遠田志歩さんの美しい表紙に惹かれて、ミステリー『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読みました。
遠田さんの表紙といえばAnotherや屍人館の殺人が浮かんできます。
どちらも独特の世界観を持つミステリーですが、このメディウムもめっちゃ良かった…!
霊媒の能力を持ち、過去の経験から心に傷を負っている儚いヒロイン、城塚翡翠。
そんな彼女を支えていくのは、その洞察力により警察の捜査にも協力しているという推理作家、香月史郎。
翡翠は自身の霊媒能力から事件の犯人を見抜く事が出来るのですが、その過程や証拠を見つけることが出来ません。
そんな彼女の結果論ありきの推理のアラを埋めていくのが作家の香月史郎。
霊媒探偵、というタイトル通り、犯人を見抜くホームズ役はヒロイン翡翠なのですが、犯人が分かっているミステリを推理力で繋げていくワトソン役、史郎の影の力が凄いのです!
霊媒という主題自体はちょっとトリッキーですが、警察に協力する作家というキャラクターや、幽霊が出ると噂される呪われた館でのパーティーなど、新本格ミステリを思い出す物語の作りはとってもツボ。
そして三つの事件を解いていく合間に、ラストに姿を表す殺人鬼の話が挟み込まれて行く…という物語の構造も、先が気になってとても良い。
久々に一気読みできたミステリでした。
やっぱりこういう正統派ストーリーが一番好きかも?
…以下、多少のネタバレがあります。
正直、これ以上の前情報はナシで読むのが一番楽しいタイプのミステリだと思うので、完璧に味わいたい人はここらへんで離脱だ!
…さて。正統派ミステリだー♡と無邪気に楽しめていたのは最終話の途中まででした。
えっ?
いやいや、犯人が〇〇くらいまでなら想像つきますけど、まさか〇〇まで⁉
古典的でシンプルなミステリだと思い込んで読んでいたので、オチが思いがけず麻耶雄嵩でクラクラしました。
よーく推理に目を凝らせば、ヒントはたくさん落ちていたはずなのに…
そうと知った後に見直せば表紙の儚い表情さえ違って見えるような気がして奥深い!
とにかく『medium』、私はめっちゃ楽しめました。
古典的で好きな雰囲気のミステリだけど、正直新しさには欠けるな?なんて思いながら読んでいた2時間前の自分を嘲笑いたいです。
お前は読後驚愕する羽目に陥るんだぜ…
ああこれだからミステリって楽しーー!
相沢沙呼さんの本はデビュー作『午前零時のサンドリヨン』以来でしたが、こんなに読ませる作家さんだったとは。これから他の作品も追いかけていきたいです。
もちろん霊媒探偵シリーズの次回作も気になる。
エピローグで語られていた次の事件は孤島の館の殺人事件。
むっちゃツボじゃないですか!