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クレシェンド/竹本健治~ミステリーじゃなかったよ

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ネタバレあり、注意です。

 

 

 

竹本健治さんの「クレシェンド」読了。

 竹本さんの本は、「匣の中の失楽」「キララ探偵す」「フォア・フォーズの素数」しか読んだことがないので、こちらを見かけて読んでみました。

 

主人公八木沢はゲーム関係の会社に勤務している男性。ある日資料探しのため初めて入った職場地下2階の倉庫で、そこの廊下だけが他の階とは位置関係が違うことに気付く。

そしてその場所で幻覚に襲われ、意識を失ってしまう。

 その後彼が地下2階について調べると、その場所がもとあった軍の施設をそのまま利用したものなので上とはつくりが違ったのだ、という事実がわかってくる。

 知人にその話をすると、その場に居合わせた彼の姪、真壁岬(18歳くらいの美少女、浪人中)が興味を持ち、調査を手伝ってくれるという。

 かつてあった軍の施設は研究施設で、行われていたのは軍の能力や精神性の向上を目的とした、日本民族・文化の特性の研究であった。そしてその研究に携わっていた人物が寄稿した文章から、彼の両親に諍いが絶えず、親を疎んじて育ったと知る。そして成人してからなかなか母親の顔が思い出せなくなった、という一文を見つけ驚く。

 八木沢もまた、同じように自分の母親の顔が思い出せなくなっていたのだ。

 研究者との間になにか共通したものを感じながら、八木沢はカウンセラーや岬の手助けを受けながら調査を続けていくのだが・・・

 といったストーリー。

 どうですか、私のあらすじでは伝わらないかもしれないですが、私はこのへんまでものすごくわくわくして読み進めましたよ。

 メインは地下二階と、八木沢が見る幻覚はなんなのか、という話なんですが、間に八木沢が携わっているゲーム制作の話が差し込まれ、それも軍の研究と似た日本神話に関係した内容で・・・と、すべて関連性があるのでは、と思わせます。

 

 ところが物語中盤、八木沢はゲームの取材旅行に出かけた古墳でも幻覚に襲われます。その後も症状は思わしくなく、仕事も休職し、どこかへ逃げ出したい、とすべてを投げ出し無人島へ。心配する岬も同行します。

 島での生活で少し改善されたかに見えた彼の幻覚はさらに肥大し、最後には岬や島に住む老人の目にも見えるようになります。

 激しい嵐と、巨大な龍の幻覚に襲われながら、岬は米袋を纏い、アマノウズメに扮して踊り幻覚に打ち勝ち、八木沢は幻覚から解放されます。

そして、清々しく船に乗り島を後にして終わり。

 

 えー!地下二階は!研究者との因縁は!と、すぐ検索しましたよ。

そしてそこで初めて私は自分の大きな勘違いに気が付いたのです。

ミステリーだと思いこみ読んでいたのですが、これジャンル『ホラー』だよ・・・

 ホラーとして考えると、そんなに怖くないけどこれはこれでありなのかと。

でももう少し地下2階の話を掘り下げてもらえると、ミステリーとして成立していたのでは、と思います。最初のほうは、「クラインの壺」とか「レベル7」みたいな雰囲気ですごく面白いんですよ!

まあ、終盤の驚愕も含め、なかなか得難い経験だった・・・としておきます。

 

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