おのにち

おのにちはいつかみたにっち

美人の欠点

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かつて、素晴しい美人で仕事が出来て声もキレイで、みたいな完璧に近い女性と仕事をしていたことがある。彼女はほぼほぼ、完璧だった。
たった一つの欠点を除けば。

彼女の欠点。
それは、仕事が暇になると店内のお客さんを眺めて批評を始めてしまうこと。しかもおおむね悪口。更にブスに厳しい。コテンパンに厳しい。

地蔵に似てる、モアイ顔でミニスカ、チークが濃すぎてオカメインコそっくり…。
その素敵な声で、新色の口紅に染まった形のいい唇で、そこまでマシンガントークしますか?しかもそんなに楽しそうに!?

彼氏連れのブスなんかもう、コテンパンだ。
「なんであんな顔で、堂々とイケメンを連れて歩けるんでしょうね?」
「不釣り合いなカップルって、恥ずかしくないんでしょうかね?」

 

なにが恥ずかしいのか、私には一つも分からない。
しかも彼女が『オカメインコブス』と称した女性は顔も体型も私にそっくりだ。

スイマセン、私は道を歩いちゃいけないんですか?オカメが流行りの服を着たら恥ずかしいんですか?先ほどから私の心がえぐられまくりなんですけど!?

さすがにやんわり抗議をしたのだが、彼女には一つも通じなかった。
「やだー、小野さんは違いますよー」それで終わり。

そんなんで済ませられると思うのか、と暗い気分になったのだが、その後別の同僚から彼女の離婚理由を聞いてから何も言えなくなってしまった。

 

ダンナの浮気、しかも相手は自分よりブスだった。

 

完璧な彼女は自分に釣り合う完璧な男と幸せになった…はずだったのに、その幸せは壊れてしまった。しかも相手が自分よりブスだったことが絶対に許せない。

そうやって傷つけられたプライドが街中のブス品評会に繋がった、と思うと。
…何も言えないよね。

とは言え、彼女の悪口オンパレード大会を聞いていると腹の中では私に対しても同じようなことを思ってるんだろうなー、と凹んでしまってどうも心が開けなくなり、業務外ではあまり話しかけなくなってしまった。

周りの同僚たちも同じ気持ちだったらしく、彼女は少し孤立して、そのうち仕事を辞めてしまった。

 

それからだいぶ時が過ぎて。
たまたま街中で彼女に会った。
彼女は再婚していて、相変わらず美人で、イケメンの旦那様とカワイイ子どもを抱いていた。
その姿は幸せそのもので、笑顔に満ち溢れていた。
小野さーん!なんて楽し気に手を振られたので、立ち止まって少し立ち話をした。

こんなに幸せそうで、満たされているのならあの頃の悪口癖は封印された黒歴史なんだろうな…と、私は彼女に抱かれた息子を褒めた。

あなたにそっくり!将来楽しみだね、なんて。

ところが。返ってきた言葉は。

「そーなんですよー!保育園でもモテモテなんですけど、寄って来る子がブスばっかりでー。まだ子どもだから身の程を弁えるって言葉を知らないんですよねー」

お前!お前はっ!
ここまでくると変わらない所が逆に清々しくて、私はわはは!と笑ってしまった。

 

私は彼女に私の思う傷を押し付けて、それを埋めるための悪口なのね、と勝手に理屈をつけようとしていた。

そしてそんな風に過剰な悪口を言う人に対して、何か現状への不満があるのではないか、だからこその悪口なんじゃないか、そう思うとなんだか可哀想…と勝手に同情して一歩引いてしまっていた。

けれど、もしかしたら彼女は昔から変わらず『ブス嫌いの性格が曲がった美人』だったのかも?なんて思うと私の遠慮や配慮は何だったんやねーん!?って感じである。

 

きっと私はこれからも、他人の怒りや態度に、『上手く行かない人生への鬱屈が…』とか『何者でもない自分への不安が…』なんて勝手な取説をつけて身勝手に理解しようとしちゃうんでしょうけど。

 

あっ、この人性格悪いんだな。

そう割り切った方が、人付き合いは楽になるのかも知れないな、なんて思いました。
今日はそんな感じでーす、GW感0だな!