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生涯モラトリアム?大人になるとはどういうことか

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週末に思春期の子供に関する講演会に行ってきた。
その中で「大人になる」とはどういうことか?と言う話が出てきた。

キーワードは「3つの自立」である。
自己選択、自己決定、自己責任。

その三つを果たして初めて自立した大人と言えるのではないか、と講師は語っていた。

しかし体の成熟度と心の成熟度には乖離がある。
さらにホルモンバランスも相まって思春期の子供は不安定になる、また社会構造の変化によってモラトリアム期間が長くなり、自分が大人である、と実感する時期も遅くなっている、と言う話だった。

社会の変化でオトナを引き受ける機会が減った、と言う話はかつてシロクマ先生も書いていますね。

大人は「なる」ものじゃない。大人は「やる」もの。「引き受ける」もの。 - シロクマの屑籠(夏休み体制中)

 

大人になりきれない人の話

 

大人になりきれない人…と聞いて思い出すのは10年ほど前、物産館的なお店に勤めていた時に出会った人のことである。


その店はちょっと変わった棚作りをしていた。

子育ての終わった後50代、60代の主婦を職員として正採用、自分の担当する棚を一つ持ってもらう。
店長や上司とも相談しながら、ある程度自分の裁量で、売れると思うものを仕入れ、POPやディスプレイなども自分で作成する。

そうすることで店に個性も生まれるし、職員のやる気も増してくる。
買う側としても、どの商品を聞いてもすらすらと説明が書いてくる、と好評である。
最近はこういう作り方をしている店が多く、品揃えも多彩で魅力的である。

いわばおらが町のビレバン。
昨今の道の駅、物産館ブームはこんなふうに、そこでしか買えない魅力的な品揃えにこだわった結果だと思う。

大人未満、な方は当時50代。
そのお店に新規採用された女性で、小柄でおとなしい印象だった。

店の求人には業務内容に発注から広告作成、ディスプレイまで、と幅広い職務内容が書かれ、未経験者歓迎!好奇心の強い方求む、と記載されていたため、しっかりした雰囲気の方が多く、その方のように儚げなタイプの人は珍しかった。

その店に勤めていた私は販売管理や発注に関する指導、もう一人若い男性がPOP作成ソフトの指導を行っていた。接客販売など、全般的なことは店長が担当。

ところが、パソコンを前に使い方を教えよう…としたとたん事件は起きた。

「えー!パソコンなんて使えません!無理無理無理無理!」
体の前で手を激しく振りながら、その方が逃亡してしまったのである。
呆然とする事務室。

50代、60代の女性を採用するのだから、パソコンは家になく、扱ったこともないのが普通だろう…という意識はある。
そのため店のマニュアルは大変詳しく、電源を入れる所から図解入りで作られていた。
それが一人に一部づつ配布される。

私も若い男性も、聞かれたことにはいつも丁寧に答えるようにしていたし、パソコンって思ったより簡単!とバリバリ上達する人も多く、みんなすぐに指導が要らなくなってしまうレベルだったので、そこまで激しく拒絶する人は初めてだった。

その後も、バーコード入りの値札を作る機械、レジシステムなど、こうした店舗では当たり前の機械も全て拒否。

そうした説明をしようとすると「無理――!」と逃げ出し、トイレやバックヤードの掃除を始めてしまう。頭を使うことは苦手だから、とミーティングさえ出てくれない。

掃除は別会社と契約しているから社員はやらなくていい、それより自分の仕事をして下さい、と店長が言っても無理、の一点張り。

最初の一か月は試用期間だったので、これは適性がないから仕方ないね、本人も分かっているだろうし…となった。

10年前に50代だから、今は60代。
その年代だと、パソコンや新しい機械に抵抗のある人は未だに多いし、向き不向きのある話だから正直仕方ない、と思っていた。
自由裁量のある仕事も、言われたことだけしていたい、という人には向かないし。
荷物が重くて腰を痛めるし、祝祭日など人が休む時ほど忙しい…というデメリットもあり、子持ちの私には結局ここが合わないので辞めてしまった。

なので無理、と辞めるだけなら、何の問題もなく、すぐにその人のことも忘れてしまうはずだったのだ。

ところが残念ですが不採用で…となった次月、彼女は夫を伴って職場にやってきた。
彼女の旦那さんは事務室で、店長にこんな風に言ったのだそうだ。

 

妻はパソコンや機械が苦手だけれど、その分トイレ掃除など人の嫌がる仕事を率先してやったと言っている。みんなが休んでいるときも、一人で働いていたそうだ。機械が出来ないからダメだ、と言うが妻は自分の出来ることを精一杯やっている。他人の頑張りを認められないとは何事か!

怒られた店長は○○さんが主に頑張ってくれたのは、契約している清掃会社の仕事ですから、よろしければそちらを紹介しましょう、と即突き返した。

 

…なかなかショッキングな出来事だった。

みんなが座っている間も、というのは多分ミーティング中の話だと思う。
ミーティングも頭を使うのは無理、と拒絶し一人トイレ掃除に行ってしまう彼女のことを私たちはサボっている、という認識だったのに、彼女の中では『一人で働いている』に変換されていたのか!

駄目駄目、が多すぎる彼女に、あれだけ出来ないことが多いのでは肩身も狭いだろう、店長も一か月と言わず早く辞めさせてあげたらいいのに…それでもめげずにニコニコちゃんと来るから根性あるよね、と話していた私たち。

あのニコニコは辛い気持ちを隠して明るく振る舞う演技ではなく、本気で頑張っている、職場からも許容されてる、と思っていたのかもしかして!?

職場はしばらくザワザワしていた。

 

大人になれない人とのつきあい方

 

私は彼女のことを幼稚な人だと思う。
でも今も昔も、大人になりきれない人たちは確実に存在している。

大人になれないのは、悪い事じゃない、一生モラトリアムでいいじゃん、なんて意見まである。

president.jp

 

彼女のことも、家族が許容していて、彼女自身もそれでいい、と思うならそれでいいんだと思う。

ただ私は大人だから、こういう人たちと出会って、世話を焼かなくてはいけない機会に恵まれる度に裏口で段ボール箱を蹴っ飛ばしますけれど。

私の思う『大人』は仕事や対人関係で抱えたむしゃくしゃを理不尽に子どもや夫にぶつけない人。だから段ボールは心の必須アイテム。それから時折こうやってブログにも書くんですけどね。多分死んだら段ボール地獄かブログ地獄に落ちるんだと思います。

 

…そんな話はさておき、大人になりきれない人はこれからも増えていくんだろうと思う。

PTAやら、地区役員やら、責任のある仕事のタライ回しが起きる度ゲンナリする。引き受けるのは結局いつも同じメンバーばかり。

誰だって忙しいし、嫌なんですけど…。
何もやりたがらないくせに、規模を縮小しようとすると子どもがカワイソウー、とか言い出すバカは脳味噌にゆだったホウレンソウが詰まってるんだ、と思うようにしている。

今の私に出来ることは、講演会で教わったように子どもたちを3つの自立が出来る人、に育て上げることでしょうか。
しかしこれがなかなかの難題で…。

適度に手を離し、自由にさせてやる一方で情報収集や監視を怠らない。目の前にある物はすべて当たり前だ、と感じがちな子どもたちにきちんと愛されている、大切にされているということを実感させる…!

終わらない平均台の上を歩いていくようなバランス感覚が必要だな、と思いました。
グラグラする私の頭の中にもグダグダのホウレンソウが詰まってるのかも知れませんね。

正しい大人ってなんなんだーー!
とりあえずゼルダとドラクエは大人も遊んでいいですよね…?

 

 

そういえばちょうどこういう症候群の話を昔書いたので、過去記事も良かったらどぞ!
ただ自分苦労症候群も、他人の便利に~も、どうもしっくりこないんだよね…適切な略称はなんだろう?

blog.tinect.jp

 

yutoma233.hatenablog.com