読書の秋である。
雨の日が続いていることもあって、最近私の職場ではお昼休みに読書をする人が増えている。
いつもバッグに文庫本を入れている私にとっては嬉しいブームだ。
静かなオフィスで、ゆっくり読書に集中…と思ったのだが。
本を読んでいるはずの、隣りの席がなんかおかしい。
音は控えめだが、拳を振り上げ足を踏み鳴らし、明らかに笑いをこらえながら本を読んでいる。
マジか。
もともと目にうるさい(リアクションがいちいちデカい)男だとは思っていたが、この現代社会においてチャップリンばりのサイレント・コメディを演じながら読書をする奴が実在するとは。
さすがにチラッと一瞬隣を見てしまったが最後、奴はすかさず食いついてくる。
「ここ!ここが面白いんですよーー!」(本を指さしながら。このくだりももちろんサイレント。)
礼儀として、一応目を通す。
落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する…
マーフィー!?令和の今、『マーフィーの法則』を読んでいる?
しかも、笑い転げながら!?
正直コロナ対策以上の距離を取りたくなったが、相手は職場の同僚である。
礼儀として、目で笑う(マスクがあってホントに良かった)。
とりあえず人はひと、私はたわし。
また静かに読書に没頭する。
先週くらいから『天冥の標』を読んでいる。
第一巻は割と不評らしいのだが私は最初から面白かった。
宇宙のはてで、圧政を強いられている移民たち(の脇で机を器用に無音で叩きながら笑う隣の人)。
そんなクラシカルなSFが次巻では現代に舞台を移し、今の時代を思わせる疫病の話になる。
そしてまた話はまた未来に戻り、疫病の発症者たち、携わった医師たちがその後どうなったかが分かる。
物語の細い線が少しづつ精密に織り込まれていき、やがて…
(ここで差し出されるマーフィー。「壊れた機械は修理を依頼した途端に動き出す…」)
ホント、定期的にマーフィー差し込んでくんのやめろや隣の人!!
子どもの時から、超つねずっね思っていたのですが、勉強やピアノの練習時は「集中してるから…」と気づかって貰えるのに、読書は蔑ろにされがちなのなんで?
正直勉強しながらでも話せるし、楽器の演奏中だって話せる気がしない?
個人的には読書の方がよっぽど集中しているので、あまり話しかけないで欲しいものなのですががが。
それとも他の人のいる場で一人読書に耽ってしまう私の方が、コミュニケーション的に無作法、なのでしょうか…?
とりあえず隣のチャップリンと「マーフィーの法則」はセットにしてブックオフに売り飛ばしたい、と願う読書の秋です!
今日は以上!