おのにち

おのにちはいつかみたにっち

バレンタインの義理チョコと本当の気持ち。

スポンサーリンク

もうすぐバレンタインデーなので、今日は遠い昔初めて本命チョコを贈った時の話を。

 

f:id:yutoma233:20160208201933j:plain

 

あの頃私は17歳、高1の冬。
周りの友達に比べて奥手な性格でした。

 

中学時代は転校したばかりで周りの友達に馴染むのに必死。
女友達でさえ数えるほどで、好きな人なんて言っている余裕が無かった。

高校生になり、友達も増えて普通の女子になってきた最初のバレンタイン前。

 

絶望した。

 

周りはみーんな彼氏がどう、誰々君にチョコ贈りたい、なんて盛り上がっている。
17歳になって好きな人も彼氏もいないのはグループで私だけだった。

今になって考えたら恋愛なんて個人差だし焦らなくても良かったのだけれど。

あの頃は周りに足並みを揃えないと、という強迫観念があった。
私は一度転校生として苛められたから、余計そうした意識が強かったのかもしれない。

 

周りに合わせるため、私は恋に落ちることにした。

 

本当は彼氏なんて欲しくなかった。

 あの頃はやっと友達が増えて、女同士きゃっきゃうふふする日々が楽しくてたまらなかった。
みんなで一緒にチョコレートを選んで、どうだった、なんていう報告会に混ざれればそれだけで良かった。
バレンタインというイベントに参加できないことで周りと距離が出来てしまうことだけが怖かったのだ。

自分勝手だけれどそんな理由で、私は恋活をすることにした。

 

そうして、実に簡単に「恋に落ちた」ことにした。

 

相手は名前も知らない先輩。

ベンチに座る私の前を通りかかった彼はなぜかたまたまその場でつまずいた。

転がるトートバックの中身。
ペンが一本、私の足元まで転がってきた。

はい、と手渡した瞬間彼と目があった。

黒フレームのメガネ、紺のダッフルコート、大人しそうな顔。
ごく普通の上級生。

 

この人にしよう、と私は思った。

 

彼が立ち去った後私は隣の情報通の同級生に彼の事を聞いた。
3年生で吹奏楽部の副部長。

どうしたの、と聞く彼女に私は答えた。
好きになったかも、と。

 

そこから先はとんとん拍子だった。

今まで好きな人のいなかった私の恋に私より友達が盛り上がった。

吹奏楽部の同級生、吹奏楽部に他の好きな人がいる友達が数人でのグループデートを早速企画してくれた。

 

そうして放課後にカラオケボックスへ行くことになった。
学校を出て男女合わせて10人くらいで賑やかに歩いた。

結構距離があったので、自然と列が離れていきその内男女のペアがいくつか出来た。

友達が気を使ってくれたのかもしれない。

私の前には自然にダッフルコートの先輩がいた。

急にカラオケボックスに寄ることが決まったので、私のリュックの中には本が一杯詰まっていて重たかった。

何度か肩ひもを直していると、先輩が振り返って「持つ?」と手を差し出してくれた。

「いいです!」
どきまぎして、すぐに断ってしまった。

そう、と先輩は笑ってすぐ前を向いた。

結局カラオケボックスでもたいして話さないままグループデートは終わった。

 

バレンタインが近づき私は友達と一緒にチョコレートを買いに行った。

彼氏のいる友達は手作りのチョコ、片思いや彼氏のいる人にチョコを贈る人は買ったチョコレートを贈ることが多かった。

深く考えることもなく、友達が買ったおしゃれで手頃な値段のチョコレートを真似して買った。

帰ろうと思ったとき、一人悩んでいる友達が目に入った。

「先に帰っていいよ」
彼女はそう言ったけれど、なんとなく気になって私は彼女に付き合うことにした。

 

彼女は柔道部で、男勝りだけど二人の時は優しい女の子だった。
中学の頃から同じ柔道部の先輩が好きだった。


でも彼には今も昔も美人の彼女がいる。

迷惑にならないように、重すぎないように。
それでいて、彼が美味しいと喜んでくれるように。

ナッツ入りのチョコが好きらしい。見た目に似合わず甘党。
好きな色は青で、金色はラッキーカラーだと信じてる。

彼女は彼の事を良く知っていた。

長い時間を掛けて、彼女は相応しいチョコレートを選んだ。
お店の赤い包装紙が気に入らないから直したい、と柔らかいラッピングペーパ―とリボンも買った。

一個分には多いから、一緒に包み直さない?と聞かれたけれど私は断った。

カバンの中のチョコレートが重たかった。

 

あんな風に心をこめて選ばれたチョコレートと、周りに流された私のチョコは本当に同じ物だろうか?

自分で食べてしまおうか、そう悩みながらも私はチョコレートを贈った。

彼の顔が見られなくて、友達に頼んで。

 

しばらくして、友達から打診が来た。

先輩があのチョコレートが本命かどうか聞きたいって。

私は悩んで、義理チョコだと言って、と頼んだ。
好きだと思ったけど、やっぱり違ったのかも。
そう彼女に弁明した。

 

先輩とはそれきり会わなかった。

ホワイトデーには友達を通して小さな子犬のぬいぐるみが届いた。
後ろめたくて飾れなくて、どこかへしまいなくしてしまった。

 

今にして思えば、私は私なりに彼の事を好きだったんだと思う。
チョコを渡して自己満足したいだけだったら、彼女のいるモテるタイプの人を選べばよかった。

あの時目があった彼を選んだのは何となく好ましいものを感じたからだろう。

 

あの頃の私は頭でっかちで、柔道部の彼女のように全てを知ってそれでも想うような強さがなければ恋ではないと思い込んでしまった。

 

人を好きになることはきっともっと簡単で良かった。

あの時彼が伸ばしてくれた手に素直になれたら何かが変わっただろうか。

踏み込む勇気が無かったことで、私は彼を傷つけただろうか。

謝りたいけれど、言葉はもう届かない。

 

臆病なくせにわがままで。
17歳の頃の私は理不尽な生き物だった。

 

あの日の帰り道を思い出す。
晴れて風が冷たかった。揺れるスカートとまだ残る雪。

掴めなかった恋だから、今でもきらきらひかるのかも知れない。 

 

本命チョコも義理チョコも、おかんのチョコもセルフチョコも。
貴方の食べるチョコレートは、きっと甘くてほろ苦い。 

 

ちょこれいとは…め・い・じ…。

 

今週のお題「バレンタインデー」