勤めていたので給付期間が長いのも有難かったです。

退職後は不妊治療も仕事も少し休むつもりだったのですが、結局2ヶ月しないうちに妊娠し、失業保険は延長手続きをすることになりました(妊娠・出産などによりすぐには働けない人のために失業保険には最長4年の受給期間の延長制度があります)。

多分私の場合ストレスが不妊の要因だったのですね。心と体は思った以上に結びついているのだ、と実感しました。


正規雇用(中小・販売業)のメリット:研修や資格試験が会社負担で受けられる。退職金制度がある会社だったため(ない企業もあります)長く勤務することでまとまった額のお金が貰えた。10年以上厚生年金に加入出来た。気持ちではあるがボーナスが出た。

正規雇用(中小・販売業)のデメリット:正社員という肩書を失うのが怖くて法的におかしいと思う所にも目をつぶってしまった。家族経営のなぁなぁ加減も今考えればおかしかった。
なにより『名ばかり管理職』という酷い手口。給与が納得できるほど上がっていないのに、残業代カットを認めるのは絶対にダメ。

 

2.非正規雇用期(パートタイム):10年前の話

 

一人目の子どもが3歳くらいになった頃から失業保険の受給を開始し、職探しを始めました。

見つかった仕事は9時~4時勤務、土日休みの官公庁の小さな出張所の臨時職員。
給与は7~9万円。扶養控除の枠内で働ける、いわゆるパートという働き方です。

社会保険料は夫の扶養なので掛からず、年金も3号扱いで払わなくていい。100万円以内だったので、住民税も掛からない。

貰える給与額は低いですが、扶養控除という制度のおかげで出費が抑えられ家事や子育てにもゆとりが持てる。

9時~4時という勤務時間なら朝掃除洗濯を済ませ、夕ご飯もゆっくり準備できる。
正直理想的で、できることならばこの仕事を長く続けたい…と思っていました。

つまり私はらくからちゃさんの言う『その雇用体制が本意である』非正規雇用労働者だった訳です。

しかしこのままでは危険だ…と思うようになったのはWattoさんがおっしゃっていた「雇止め問題」。

その頃Wattoさんの記事にあったように『有期雇用契約者は契約期間が通算5年を超えた時には本人の申し出により期間の定めのない無期労働契約に転換できる』という労働契約法の改正があり、それが私のネックになりました。

それまでその職場には延長期間の期限はありませんでした。
しかし労働契約法の改正により最長4年、という文字が付け加えられるようになりここで長く勤務することは出来なくなりました。

またその頃扶養控除の廃止が検討されはじめていました。
扶養が廃止になれば100万の壁に縛られるのは無意味です。

廃止が決定した頃にパートからフルタイムを目指すとライバルが増える。

その頃二人目の子どもを産み、1歳で保育所に預けた私は36歳になっていました。
将来の扶養制度の廃止を考え、また二人の子どもの養育費のためにもフルタイムで働くことにしました。


非正規雇用(パート・扶養)のメリット :自分の希望する時間の枠内で働ける。子どもが熱を出した時など、給与カットされるので休みやすい。扶養なので社会保険、年金、住民税の負担が無かった。

非正規雇用(パート・扶養)のデメリット:ボーナスが出ない。時間給なので休んだ分だけ収入が減るなど安定しない。有給は少なく、夏休み冬休みなどもない。忌引休暇などもなく、保険にも加入していないのでその職場の福利厚生は利用できない。

 

3・非正規雇用期(フルタイム):現在

 

正規、非正規(パート)を経て、今は非正規のフルタイム。

本当は雇用期間の定めのない正規雇用が第一希望ですが田舎ではなかなか条件にあった仕事が見つからない。
非正規の方が時間が合い、ボーナスが出なくても年収では上(正規雇用には様々な福利厚生がありますが)だったので今は臨時社員と言う名前で働いています。

 

最初に就職先を考える時結婚後も長く勤められるかどうかをよく考え、産休や育休制度といった福利厚生のしっかりした会社を選べば転職で苦労しなかったかも、と今は思います。
ただ会社が倒産する、という事態もあるのでそれだけで安泰、とは言い切れませんが。


今の仕事はボーナスは出ませんし、残業はありません(定時で帰れるのは子持ちには有難いですが)厚生年金、社会保険には加入しています。住民税も給与から引かれています。
契約期間はありますが、雇止めは最近廃止されました。

しかし無期限労働に転換できるまで長く働けるか、はどうでしょう。
いつ雇止めにあってもいいように、条件にあった正社員の職を探して行くか、それとも副業収入を増やしていくべきか。

雇止めという不安、有給や夏休み冬休みが職員と比べて少ない事を除けば(しかし残業なしで働けているので仕方がないとも言えます)文句のない職場です。
福利厚生も全てではありませんが多少は恩恵を受けています。

 

しかし実は社会保険も、「とりあえず社会保険に入っていればお得」では無いのです。様々な種類があるのでその所属によって受けられる恩恵が違います。(一度らくからちゃさんが記事にされていたと思います)

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例えば公務員が入る共済組合には『災害給付』という特別な制度があります。
地震や災害で組合員が死亡したら弔慰金、住居や家財に被害があった場合には見舞金が支給される。
これは国保や健保にはない制度です。

一見同じように見える社会保険にも、所属によってたくさんの格差がある。

もちろん年金もそうで、今の年金制度は国民年金と厚生年金の2階建てになっているので通常の国民年金(基金や付加年金に加入しなければ)だけでは到底生計の成り立つ額にはならない。

正規の間にも格差はあり、正規と非正規では更に格差がある。

 

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これがしっきーさんが言う、『今の社会福祉は(社会保障、と言った方が近いかもしれない)会社にくっついている』という言葉の意味。

 

現在のセーフティネットは3つの網で出来ています。

第一が雇用保障、第二が社会保険、第三が生活保護。

第一が雇用保障、つまり雇用契約なのでフリーランスはまずはここで振るい落とされてしまいます。
第二の社会保険も、医療保険は国保とそれ以外では格差があり、社保と共済でも格差がある。

今現在の3つの網は現代の雇用形態、新しい働き方には対応しきれていない。
だから生活保護に陥る前の「若年貧困層」なんて問題が出て来たのではないか、と私は考えています。

 

正規の間にも格差があり、正規と非正規は間には更に明確な格差がある。
そして同じ非正規でも社保加入者、国保加入者の間で更に溝がある。

そして更に国保加入者の間でも、現行の市区町村運営の国保では住む地域によって同じ年収でも保険税(料)が違う、という格差がある。

 

私はWattoさんやしっきーさんと同じように、正規と非正規の格差、問題は確かに多数存在していると考えます。

更に踏み込んで言えば、こうした溝を埋める鍵の一つは、保険者が分立している現行の健康保険制度にあるのではないか、と思っています。

 

国保はもうすぐ各市町村運営から都道府県単位化される予定です。

 

yutoma233.hatenablog.com

 

今現在の世帯所得に応じた計算方法はまだ変わりませんが、町や村で自由に決めていた数字は県単位に是正されます。
具体的な数字はまだ公表されていませんが、極めて高かった地域は保険料が安くなり、逆に標準より安かった地域は上がるでしょう。

日本は1961年から国民皆保険体制の国ですが、国保は赤字運営で、若年層への負担があまりに高すぎる。
また、社保にはある扶養という制度が国保にはありません。

国民皆保険を謳うのなら、せめて国保の地域格差を無くし、年金のように保険料を均等化すればもう少し全体の負担は楽になるのではないでしょうか。


それから社会保険も厚生年金のように一元化して国保と社保、2階建ての保険とすれば均等であり格差が減ると思います。

この考え方は前回語ったベーシックインカムに似ています。


均等化、一元化することで事務効率を上げ、掛かるコストを下げる。
額を一律にすることで差異の解消をもたらす。

今までは収入に応じて保険額が変わっていましたから、扶養制度のように150万円以内なら100万以内に収めた方がお得、などというあえて「働かない計算式」がありました。

保険も収入に関係なく負担額が一律なら「働けば働いただけお得」という意識が生まれ労働意欲の増進に繋がるのかも知れない、と思います。

ただそうすると、高収入で労働意欲の高い者は負担が今までより軽くなり、病気や事情によって働けない者は負担が増える、という新たな格差が生まれてしまう。

しかしみんなにお金を分配することで生活保護を廃止するベーシックインカムとは違い、保険料を均等化するやり方なら払えない人は生活保護で救いつつ、全体の就業意欲を高めることが出来る。

 

国保の改正案から見ても、これからの「一億総活躍社会」はそうやって労働意欲を上げて行くようになるのでは…と想定しています。

 

 ともかくwattoさんがおっしゃるように「正規」「非正規」という語を超えて、「正規雇用労働者も非正規雇用労働者も、同じ労働者として手を携えて、共通の問題の解決にあたろう」と思うことが一番大切。

その意識を持ってこれからの国保改正、それから今年1月に策定されたばかりの「正社員転換・待遇改善実現プラン」は私達の働き方をどう変えて行くのか、本当に実現可能なのか。注意深く見守って行かなくてはと思っています。

 

[ニュース]正社員転換・待遇改善実現プランの決定について(厚生労働省) ... - 『日本の人事部』

<正社員転換・待遇改善実現プランの主要な目標>
■不本意非正規
○不本意非正規雇用労働者の割合(全体平均):10%以下(平成26年平均:18.1%)

■若者
○新規大学卒業者の正社員就職の割合:95% (平成27年3月卒:92.2%)
○新規高校卒業者の正社員就職の割合:96% (平成27年3月卒:94.1%)

■待遇改善
○正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の縮小を図る。

 

 

今はまだ「プラン」。
どうやって机上の空論を少しでも具体化していくのか、が鍵です。