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【直木賞候補作】冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」感想

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今日は直木賞候補作品、冲方丁さん「十二人の死にたい子どもたち」感想。

この本、去年の10月発行でして。
実は新刊が出たばかりの頃図書館で見かけたのに、あらすじを読んで棚に戻してしまったという因縁の一冊です。

12人の自殺志願の子どもたちが集まってそれぞれの「死にたい理由」を語り合うーというあらすじ、病院を思わせる白い表紙、赤い文字に『重そう…シリアスそう…」と棚に戻してしまったんです。

シリアスな本、社会派な本も嫌いじゃないんですが、体力がいるもんで…。
その時は手応えある本より、手軽に読める一冊を探していたんですね。

 

ところがたまたま直木賞候補作品を眺めていたらこの本の名前が。

もしかして、エンタメ系?
そう思って読んで見たら当たりでした!
「マルドゥック・スクランブル」「天地明察」の冲方丁が書く初のミステリ。
すごくすごく面白かったです。

 

物語のあらすじ

 

十二人の死にたい子どもたち

 

ネットで知り合った、12人の死にたい子どもたちが、今は使われていない病院に集まる。ところが12人しかいないはずなのに、部屋には最初からベットに横たわる「13人目」が。
彼の死因は何なのか?これは殺人ではないのか?
12人の子どもたちは多数決で、自殺をすぐに決行するかどうかを決めるのだが…。

 

読む前は死にたい子ども達、という設定に、いじめや虐待が浮かんでしまい、重そう…と敬遠していました。

登場人物たちは中高生。
しかし大人びた考え方の子が多く、そこまで悲壮感がなくて助かりました。

また、この物語は「誰が13人目を殺したのか?」というミステリ。
個々の感情は深く掘り下げすぎず、群像劇として三人称で物語が進むので、雰囲気が乾いているところも良かった。
これ、子どもたちの一人称の物語だったら感情移入しすぎるというか、かなり重い話になってたはず。

 

「蒼穹のファフナー」脚本をやっていた冲方さんらしく、12人のキャラクターが生き生きしているのも良かった。

頭のいい子、荒っぽくみえるけど面倒見のいい子、大人しそうに見えるけど怖い子。

すべて病院内で、しかも椅子を囲んで話し合うシーンが続く物語なのですが、それぞれのキャラクターがクセありで、それぞれの言葉から間違いや矛盾を探していく人狼ゲームのような物語なので、スリリングで面白かった!

爽快だけど少し癖のあるラストもいい。
明るく希望がある…でもこうきたか!と手応えある終わり方で、余韻があります。

とにかくこの後どうなるの?が気になって、一気読みしてしまいました。
ドキドキする群像劇、って感じかな。

それぞれのキャラクターやセリフも精緻に考えられていて、丁寧に読み返せばまた違う魅力が感じられそう。

表紙からは想像つきませんが、ラノベっぽさもあり、かなり読みやすい本でした。

 

156回直木賞の行方は?

 

さて、第156回直木賞は19日の夜(つまり今夜!)発表なんです。
今回の直木賞候補作は5作品。

第156回直木三十五賞 候補作(出版社)
・冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(文藝春秋)
・恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)
・垣根涼介『室町無頼』(新潮社)
・須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社)
・森見登美彦『夜行』(小学館) 

実はこのブログでは今回の『十二人の死にたい子どもたち』を含め3作品レビュ―しております!

 

yutoma233.hatenablog.com

  

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まぁ、今作はともかく他2作品はたまたま読んだんですけど(笑)

垣根涼介さん、須賀しのぶさんは未読なんですが、今回はどの本が賞を取るんでしょうね?

個人的には『蜜蜂と遠雷』が一番ワクワクしたんですが…でも静かな『夜行』もいいし、読みやすいのに精緻な『十二人の死にたい子どもたち』もいい!

候補作を読んでいる、というだけでも賞レースに参加している気分で、結構楽しめるもんですね。

ではでは、今夜の発表を楽しみにしているおのにちです。

【追伸】今回の直木賞は恩田陸さんでした!ついに…おめでとうーー!

 

十二人の死にたい子どもたち

十二人の死にたい子どもたち