おのにち

おのにちはいつかみたにっち

思い出の中の甘エビは甘い

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私の父は、今も昔も出不精な人である。

家で本を読んでいれば、それだけで満足。
仕事を定年退職した今は、日々自宅警備員として二匹の猫と一緒にソファを温めている。

そんな父がたった一度だけ、我が子を連れて二人だけで出かけた記憶。
それが家族に語り継がれている、私の5歳の誕生日の話である。

私の5歳の誕生日、父は初めて娘と二人だけで出かけた。
行き先は札幌の寿司屋である。
名目は私の誕生祝い…ということだったが、実は5歳の私は生ものが苦手だった。

当時食べられた寿司ネタは納豆巻き、玉子、イカだけ。
生まれて初めてカウンターの寿司屋に連れていかれた私だが、好きなネタもなく隣で酒を飲む父を横目に、退屈を持て余した様子だったらしい。

自分の誕生日だというのに納豆巻きを食べる幼女を不憫に思った大将は、アレを食べてみないか、コレはどうだ…と色々熱心に勧めてくれたようだ。

5歳の時の記憶なのでかなりおぼろげなのだが、こういうお店で玉子や納豆ばかり食べるのは恥ずかしいことなのだな、と感じたことを覚えている。

とにかく勧められたものを食べなくては申し訳がない気がして、私が手を伸ばしたのはイカに少し似ている白身の、そして可愛いピンクの混じった甘エビだった。
イカより甘くて、柔らかく食べやすい。

初めての甘エビの美味しさに、知らないものを食べる楽しさを知った私、それから高価なネタを色々注文して(エビが食べられるならカニも、白い物なら平気ならヒラメも行ってみよう、と大将に色々食べさせられたらしい)経済的な意味で父を戦慄させたらしい。

「そんなに食べないと思ったから連れて行ったのに…」という笑い話は、今や家族の鉄板ネタだ。

 

大人になった今は、私より二人の息子たちの方が甘エビ好きだ。
真っ先にエビから食べ始めるので、私の分はいつも残っていない。

回転ずしなら…とたまに甘エビのボタンを押すのだけれど、好物は自分のもの、と思い込んでいる子どもたちは届いた甘エビをパクパク食べてしまう。
好きなものは全て自分のもの、という傲慢さ。

でも私は彼らのそんな自分勝手さが好きだ。
まったくもう、と言いながらも美味しく食べてくれるなら好きなだけ食べて、と差し出したくなる。自分で食べるより、子どもが美味しそうに食べてくれる方がより深く幸せを感じられる気がする。

 

自分勝手で我儘に思えた父でさえ、そんな一面はあった。
最後の一つはお父さんの、と決められたからあげを子どもたちのために切り分けてくれたり。

なんだかんだ言いながら、パクパクと寿司を頬張る娘の横顔は、父にとって幸福な思い出なのだろうか?

私の記憶はもはや朧気で、大将の優しさや初めて感じた場に会った振る舞いへの敷居の高さしか思い出せない。

それでも父にとっては、子にご馳走を振る舞った美しい記憶なのかもしれないと、甘エビを頬張る子どもたちを見るたびに、思い出してしまうのである。

 

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tanpopotanpopo.hatenablog.com

 

もうあんまり、人に絡むのはやめて淡々と書いて行こうと思った途端に届くバトン。
こうやって誰かから短い言葉を寄せられるのはやっぱり嬉しくて、はてなはめんどくさいけど愛おしいなぁ、と思ってしまいます。

たんぽぽさん喜多方ラーメンは確かに美味しいけど会津若松にとっては隣の市のライバルの味なんですぜ…若松のラーメンだって美味しいんだも―んw

 

そんな訳で特別リレーエッセイ、
お題「あの日 あの味 この嫁」

嫁、とは…w
どうせマスヲさんが優勝の出来レースなんだぜー⁉
結果を覆す、あなたのご参加お待ちしてます!