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豊満たる女王の物語-『炎と茨の王女』

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この週末はレイ・カーソンの『炎と茨の王女』シリーズ三部作を一気読みしていました。ジャンルでいうとYAファンタジーかな?

 

炎と茨の王女 (創元推理文庫)

炎と茨の王女 (創元推理文庫)

 

 

ストーリーは神に選ばれし運命を持つ王女が16歳で他国に嫁ぎ、様々な困難を乗り越えて成長する姿を描く…という王道ファンタジーな訳ですが。

神様に選ばれた主人公、エリサの個性的なキャラクターと、彼女がその身に帯びたゴットストーンという不思議な石の謎が面白くて、グイグイ物語に引っ張られるようにして読み終えました。

 

物語のあらすじ

 

主人公エリサは16歳、とある王国の第2王女です。
いずれ国を継ぐのはエリサの美しく賢い姉。
エリサ自身は自分がいつか他国に嫁がされることを予期しながらも、好きなものを食べ好きな本を読み勉学に励み、穏やかな食っちゃ寝生活を送っている。

神がその使命と共にもたらすという、ゴッドストーンを体に帯びているけれど、自身の使命には今だ自覚がありません。

 

そんな彼女のコンプレックスは姉のように美しく、優れていないこと。
毎年太っていくしていく自分の姿を直視するのが嫌で、鏡まで避けてしまう始末。

また、そんなストレスを紛らわすために更に過食に走り、歩くことさえ辛くなってしまうという悪循環の日々。

 

エリサは120年に一度生まれるという神の石をその身に帯びた特別な人間なのに、まるで自分に自信が持てず、過食に走ってしまうヒロインです。
実際には3か国語を話し、戦術や古代の歴史にも詳しい、非常に賢い女性だと言うのに。

 

実はエリサの家族は、彼女がその身に希少なゴット・ストーンを宿していることを理由に、様々な危機を避けるため宮廷の奥で箱入り娘として育てたのですね。
しかしそんな隠居生活が、国を支える姉の活躍と相まって、彼女の自信のない性格に繋がってしまう。

そうやって、ふくよかな自分の体や美しい姉にコンプレックスを抱きながら育った王女様は、心の準備も出来ないうちに他国のイケメン国王の元に嫁ぐはめになります。

しかしその結婚は謎と欺瞞に満ちていてエリカは命を狙われたり戦に巻き込まれる羽目に…と第一巻からトラブル続き。

なお表紙は、どこが豊満な肉体に悩む王女さまやねん⁉って感じですが過酷すぎる現実が痩身効果をもたらした、ダイエット後の姿です…。

 

食いしん坊のお姫様

 

食いしん坊で自分に自信のない少女だったエリサが、何も知らないまま守られている暮らしはまっぴらだ、と自分の足で歩きだしてどんどん世界を変えていく。

そして自分にとって本当に大切なものは神様のくれた特別な石でも、美しさでもないと気がついていく過程、そして自分が自分を美しいと思えたら、誰の賛美も要らないのだと悟るシーンが好きです。

 

いつだって大切な物はすぐ近くにある。
でもそれを知るために、私たちは生きて歩いて行かなくてはならないのでしょう。

ふとっちょで自信がなくて、でもいつだって周りの人を大切に思っている王女さま。
その気持ちで仲間を増やし、少しずつ『自分が持っているもの』への自信を持つようになって行く過程が素敵なジュブナイルで、面白かったです。

ヒロインの持ち前の頭の良さ、恋をしてもそのために自分の使命を疎かにしない姿勢もいいですね。

王道でありながらどこか現代的な女の子の強さ、逞しさを描いたファンタジィ。ボリュームがありますが、今時な文体の翻訳でとても読みやすい。

秋の夜長にファンタジー、とってもオススメです!

 

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