寒いのが嫌いだ。
日差しが弱くなるのも、自転車に乗れなくなるのも大っ嫌いだ。
だから、冬が来るたびにこんな寒い町出てってやる!と思う。
たまたま、親の実家があるから流れ着いたようなまちだ。
気がつけば地元の人と結婚して家まで建ててしまったけれど、ふるさと感は未だない。
『ふるさと』という言葉が似合うのはランドセルを背負っていた頃に過ごした、もっと北の町のような気がする。
それでも冬の朝に車を走らせて、フロントガラスのずっと向こうに薄曇りの山が見えた時にはハッとする。
薄墨に少し菫を垂らしたような、淡くて遠い山並みのいろ。
白い霧が立ち込める冬の朝に、実感したことがある。
外はまるで墨の濃淡だけで描かれた山水画の景色。
水墨画とは本当の世界を忠実に写し取ったものなのだ、と。
色彩を無くしたモノクロの朝はとても奇麗で、そんな景色に出会うたび息を呑む。
寒いのは相変わらず嫌い。
お日様が足りなくて、ホントいらいら。
それでも時折息を呑まされるこのまちの冬が、私はちょっとだけ好きなのかも知れない。
裏庭からの景色…ではないw